マネックスメール編集部企画の特集コラムをお届けします。
みなさん、こんにちは。『今どき、株で儲けるヤツは、「業種別投資法」を使っている』著者の長谷部翔太郎です。先々週、遂に日経平均株価は2万円にヒットすることとなりました。2万円回復は実に15年ぶり、ITバブル期以来のことです。若い世代の方にはまさに未体験ゾーンということになるのでしょう。アベノミクスによる株価回復の象徴的な節目になったように思います。とはいえ、2万円到達後はさすがに達成感からかそれをやや下回る水準で一進一退となっています。まさに足場を固める状況という段階に入ったのかもしれません。ところで、筆者は前回のコラムで『「休むも相場」というところかもしれません』と書いておりました。しかし、2万円の到達はその週末という速さで、ちょっと情けないコメントとなってしまいました。読みの浅さを猛省する次第です。
さて今回、本コラムでは「中期経営計画」をテーマに採り上げたいと思います。既に多くの企業が3~5年後を見据えた中期経営計画(中計)を策定していますが、決算シーズンとなるこの時期にはちょうど中計進捗や新計画の発表などが重なることも少なくありません。その中身や内容によっては、株価に大きな影響を与える材料となるケースもあります。実際、かつては中計を発表しただけで株価が動いたケースもありました。最近はさすがにそういった例は少なくなりましたが、やはり投資を考えるうえで経営計画が重要であることに疑いの余地はありません。今回は投資を考えるうえでこういった中計のどこに注目すべきか、を議論してみましょう。
まず、中計においては概して大幅な収益力の改善などが謳われるケースがほとんどであることにお気づきの方は多いことでしょう。これは経営者として見れば当然で、それなりに背伸びをした目標を設定しなければ、経営体質の変革や革新的なアイデアが生まれてこないためなのです。逆に、目標を実現可能な堅めのレベルに留めるとすれば、結果的に慢心からその目標にすら達しないというリスクも否めません。中計目標には多分にそういったやや政策的な意図が含まれることを予め理解しておく必要があります。そのため、といってしまっては極論かもしれませんが、中計が未達成となるケースは実はとても多いのです。このことは、中計目標が如何に野心的であっても、そのものの実現性については厳しく見ておかなければならない、ということに他なりません。株価が中計そのものに過度に反応した場合は、時間が経てばその実現性をもう一度見極める局面が訪れる可能性を考えておくべきでしょう。逆に、目線を低く置いた中計計画を提示している企業はどうでしょうか。背伸びをしない保守的な社風や着実な計画達成こそが株主への責任という場合もあるでしょうが、計画を外から見る限りでは変革への意欲や決意をあまり感じることができません。中期経営計画は短期の業績見通しとは異なり、企業の本質的な問題点に斬り込み、時間をかけて体質強化に取り組むプロジェクトでもあります。単に目標数字を見るだけでなく、中計の背後にある姿勢や考え方まで想像してみると、銘柄選別への重要な材料になるものと考えます。
それ以上に筆者が注目するのは、その中計が未達に終わった時の企業の態度です。計画未達となった時に、その敗因にしっかりと言及する企業は実は決して多くありません。中計策定時には高らかにその方針など宣言するにもかかわらず、です。未達に言及した企業でも、為替動向や景気動向など外部環境の変化をその原因とし、「仕方なかった」との説明がよく聞かれます。しかし、そもそも中期計画はそういった外部要因にかかわらず(あるいは外部環境の変化をしっかりと予想して)、一定の成果を達成するべく施策を打っていくものであるはずです。そして、残念ながら未達に終ったとすれば、どこにその原因があったのか、を総括しておかなければ、その後は中計を設定しても達成確度の上昇は覚束ないでしょう。計画が失敗した時にこそ、企業の本当の実力が垣間見えるきっかけとなるのです。
もちろん企業内部では当然、その総括がなされていると思いますし、それらを全て投資家に開示する必要もないと考えます。しかし、失敗への真摯な反省が片鱗すら見せない態度では(本当は深刻に受け止めていても)、外部からその企業の経営を信頼することはできません。個人の場合でもそうですが、本当は説明したくない「失敗」を説明できた時こそ、真の意味で失敗を克服し次のステップに進化できたと言えるはずです。中計にはこういった見方もあるということを是非、頭の片隅に置いておいていただければ幸いです。
コラム執筆:長谷部 翔太郎
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