第108回 大気汚染軽減と交通渋滞緩和に向けての北京市政府の施策 【北京駐在員事務所から】

マネックスメール編集部企画の特集コラムをお届けします。

第108回 大気汚染軽減と交通渋滞緩和に向けての北京市政府の施策 【北京駐在員事務所から】

今年の冬の大気汚染は、一昨年、昨年に比べますと多少緩和されたように思います。
日本でニュースになることも少なかったのではないでしょうか?
昨年11月のAPEC首脳会議開催に伴う種々の規制が功を奏したのか否かは不明ですが、恐らくは気候条件等、「偶然」によるところが大きかったものと思われます。
来年以降、改善が見られるのか、あるいは再び悪化するのか、日本への影響も懸念されるところですので、注視が必要です。

冬場の汚染が酷くなることの原因は暖房のための石炭燃焼ですが、自動車の排気ガスも汚染物質の3割程度を排出しているとされ、対策が急務です。
大気汚染に加え、毎日の交通渋滞により生じる経済損失も甚大です。
北京市政府は、これまでも自家用車の利用制限等対策を講じてきましたが、今年は新たな施策を追加し、状況の改善を図るとしています。

第一の施策は、クリーンエネルギー車の利用促進です。
北京市政府は、電気自動車、燃料電池車などに、有料道路の通行料割引や駐車料金の免除などの特典を与え、ガソリン車あるいはディーゼル車からの代替を促す方針と伝えられています。
また、現在抽選による割当制となっている新たなナンバープレートの交付について、クリーンエネルギー車向けの特別枠を拡大し優遇する方針です。
具体的には、年間の新規登録台数を15万台に制限する一方、このうち昨年は3万台としたクリーンエネルギー車向けの割当を、今年と来年は6万台とします。
さらに、高価な燃料電池車の購入者に対し、中央政府と共同で54,000元(約104万円)の補助金を交付するとしています。日本でも燃料電池車の購入には数百万円の補助金が交付される予定と報じられていますが、こちらの力の入れようもかなりのものと言えます。

自動車のクリーン化が進むことで、大気汚染物質の排出量減少には一定の効果が見込まれますが、利用者数及び台数が変わらないのでは、渋滞の緩和にはつながりません。
北京市では、公共交通機関(バス及び地下鉄)や自転車(市内各所にレンタル自転車を配置し、利用を促しています)の利便性を高め、自家用車からのシフトを進めるとしており、特に地下鉄については新路線の建設に力を入れています。
自転車についても、専用道の整備を図り、利用しやすい環境を整えるとしています。
違法駐車の取締り強化等、アメだけでなくムチも用意しています。
しかしながら、昨年末には地下鉄とバスの運賃を大幅に引き上げており、増収分をサービス向上に充てるとしているものの、政策のちぐはぐさは拭えません。

東京など日本の大都市と異なり、北京では市中心部と郊外を結ぶ鉄道網が貧弱で、このため通勤のための自家用車の利用が抑制できずにいます。
線路は敷設されているのですが、これまでは都市間の中・長距離輸送及び貨物輸送に用途が限られていました。
既存の鉄道施設を整備し、また一部拡充することで、通勤通学客の利用につなげようとする計画もあります。成否は未知数ではありますが、新たな取組として注目したく思います。

北京に赴任して2年半になりますが、地下鉄は駅の構造が悪く乗換が不便なため足が向きません。自ずとバス利用が多くなるのですが、こちらも渋滞にはまると所要時間が読めません。
時間の制約の有無により使い分けていますが、外出の際には時間に十分余裕を持って出発するようになりました。東京では、朝の出勤時など時計の秒針まで見ていましたので大変な違いです。
北京市民の多くは現状に慣らされ、「あきらめ」の境地なのかもしれませんが、経済活動の観点からも、また生活の質という点でも、改善が望まれます。
まだまだ長い道のりという感じですが、関係者の努力に期待したく思います。
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コラム執筆:長野雅彦 マネックス証券株式会社 北京駐在員事務所

マネックス証券入社後、引受審査、コンプライアンスなどを担当。2012年9月より北京駐在員事務所勤務。日本証券アナリスト協会検定会員 米国CFA協会認定証券アナリスト

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