第9回 マーケットの地雷原 【FXトレードの真髄】

マネックスメール編集部企画の特集コラムをお届けします。

第9回 マーケットの地雷原 【FXトレードの真髄】

本コラムは、2014年7月から9月に3回にわたって開催されたオンラインセミナー「FXトレードの真髄」における筆者の発言の内容を再構成してお届けするものです。

前回まで説明してきた「高値と安値」、「レンジ相場とトレンド相場」、「ブレイクアウト」、「レンジ戦略とトレンド戦略」、「レンジ戦略の決済の逆指値」、「トレンド戦略の新規の逆指値」をまとめてみましょう。(図1)

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「高値と安値のライン」は、あらかじめ場所がわかっている地雷原のような地帯です。
「レンジ戦略の決済の逆指値」(図1の赤の矢印)と「トレンドの戦略の新規の逆指値」(図1の青の矢印)が集中しやすい地帯であり、その周辺は「ブレイクアウト=突破」の成功と失敗をめぐって、「レンジ戦略」と「トレンド戦略」の激しい戦いが予想される地帯です。
重要なのは、あらかじめ場所がわかっているという事です。それゆえに、FXのマーケットではしばしばトレードの格好の目標になります。


注目すべきは、まだ突破されていない「高値と安値」のラインです。そのなかでも
「ブレイクアウト」で突破されていない時間が長い「高値と安値」ほど、逆指値が溜まりやすい傾向があります。例えば、年単位のレンジの高値や安値は、常にトレードの目標にされる巨大な地雷原と考えておくのが良いでしょう。そのような年単位の大きな「レンジ相場」に対する「ブレイクアウト」が成功したときは、「レンジ戦略の撤退(損切り)の逆指値」と「トレンド戦略の新規(仕掛け)の逆指値」が次々に執行されて、マーケットは短期間に大きく動く傾向があります。この様子は、あたかも地雷原の地雷が次々に誘爆を起こす様であり、それゆえに、FXのマーケットのプレイヤーはまだ突破されていないレンジの上限と下限の「高値と安値」のラインに注目し、トレードの目標とするのです。


「高値と安値」の意味をまとめると以下のようになります。


◆ 「レンジ戦略」の撤退の目標プライス

◆ 「トレンド戦略」の仕掛けの目標プライス

◆ 上記の2つの目標が具体化した逆指値注文が集中しやすいプライス

◆ 「レンジ相場」が長く続くほど、「高値と安値」のラインの逆指値注文は溜まっていく

◆ 「ブレイクアウト=突破」が成功すると、上記の逆指値注文が断続的に執行されて短期間で大きな値幅を生み出す可能性がある

◆ 以上の特性から、多くのFXプレイヤーのトレードの目標に設定されている
トレードの目標となる「高値と安値」を設定することが、「いくらで?」というプライシグの「スキル」になります。

この「スキル」を知っていれば、マーケットの情報処理を効率化できます。具体的には、仕掛けと撤退(損切り)のプライスの検討時間を以下のように短縮できます。


◆ レンジ戦略の仕掛け    : 目標とする「高値と安値」のラインの手前のプライス

◆ レンジ戦略の撤退(損切り): 目標とする「高値と安値」のライン

◆ トレンド戦略の仕掛け   : 目標とする「高値と安値」のライン


これだけでもかなり検討時間が短縮されるのではないでしょうか。もちろん、レンジ戦略の仕掛けなら、どれくらい手前なのか、ブレイクアウトの成功、失敗はどのように判断するのか、など、明確な答えがある考え方ではありません。「スキル」は必勝法ではないのです。スポーツの「心・技・体」の「体」に相当する、考える前に「体」が動く状態を目指す、トレードで勝つための情報処理の効率化を目的にしたものです。
「高値と安値」を使った情報処理の効率化は、FXマーケットでは幅広く支持されています。
なぜでしょうか?
それは、これまで説明してきたように「高値と安値」、「ブレイクアウト」がファンダメンタルで理由づけできることと関係があります。


FXでは、「ファンダメンタル分析」が難しいがゆえに、「高値と安値」、「ブレイクアウト」という「テクニカル分析」にファンダメンタルの理由づけを結びつけてトレードを行うのが主流なのです。
例えば、「ブレイクアウト」が成功すれば、それまで維持されてきた「レンジ相場」の理由になっていた「ファンダメンタル」の理由を上回る新しい「ファンダメンタル」のニュースが出てきたと判断して、「レンジ戦略」は撤退し、「トレンド戦略」は新規の仕掛けを行うのです。
難しい「ファンダメンタル分析」を省くことで、情報処理を効率化しているトレーダーが多いと言えます。第4回目のコラムで、FXの特徴として、FXは2つの国のファンダメンタルを分析しなければいけないので、「ファンダメンタル」の「スタイル」では分析が難しく、「テクニカル分析」の「スタイル」の「ブレイクアウト」という「スキル」を使うトレーダーが多いと書きました。これは、「高値と安値」を使った情報処理の効率化の「スキル」を使っているトレーダーが多いということなのです。

2014年10月29日から、2015年1月28日までの、米ドル/円の日足のチャートでみてみましょう。(図2)

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2014年10月末の日銀の追加緩和で「ブレイクアウト」が成功した後に、「ファンダメンタル」で理由づけできる「高値と安値」で「レンジ相場」が形成されている構図がうまく表現できているチャートです。高値の121.83付近と3つの安値がある115.44~115.84付近が、あらかじめわかっている地雷原になります。


第6回から第9回まで「高値と安値の意味を知る」というテーマで「高値と安値」という「スキル」を説明してきました。「高値と安値のライン」は、あらかじめ場所がわかっている地雷原です。FXのマーケットだけでなく、株式や債券の取引にも広く応用できる「スキル」なので、参考にしていただければ幸いです。


次回からは、「経済指標と要人発言の意味を知る」というテーマで、「経済指標と要人発言」という「スキル」を説明します。


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コラム執筆:高井 克実  トレード・サイエンス株式会社

1995年東工大卒。外資系証券会社等でディーラーとして活躍後、2013年トレード・サイエンス株式会社に入社、シグナルモデルの開発・運用に携わる。

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