マネックスメール編集部企画の特集コラムをお届けします。
中国では、都市部と農村部の間で所得や生活水準の差が大きく、より高い収入を求めて農村部から都市部に移り働く人が増えています。
2000年の時点で、このような移住労働者は1億2,100万人で、総人口に占める割合は9.6%でしたが、2013年には2億4,500万人、18%へと倍増しています。
農村部から供給される豊富な労働力が、衣料品や電化製品など加工、組立型の製造業を支え、中国経済の発展に貢献してきました。
出稼ぎ労働者の出身地は、中部、南部の内陸にある四川、湖南、河南、貴州の4省、ならびに東部の安徽、江西の2省に集中しています。
2013年の調査で確認された2億4,500万人のうち、71%がこれら6省の出身者でした。
一方、移住先は香港やマカオに隣接する広東省が最も多く、2013年の2億4,500万人の29.5%を受け入れています。省都の広州市や深圳市、ならびにその周辺地域は、製造業の拠点として知られており、日系企業も数多く進出しています。
広東省に次いでは、上海市及び隣の浙江省が、多くの労働者の移住先となっています。
中国では、一人っ子政策の影響により少子高齢化が急速に進んでおり、15歳から59歳の生産年齢人口が既に減少に転じているほか、2020年頃からは総人口も減少すると見られています。
「世界一人口が多い国」と言えば中国がイメージされますが、近い将来、インドが中国を抜き、人口最多の国になることが確実視されています。
都市部及びその周辺で若年層を中心とした労働力が不足する一方、農村では機械化の進展等により、以前ほど人手を要しなくなっているため、収入の多さにも惹かれる形で、人口の移動が起きています。高度成長期の日本と同様の構図です。
働き盛りの年齢の人々が都市部に移り、農村に高齢者と子供が取り残される家庭も増えています。父母に代わり、祖父母が孫の世話をすることが出来ればまだ良いのでしょうが、子供たちだけで生活し、年に一度、旧正月に父母が帰省するのを心待ちにするというケースも珍しくないそうで、心身の発育や学習に影響が生じないか、心配になってしまいます。
また、農村部の高齢者にとっても、子供が出稼ぎで不在になることは大変な問題です。
伝統的に、老後は子供の世話になることが当然視されている中国、特に農村部では、年金制度が十分に整備されておらず、経済的に困窮し、生活が困難になる高齢者も増加しているそうです。
都市部で働くことで収入が増加しても、子供の生活や教育に加え、二重生活で自身の生活費も嵩みますので、高齢の父母の生活までを支えることは容易でありません。
より高い生活水準を望み、出稼ぎで収入増を図ることは自然な流れですが、新たな不幸を招いているとも言えます。
出稼ぎ労働者の実態は、大気汚染や大都市の交通渋滞、通勤ラッシュと同様、昔の日本の姿に重なって見えるものです。
彼らの存在が、中国の成長を支え、また多くの日系企業の中国事業に貢献していると言えます。
都市部に人口が集中し、蓄積されることで、交通渋滞や大気汚染が激化しており、また農村部に残された高齢者や子供の福祉の問題も深刻化していますが、何とか皆が幸せな生活を得られるよう、望みたいと思います。
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コラム執筆:長野雅彦 マネックス証券株式会社 北京駐在員事務所長
マネックス証券入社後、引受審査、コンプライアンスなどを担当。2012年9月より北京駐在員事務所勤務。日本証券アナリスト協会検定会員 米国CFA協会認定証券アナリスト
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