マネックスメール編集部企画の特集コラムをお届けします。
ドルインデックスが先週3月12日、12年ぶりに100の大台に乗せたことが話題ですね。ドルインデックスとは、貿易規模を加味して計算された複数の主要通貨に対しての米ドルの総合的な価値を示す指標です。代表的なものにFRB(連邦準備制度理事会)が算出するものと、インターコンチネンタル取引所(ICE)が算出しているもの、そして国際決済銀行(BIS)算出のものがありますが、ICEのドルインデックス=DXYはリアルタイムで算出されており、実際に先物取引としても上場されて取引されているため、マーケット関係者の注目が高く、今回100の大台乗せとなったのはDXYです。
ドル/円相場は3月10日に122円台にまで上昇したものの、その後は高値圏でのもみ合いに入っていますが、ユーロ/ドル相場は週末13日金曜日に向けて下落を続け1.0461ドルまで下がりました。ドル/円の上昇が抑えられている一方で、ユーロ/ドルの下落が続いたことで、DXYの上昇が週末にかけて続いたということですね。
ちなみにDXYの対象通貨は6通貨。以下がその組み入れ比率です。
ユーロ(57.6%)
円(13.6%)
英ポンド(11.9%)
カナダドル(9.1%)
スウェーデンクローネ(4.2%)
スイスフラン(3.6%)
ということで、ユーロの比率が60%近いため、DXYはユーロの値動きが色濃く反映されてしまうという特徴があります。しかし、現在米国最大の貿易国である中国人民元が組み入れられていません。
対してFRBが算出しているドルインデックスは対象通貨が26通貨、ユーロに対する加重平均が16%程度に抑えられています。というのもインデックスには人民元が組み入れられ、その比率は何と20.81%にも上り、ユーロを上回っています。こちらの方が米国との貿易を反映しており、現況にあった米ドルの強さを表していると言えます。FRBドルインデックスは加重比率も毎年見直されているのが特徴です。DXYの加重平均は1999年にユーロが誕生してから一度もこの加重平均が見直されたことはありません。DXYは先物市場で実際に取引されているために見直しが難しいのでしょう。
ということで、より総合的なドルの強さを見るならDXYよりFRBが算出するインデックスの方が適していると言えます。また、BISドルインデックスになると対象通貨は43か国にも上りますが、FRBのインデックスと同様、指数の更新が1日1回しかありません。やはりリアルタイムに動くDXYが市場のベンチマークとなっているのです。
さてドルインデックス、12年ぶりの高値まで上昇してきましたが一体どこまで上昇するのでしょうか。今週は17―18日にFOMCが開催されますが、声明文から「忍耐強く」という文言が外されるのかどうかに注目が集まっています。もしこの文言が外され「フォワードガイダンス変更」となれば、早ければ6月にも米国が利上げに踏み切るとの思惑から、ドル高はさらに進むという見方が強いことからドルインデックスが上昇しているため、今週のFOMCで文言削除がなければ、これまでのドル高の大きな修正がある、という見方も。ドルインデックスはこの月足チャートですでに8本の陽線を連ねており、今月も陽線引けで終わるなら9本の連続陽線となります。これほど長い上昇トレンドは珍しく、そろそろ調整があるとみるチャーチストが多いのですが・・・。賢明なトレーダーは大きなイベント前にはリスクを取りに行くような新規ポジションは作りません。どのような結果になるのか、見極めてからトレードアイディアを練り直すのも、戦略のひとつといえるでしょう。
コラム執筆:大橋ひろこ
フリーアナウンサー。マーケット関連、特にデリバティブ関連に造詣が深い。コモディティやFXなどの経済番組のレギュラーを務める傍ら、自身のトレード記録もメディアを通じて赤裸々に公開中。
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