マネックスメール編集部企画の特集コラムをお届けします。
本コラムは、2014年7月から9月に3回にわたって開催されたオンラインセミナー「FXトレードの真髄」における筆者の発言の内容を再構成してお届けするものです。
前回と前々回で説明した「レンジ相場」、「トレンド相場」、「ブレイクアウト」の関係を2011年1月から2013年2月までのドル/円に当てはめてみましょう。(図1)
「ブレイクアウト」の成功によって始まった緑の「トレンド相場」が、赤の「レンジ相場」の位置を上下に移動していることがわかります。「レンジ相場」が極まれば「トレンド相場」が始まり、「トレンド相場」の終了によって、次の「レンジ相場」に移動するという繰り返しが理解できると思います。では、この繰り返しのなかで、具体的にどのようなトレードの戦略が取られているのでしょうか。
まず、「レンジ相場」に有効な「レンジ戦略」のイメージ図をみてみましょう。(図2)
「高値」のサイドで説明すると、「レンジ戦略」は「レンジ相場」が続いていくことを前提にした戦略であり、マーケットがレンジの上限の手前で売りの建玉を持ちます。マーケットがレンジの範囲で推移する場合、この売り建玉はマーケットが下に下落することで利食いになりますが、「ブレイクアウト」が成功して「高値」のラインを突破されると、「レンジ相場」の前提が崩れるので、損切りとなります。
「レンジ戦略」をファンダメンタルから説明すると、レンジの上限の「高値」を形成した理由を上回る強いファンダメンタルのニュースは、現在は出ていない、という判断と、近い将来も出ないだろう、という期待から、高値のラインの手前で売るという戦略になります。
「レンジ戦略」を指値と逆指値という具体的な注文にすると、以下のようになります。
・レンジ上限の「高値」の手前のプライスで新規の売り指値注文
・「高値」のラインに決済(損切り)の買い逆指値注文
損切りとなる逆指値注文の理由について説明します。
「ブレイクアウト=突破」の成功は、「レンジ戦略」の失敗を意味しており、「レンジ戦略」の参加者に撤退(=損切り)を迫ります。トレードのプロの世界にも、上司や資金の出し手の顧客がいます。プレイヤーであるトレーダーは、彼らに自分の建玉の説明をしなければいけません。これは、説明責任が大きくなる、トレードのサイズが大きな参加者ほど顕著でしょう。「レンジ戦略」で建玉を持っていると説明していた状態で、「ブレイクアウト」に成功されると、「テクニカル分析」の面からも「ファンダメンタル分析」の面からも、「レンジ戦略」の論理は破綻します。プロのトレーダーは、自分の建玉を説明できなくなれば、その建玉を撤退せざるを得ません。レンジという包囲が突破されて撤退するイメージです。このような理由から、レンジの上限となる「高値」のラインには、「レンジ戦略」の撤退(損切り)の逆指値の買い注文が並びやすい傾向があるのです。
次に「トレンド相場」に有効な「トレンド戦略」のイメージ図をみてみましょう。(図3)
再び「高値」のサイドで説明すると、「トレンド戦略」は、「レンジ相場」が終了することを前提にした戦略であり、マーケットが「高値」のラインに差し掛かったところで、買いの建玉を持ちます。「レンジ相場」と「トレンド相場」の境界である「ブレイクアウト」が成功すれば、「トレンド相場」の開始となり、買い建玉には含み益が乗ります。しかしながら「ブレイクアウト」が失敗した場合には、マーケットは再び「レンジ相場」に戻ることになり、その建玉は含み損、あるいは損切りになります。
「トレンド戦略」をファンダメンタルから説明すると、レンジの上限の「高値」を形成した理由を上回る強いファンダメンタルの材料が、近い将来出るだろうという期待、あるいは既に現在出ている、という判断で、高値のラインで買うという戦略になります。
「トレンド戦略」の仕掛けを逆指値という具体的な注文にすると、以下のようになります。
・レンジ上限の「高値」のプライスで新規の買い逆指値注文
「トレンド戦略」にも決済の出口があるのですが、それは「高値と安値」にはあまり関係がないので、このコラムでは扱いません。新規の建玉となる逆指値注文の理由について説明します。
「ブレイクアウト=突破」の成功は、「トレンド相場」の開始を意味しており、「トレンド戦略」の参加者に新規の建玉を迫ります。特に、「順張り」が得意で、それを売りにして、マーケットで生きているトレーダーにとっては、「トレンド相場」で儲けることが、仕事のようなものですから、「ブレイクアウト」が成功しているのに、建玉を持っていない場合、そのことを上司や顧客に説明するのが苦しくなります。「ブレイクアウト」に成功されると、「テクニカル分析」の面からも「ファンダメンタル分析」の面からも建玉を持っていないことの説明が難しくなるわけです。このような理由で、レンジの上限となる「高値」のラインには、「トレンド戦略」の新規の逆指値の買い注文が並びやすい傾向になります。
次回は、「高値と安値」の意味をまとめます。
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コラム執筆:高井 克実 トレード・サイエンス株式会社
1995年東工大卒。外資系証券会社等でディーラーとして活躍後、2013年トレード・サイエンス株式会社に入社、シグナルモデルの開発・運用に携わる。
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