第47回 「首都圏3環状道路」を読み解く 【市場のテーマを再訪する。アナリストが読み解くテーマの本質】

マネックスメール編集部企画の特集コラムをお届けします。

第47回 「首都圏3環状道路」を読み解く 【市場のテーマを再訪する。アナリストが読み解くテーマの本質】

みなさん、こんにちは。『今どき、株で儲けるヤツは、「業種別投資法」を使っている』著者の長谷部翔太郎です。今年もまた、この日付が巡ってきました。丸4年、多くの方々の尊い命が失われたあの東日本大震災から経過した年月です。筆者は東京であの地震を経験したのですが、当時のざわついた雰囲気は今も忘れることはできません。そして被災され、今現在もご苦労されている方はまだまだおられます。一刻も早く、復旧、復興となりますことを心より願っております。


さて、先週から株式市場も為替市場も動きが出てきました。やはり市場が動き出すとワクワクしてしまいます。当面は配当権利、あるいは年度末を睨んだ展開となるのでしょうが、数か月の日柄調整を経て、少しずつ新たな局面へとシフトし始めたような印象を持っています。それに併せ、今回は少し大きな視点でテーマを論じてみたいと思います。今回取り上げるテーマは「首都圏3環状道路」です。3環状道路の一つ、首都高速中央環状線は今月7日に全線開通となりました。翌8日には、やはり3環状道路の一つで最も外側を走る圏央道の開通区間が拡大し、本年中には圏央道のかなりの区間が開通となる予定です。残る環状道路となる外環道も2020年には全線開通が目標とされています。1980年代の着工からは足かけ30年超、1960年代の構想から考えれば実に50年超という長期プロジェクトでしたが、ようやく一段落が視野に入ってくるようになりました。当然ながら、これに伴って、モノの流れに変化が生じてくる可能性は非常に大きいと考えられます。


既に、圏央道の周辺には少なくない企業が物流拠点を構えて始めています。環状道路となれば、都心の混雑を避けつつ、目的地への効率的な配送を目論んでのことです。同時に、これにより、都心部分でも(流入車輌の減少によって)渋滞緩和となる期待が高まっています。さらに、複数の(高速道路)ルートを採択できるようになるため、老朽化した道路の修繕も進めやすくなるうえ、災害時でも交通アクセス手段を確保できる、といったメリットも指摘されています。建設費用は巨額なものとなりましたが、そのメリットもまた大きなものが期待できる、と言えるのではないでしょうか。中でも、配送効率の改善が期待される物流関連業界は、このテーマにおける最注目業界になると考えられます。ただ、それではあまりにシンプル過ぎる結論となってしまいます。既にそういった指摘は多々なされており、ここで筆者が同じことを言っても仕方ありません。このコラムではもう少し捻った結論を考えてみましょう。


筆者がこのテーマで一番に考えるのは、経済効率の改善です。かつて、国土交通省は渋滞による経済損失が年間約12兆円に上るという試算を発表したことがあります。東京における損失はこのおよそ60%を占めており、約7兆円相当のロスが発生していることになるようです。とすれば、もちろんこれは試算でしかありませんが、3環状道路の充実によって、理屈上は7兆円の経済損失の幾分かは解消されることになるはずです。そして単純に考えて、渋滞緩和により何兆円かの経済損失がなくなるということは、その分どこかでメリットが生じることになります。そのうちの一つは確かに先に上げた物流業界となるのかもしれません。しかし、経済効果の試算規模を考えると、恩恵を被る業界はそれだけではないと思えて仕方ないのです。現時点ではなかなか明解な回答を用意はできていないのですが、その分、株式市場はまだその効果を織り込めていないようにも思えます。これは明らかに大きな投資機会になると考えます。


回答の一つは、個人消費関連のように想像しています。渋滞が緩和され、目的地に早く到着できれば、あるいは、仕事が早くに終われば、それだけ消費をする時間が発生することになるためです。また、現在は人手不足が深刻化した状況にありますが、輸送効率が改善すれば、現状の人手不足感も緩和する可能性があるでしょう。これらは企業の人件費抑制に効果があるかもしれません。それぞれは小さな改善効果かもしれませんが、積もることで経済全体への相当な底上げ効果を及ぼすのではないか、と考えています。よく日本は人口減少により(人口オーナス)、経済の潜在成長力が阻害されるとの議論がなされます。これはその通りなのですが、経済成長を牽引するのは、人口増加(人口ボーナス)だけではなく、生産効率の改善でもあることを忘れてはいけません。小さな例ですが、こういった渋滞緩和による効率改善は、人口減に直面する日本の突破口になるのかも知れないと思っています。


コラム執筆:長谷部 翔太郎

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