第111回 ビザ不要のクルーズ船ツアーが人気に【北京駐在員事務所から】

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第111回 ビザ不要のクルーズ船ツアーが人気に【北京駐在員事務所から】

中国からの訪日旅行客が急増しているとのニュースが頻繁に伝えられています。円安で魅力を増したショッピングが最大の誘因(動機)とされていますが、急増に寄与したもう一つの理由が、日本政府によるビザ発給要件の緩和です。
本年1月より、商用目的での渡航者や高額所得者に対し、申請書類の簡素化や複数回入国可能なビザ(数次ビザ)の発給などを行っています。

日本人にとっては、短期の観光や出張などではビザが不要な国が多く、ビザと言えば長期出張や駐在、留学、あるいは国際結婚などが連想されますが、中国人は短期の観光等でも、日本、米国を含む多くの国への渡航にビザが必要となるため、ビザの要否や取得の難易度は、旅行先の決定に大きく影響します。
韓国の済州島や、インド洋のリゾートモルジブなど、ビザが不要な観光地には中国人旅行客が大挙して押し寄せています。ビザ取得の手間と費用が節約できることに加え、「出発直前の予約、手配が可」となる点も大きなメリットです。

日本でも、ビザ発給要件の緩和に加え、法務大臣が指定したクルーズ船により入国する者について、ビザを不要とする制度が始まり、クルーズ船による訪日ツアーが人気を集めているそうです。
3月18日より、11のクルーズ船が制度の対象となりました。
韓国でも、2012年より同様の制度が設けられているそうで、例えば上海から韓国(済州島、釜山など)、日本(博多、長崎など)を巡り上海に戻るツアーが売れ筋商品となっています。
上海発の5~6日間程度のツアーは、代金が3,000元(約58,000円)以下で、移動と宿泊、乗船中の食事が含まれますので手軽かつお得と言えます。
リピーターの多くは、食事や宿泊(温泉など)、さらに観光などに目的(こだわり)を持つようですが、日本旅行初心者にとっては、船内泊で寝ている間に移動、また食事も船内での中華というのが気楽で良いそうです。

以前から、中国ではクルーズ船が人気で、国内沿岸部を巡るツアーなどが数多く催行されています。
中国のクルーズ船利用者は、2012年の20万人から、51万人、74万人と年々急増しており、今年は100万人を超えると予想されています。関係業界は、日本行きのツアーが増えることで、今後も利用者の増加が見込めると期待しています。
競争激化で料金の低下も見込まれ、利用客にとってもメリットになりそうです。横浜や神戸に入港するツアーもあるそうですが、距離的に近い九州(博多、長崎、佐世保、別府、鹿児島など)を訪問するツアーが多く、入港後は観光バスで買い物に直行というのがお約束だそうです。まさに「買い出しツアー」ですね。
中国人の「爆買い」と言えば東京の銀座や秋葉原での光景がしばしば報じられますが、九州各地でも凄いことになっているようです。

加えて、クルーズ船ツアーの人気を高めているもう一つの要因が、飛行機に比べ、携行品(荷物)の持込制限が大幅に緩いことです。
日本で大量の商品を買い込み持ち帰る中国人旅行客にとって、持込に多額の料金がかかる飛行機に比べ、クルーズ船は遥かに魅力的です。
ちなみに、日韓両国を巡るツアーの場合、韓国から日本の順となる旅程が人気で、逆ルートは不評だそうです、日本で大量に買い込んでそのまま帰国ということなのでしょう。

中国人を筆頭に、訪日外国人旅行者が急増し、関連業界が潤っているそうですが、観光客の多くは東京から富士箱根、京都、大阪の「ゴールデンルート」に留まっており、今後他の地方にどの程度誘導できるかが課題となっています。
北海道は安定した人気を保っており、またクルーズ船来航に沸く九州も期待大ですが、北陸など他地方にまで恩恵が及ぶか、関係者の努力と工夫が求められるところです。
増加を続ける訪日外国人旅行客が、日本を大いに楽しみ、再訪してくれるよう、望みたいと思います。

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コラム執筆:長野雅彦 マネックス証券株式会社 北京駐在員事務所

マネックス証券入社後、引受審査、コンプライアンスなどを担当。2012年9月より北京駐在員事務所勤務。日本証券アナリスト協会検定会員 米国CFA協会認定証券アナリスト

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