第10回 経済指標と要人発言 【FXトレードの真髄】

マネックスメール編集部企画の特集コラムをお届けします。

第10回 経済指標と要人発言 【FXトレードの真髄】

本コラムは、2014年7月から9月に3回にわたって開催されたオンラインセミナー「FXトレードの真髄」における筆者の発言の内容を再構成してお届けするものです。

第10回の今回から、「経済指標と要人発言の意味を知る」というテーマで進めていきたいと思います。前回までの「高値と安値の意味を知る」というテーマ同様に、株式や債券などのトレードにも応用できる内容なので、参考にしていただければ幸いです。因みに、株式では「決算発表と説明資料」が、ここでの「経済指標と要人発言」に相当します。

決して手抜きではないのですが(笑)、今回からの構成では、前回までの文章の構成と似たものが登場します。なぜなら「高値と安値」が、FXの値段に関する「プライシングのスキル」だったのに対して、「経済指標と要人発言」は、FXの時間に関する「タイミングのスキル」だからです。ここで、チャートを頭のなかで思い浮かべてみましょう。チャートの縦軸は値段で、横軸は時間です。チャートの縦軸と横軸を構成する値段と時間の「スキル」は同じ構成で説明することができるのです。このコラムも残り数回になりますが、理論的にきれいにまとまりますので、ご期待ください。

今回からのテーマでは、「ファンダメンタル分析」という「スタイル」で「経済指標と要人発言」という情報を選択します。「経済指標と要人発言」については、後で詳しく説明しますが、大事なのは、発表時間があらかじめ決まっているということです。この発表予定時間は、FXのマーケットで取引を行う際、格好の目標になる傾向があります。その傾向を使った「経済指標と要人発言」という「スキル」を使うことでマーケットの情報処理を効率化できます。具体的には、仕掛けと手仕舞いを行うタイミングの検討時間を短縮できます。

ここで少し復習をしましょう。FXトレードで成功するための「スキル」の構成要素は3つあります。
「いつ?」という「タイミング=時間」。
「いくらで?」という「プライシング=値段」。
「どれくらい?」という「サイジング=量」。

「経済指標と要人発言」は、1番目のタイミングの「スキル」です。
トレードの目標となるタイミングを理解して身につけることが、今回からの目標です。

では、まず、経済指標について説明します。経済指標は、FXトレードの対象となる国の経済の基礎的な条件を分析するファンダメンタル分析の材料です。毎月発表されるものや、四半期毎のもの、6週間毎のものなどがありますが、発表される周期と時間はあらかじめ公表されています。整理のために6つに分類して、代表的な経済指標の例を紹介します。

・政策金利系 : 日本銀行誘導金利(日銀政策決定会合で発表)、米国FF金利(FOMCで発表)

・国家統計系:GDP成長率、経常収支

・物価系  :卸売物価指数(PPI)、消費者物価指数(CPI)

・雇用系   : 新規雇用者数、失業率、失業保険受給者数

・個人消費系:小売売上高、消費者態度指数

・生産系  :鉱工業生産、機械受注、購買者態度指数(PMI)


これだけでは、どの経済指標が重要かわかりにくいので、経済指標のランクをずばり紹介します。(図1)

20150417_takai_graph1.jpg

まず、政策金利系とそれ以外の経済指標の間には、超えられない壁があると言ってよいほどの重要度の差があります。なぜなら、FXで取引する通貨ペアの2つの国の政策金利の差は、スワップ金利差損益という実際の損益に、直接結び付いているからです。より具体的な説明としては、外貨預金の金利を動かすのは、この経済指標です。
次に、国家統計系と物価系の経済指標と、それ以外の経済指標の間にも、超えられない壁があると言ってよいほどの重要度の差があります。なぜなら、国家統計で一番重要な実質GDP成長率と物価系のインフレ率を足したものが、政策金利の目途になっているからです。昨今のデフレ圧力で、先進国ではその目途を大幅に下回る政策金利になっていますが、実質GDP成長率とインフレ率の重要性は落ちていません。

このように経済指標には、それぞれに重要度のランクがあるのですが、全部を覚えられないという人は、政策金利系の経済指標が別格だということだけ、覚えておきましょう。特に米国、欧州、日本の中央銀行が政策金利や量的緩和について決定する会合である、米国FOMC、欧州中銀(ECB)理事会、日銀政策決定会合の3つは最重要です。会合の議論の内容を理解することももちろん重要ですが、それ以上に事前に公表されている時間をチェックしておくことが大事です。この3つが知らないうちに終わっていたという事態だけは避けましょう。

次に、「要人発言」について説明します。「要人発言」も「経済指標」と同様に各国のファンダメンタル分析の材料です。「経済指標」を説明するものであったり、今後の政策を説明するものであったりします。要人を整理のために5つに分類して紹介します。


・国家代表  :オバマ大統領、安倍首相

・中央銀行代表 :イエレンFRB議長、ドラギ欧州中銀(ECB)総裁、黒田日銀総裁
・財務省高官  :ルー財務省長官、麻生財務大臣

・中央銀行高官 :FOMCメンバー、ECB理事会メンバー、日銀政策委員会メンバー
・その他 : 金融庁、経済閣僚、経済学者、大手企業代表など


経済指標と同様に要人のランクを紹介します。(図2)

20150417_takai_graph2.jpg

「要人発言」のランクについても、国家代表と中央銀行代表とそれ以外の要人の間には、超えられない壁があると言ってよいほどの重要度の差があります。同じ内容を話しても、代表者の言葉の重みは別格です。次に重みがあるのが、国家の予算と税の政策に影響力が大きい財務省の高官と、政策金利の決定に投票権を持つ中央銀行高官の発言です。この両者とその他の要人の間にも、超えられない壁があると言ってよいほどの重要度の差があります。2014年の日本を例にすれば、消費税をめぐる財務省関係者の発言と日銀の追加緩和をめぐる日銀政策委員会のメンバーの発言の注目度をイメージすれば、財務省高官と中央銀行高官の発言の重さをイメージできると思います。

ここで注意したいのは、国家代表と中央銀行代表が同格ということです。中央銀行は、金融に関して、政府から独立しているという位置づけになっています。つまり、金融に関しては、一国の代表のような権限が与えられており、具体的には、任期中の罷免が基本的にはありません。別格の経済指標である政策金利を決定する機関の長である、イエレン議長や黒田総裁は、オバマ大統領や安倍首相と同等の強力な権限を持っていることに注意しましょう。彼(女)らの発言は、聞き逃してはいけません。経済指標発表ほどの厳格な時間の事前公開はありませんが、スケジュールから発言機会を事前に調べることは可能です。

マネックス証券では、経済指標カレンダーというコンテンツで、経済指標と要人発言の発表時間を公開しています。その情報をどのように使っていくかを次回からお話します。

=====================================

コラム執筆:高井 克実  トレード・サイエンス株式会社

1995年東工大卒。外資系証券会社等でディーラーとして活躍後、2013年トレード・サイエンス株式会社に入社、シグナルモデルの開発・運用に携わる。

マネックスからのご留意事項

「特集2」では、マネックス証券でお取扱している商品・サービス等について言及している部分があります。
マネックス証券でお取引いただく際は、所定の手数料や諸経費等をご負担いただく場合があります。お取引いただく各商品等には価格の変動等による損失が生じるおそれがあります。また、信用取引、先物・オプション取引、外国為替証拠金取引・取引所株価指数証拠金取引をご利用いただく場合は、所定の保証金・証拠金をあらかじめいただく場合がございます。これらの取引には差し入れた保証金・証拠金(当初元本)を上回る損失が生じるおそれがあります。

商品ごとに手数料等及びリスクは異なりますので、詳しくは「契約締結前交付書面」、「上場有価証券等書面」、「目論見書」、「目論見書補完書面」又は当社ウェブサイトの「リスク・手数料などの重要事項に関する説明」をよくお読みください。

マネックスメール登録・解除

コラム一覧