マネックスメール編集部企画の特集コラムをお届けします。
日米欧の中央銀行がゼロ金利政策をとる中においては、NZの政策金利3.5%や豪州の2.25%の政策金利でも高金利に映ります。しかし、豪ドルは昨年9月から下落トレンド入りしており、金利差に着目した豪ドル買い戦略には分が悪い相場。あれだけ人気が高かった豪ドルに一体何がおこっているのでしょう。
①RBA豪州準備銀行による通貨安誘導
RBAは中央銀行としては好ましくないとされる為替水準の期待値を公然と示しています。スティーブンス総裁は14年12月時点で1米ドル=0.75豪ドル付近が望ましいと具体的に示唆し、15年2月3日に政策金利を2.50%から2.25%へ引き下げました。豪ドルは4月2日に向けて0.7532ドルまで下落基調が続き、3月と4月の金融政策会合では政策金利は据え置かれました。0.75ドル台にまで豪ドルが下落したことで、RBAの期待水準にほぼ到達してしまったのですが、豪ドルはさらに下がるでしょうか?
②鉄鉱石価格下落
14年9月上旬以降、中国経済の減速や資源大手企業の増産攻勢を主因とする商品市況の一段の下落がオーストラリア経済を圧迫しています。特に鉄鉱石はオーストラリア最大の輸出品ですが、11年には1トン当たり167ドル近辺で推移していたのが、現在は50ドル台をも割り込んで10年ぶりの安値に沈んでいます。オーストラリアの鉄鉱石生産中堅アトラス・アイアンは4月10日、鉄鉱石価格の下落を理由に4月中は生産を休止すると発表しました。同社の採算コストは約60ドル。採算コスト割れで操業停止に追い込まれるところも出ている反面、アジア太平洋で一番の女性富豪、ジーナ・ラインハート氏はオーストラリアにある100億ドル規模の鉄鉱石開発プロジェクトからの出荷開始に向けて準備を整えていると伝えられており、需給が緩い状況は続く見込みで今後鉄鉱石価格が上昇することは考えにくい状況となっています。ゴールドマン・サックスは14年9月の時点で「鉄の時代の終焉」というレポートを出しており、鉄鉱石価格はその後下落の一途を辿っています。
http://jp.reuters.com/article/topNews/idJPKBN0H50C820140910
(ロイターのウェブサイトに移動します)
③中国景気減速の影響
中国税関当局が発表した3月の輸出は、ドル建てで前年比15.0%減となり、予想の12.0%増を大幅に下回りました。世界銀行は中国の15年の成長率見通しを従来の7.2%から7.1%に引き下げ、中国政府のウェブサイトは4月11日に、李克強首相の「中国経済への下方圧力が強まっている」との考えを掲載しています。鉄鉱石価格の下落が続いているのも、最大の貿易相手国、中国経済が減速していることに起因しているとみられ、中国の景気指標の悪化は関連の深い豪ドル下落の大きな材料となっています。
④ファンド勢の動向
シカゴ通貨先物市場におけるヘッジファンド勢の豪ドル(対米ドル)の持ち高は14年9月23日以降、売りポジションが超過に転じてから、15年3月10日の週に向けて売りポジションが増加の一途をたどっていました。3月17日の週から、買いポジションが一気に増加し、売り越し幅は急減していますが、これはRBAが2月に続けて3月も利下げをするとの思惑が強かったためかと思われます。RBAは3月―4月には利下げをせず、これが足元では豪ドルの下落に歯止めをかけているようですが、最新の4月7日の週のデーターでは、再び売りポジションが増加しており、売り越し幅減少の流れが止まってしまいました。再び積極的に豪ドルショートのポジションを増やしてくるのかどうかに注目です。
⑤AUD/NZ のトレンド転換なら豪ドル巻き返しも?
ファンド勢の通貨トレードには「流行り」があります。昨年までは日本円を売る「円ショート」がブームで、IMM通貨先物ポジションも売りポジション超過状態が恒常的に続いていましたが、2015年に入ってから、円売りのポジションが急激に減少しています。その代りに増えているのが「ユーロショート」ユーロの売りが彼らのブームのようです。実際ドル円の上昇は止まって、ユーロの下落が加速していますね。そして、密かに流行していたのが、「AUD/NZのショート」でした。チャートを見ると、パリティと呼ばれる1AUD=1NZ(等価)目前の1.0018まで下落してきています。実はこのトレンド、かなり長期にわたっていて11年から続いています。日足レベルでは14年10月からの再下落でパリティを目指してきたのですが、さすがに、オーストラリアとニュージーランドの通貨が等価となる、という節目には強い抵抗があるようで、現在反発中です。つまり、現在はNZドルより豪ドルが買われるという反発局面に入っているということ。このAUD/NZチャートが反発基調にあるうちは、豪ドル/ドルも下げ止まる可能性もある、ということです。積極的に豪ドルを売るなら、AUD/NZのチャートが再度下落に転じることを確認してから、というのが良いかもしれません。
コラム執筆:大橋ひろこ
フリーアナウンサー。マーケット関連、特にデリバティブ関連に造詣が深い。コモディティやFXなどの経済番組のレギュラーを務める傍ら、自身のトレード記録もメディアを通じて赤裸々に公開中。
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