マネックスメール編集部企画の特集コラムをお届けします。
現在、サッカーのクラブチーム対抗戦アジアチャンピオンズリーグが開催中です。
各国の国内リーグや、ワールドカップ2018年ロシア大会の予選など国際大会の合間を縫っての開催となりますため、11月の決勝まで一年近くの長丁場です。
日本からは、Jリーグのガンバ大阪、浦和、鹿島、柏の4チームが出場していますが、柏以外の3チームはいずれもグループリーグで最下位に低迷しています。
3月17日(火)には、北京で地元チームの北京国安と浦和の試合が行われましたが、北京国安が2対0で完封勝利を収めました。
中国でもサッカーは人気のスポーツです。球技の中で世界的に水準が高いのは卓球、バドミントンなどですが、テレビ中継を見ますとまずサッカー(日本と同様、国内リーグ及び欧州主要リーグの試合が放映されます)で、次いでバスケットボール(米国NBAの試合が数多く放映されています)、さらにバレーボールほかという順位になっています。
変わったところでは、日本ではまず見ることのないビリヤード(スヌーカー)の試合が頻繁に放映されており、人気の高さを示しています。
日本のJリーグに相当する中国スーパーリーグは、以前は八百長問題などで人気が離散していましたが、近年金融、不動産などの有力企業がスポンサーとなり、資金力に物を言わせて海外の有力監督、選手を獲得して強化を図った結果、人気が回復しており、観客動員数も増加しています。
現在、リーグ一部に所属する北京のチームは北京国安のみですが、ホーム試合の開催日には、同チームの緑色のユニフォームを身につけたサポーターを数多く目にします。
中国のサッカーは日本と異なり、国内リーグの隆盛ぶりに比べ代表チームが振るいません。この点に不満を募らせているサポーター、ファンも多いようです。
ワールドカップ出場は、日本及び韓国が開催国枠での出場となった2002年大会の一回のみで、その後はアジア最終予選にも進めていない状況です。
国際サッカー連盟(FIFA)発表の最新国別ランキングは83位で、アジア諸国中第7位です。
ちなみに日本は53位で、アジアでは42位のイランに次ぐ第2位となっています。
熱烈なサッカーファンとしても知られる習近平主席は、中国代表チームの強化と、将来のワールドカップ招致に向けての施策を打ち出し、このほどその内容が明らかになりました。
都市計画策定の際にサッカー関連施設の充実を盛り込むこと、国内リーグ運営組織の独立性強化、サッカーの指導に重点を置く学校の増設、代表チームへの報酬ほか支援の拡充、さらに長期的な目標としてワールドカップ招致を挙げています。
「政策主導で強化が実現できるのか?」との疑問あるいは批判の声も聞かれており、また他種目の競技者、関係者からは「サッカーばかり優遇されすぎ」とやっかみの声も上がっているそうですが、サッカーの世界的な人気、市場規模を考えれば、世界の政治、経済で存在を高めている中国が力を注ぐことも理解できます。
中国の人口、将来性を考えれば、仮にワールドカップの招致に動いた場合、開催権を獲得する可能性は高いものと思われます。代表チームが、開催国に相応しい実力を身につけることが出来るか、まずは「お手並み拝見」というところでしょうか?
中国では、日本の中学校や高校のようなクラブ活動がなく、児童、生徒の多くは大学受験を見据えた勉強一本槍の生活を送っています。
スポーツに打ち込める若者は、国が選抜したエリートか、裕福な家庭の子女に限られているのが現状です。このため、選手層が薄く、サッカーのような団体競技では代表チームの編成が難しくなっています。中国スーパーリーグでも、「外国人助っ人頼み」の様相となっているそうです。
施設の拡充や組織の改編だけで成果が出るものではなく、学歴偏重とされる中国社会の変化やスポーツに対する理解の深耕も求められますので、道のりは長そうですが、是非サッカー界全体の実力が向上し、さらにはアジアサッカーの地位が高まるよう、願いたいと思います。
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コラム執筆:長野雅彦 マネックス証券株式会社 北京駐在員事務所
マネックス証券入社後、引受審査、コンプライアンスなどを担当。2012年9月より北京駐在員事務所勤務。日本証券アナリスト協会検定会員 米国CFA協会認定証券アナリスト
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