第12回 時限爆弾の起爆時間 【FXトレードの真髄】

マネックスメール編集部企画の特集コラムをお届けします。

第12回 時限爆弾の起爆時間 【FXトレードの真髄】

本コラムは、2014年7月から9月に3回にわたって開催されたオンラインセミナー「FXトレードの真髄」における筆者の発言の内容を再構成してお届けするものです。

今回は、「経済指標と要人発言」の「サプライズ」が、「レンジ戦略」と「トレンド戦略」に与える影響について、考察していきます。「レンジ戦略」と「トレンド戦略」については、第8回で詳しく説明しています。

まず、「サプライズ」による「レンジ戦略」の撤退をみてみましょう。(図1)

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(図1)は、予想外の「経済指標」が発表されたことで、マーケットが上に動く際の、「レンジ戦略」の撤退のイメージです。予想外の「経済指標」は、それまでのファンダメンタル分析の前提が崩れたことを意味します。その前提は、高値手前で売って(図1の赤い丸)、安値の手前で買う(図1の青い丸)という、「レンジ戦略」の前提にもなっており、前提の崩壊は、「レンジ戦略」の撤退の動機になり、撤退のタイミングになります。
「レンジ戦略」は、「レンジ相場」を形成する高値が「ブレイクアウト」で突破されることで完全な終了となりますが、「ブレイクアウト」の可能性を見越して、前倒しの撤退の注文が入ることになります。(図1)の赤矢印での例では、売り建玉の撤退(決済の損切り)の成行の買い注文になります。
この「ブレイクアウト」を見越した、前倒しの撤退には、「経済指標」のランクが高く、「サプライズ」が大きいほど、多くの決済注文が断続的に入るという傾向があります。なぜなら、「レンジ戦略」を取っているトレーダーが、それまでの「レンジ戦略」の前提を大きく崩すような「サプライズ」を、ランクの高い「経済指標」で受けてしまった後では、自分の建玉を上司や顧客に説明することが困難になるからです。テクニカル分析としては、「ブレイクアウト」に発展する可能性があり、ファンダメンタル分析としては、「レンジ相場」の前提を覆された可能性があり、誠に苦しい状態に追い込まれます。この苦しい状態が、前倒しの撤退の決済注文を誘発するのです。

次に、「サプライズ」による「トレンド戦略」の仕掛けをみてみましょう。(図2)


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構図は、「レンジ戦略」の撤退と同様です。予想外の「経済指標」は、それまでのファンダメンタル分析の前提の変更であり、前提の変更は「トレンド戦略」の仕掛けの動機になり、仕掛けのタイミングになります。「レンジ戦略」の撤退ほどの苦しさはありませんが、大きなサイズを取引するプロのトレーダーであればあるほど、上司や顧客からの「なぜ建玉を持たないのだ?」という圧力に対して説明ができなくなります。「順張り」の「スタイル」を看板にしているトレーダーであれば、なおさらその圧力や自分自身で「建玉を取らなくては」という動機が強くなります。結果として、「ブレイクアウト」の成功による(図2の例では)高値の突破を見越した前倒しの仕掛けの買い注文(図2の青い矢印)が入るのです。

「高値と安値」、「レンジ相場とトレンド相場」、「ブレイクアウト」、「レンジ戦略とトレンド戦略」を踏まえた上で、「経済指標と要人発言」の「サプライズ」による「レンジ戦略の決済注文」、「トレンド戦略の新規注文」をまとめてみましょう。(図3)

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「経済指標と要人発言」の発表時間は、時限爆弾の起爆時間が、事前に公表されているようなものです。時限爆弾は、「サプライズ」が無いと、不発の場合もあります。爆発した場合のマーケットの値動きの大きさは、「経済指標と要人発言」のランクの高さと、「サプライズ」の大きさに依存します。(図3)の例は、「サプライズ」が有った「経済指標」の発表の後で、「レンジ戦略の売り建玉の決済の買い注文」(図3の赤の矢印)と、「トレンドの戦略の新規の買い注文」(図3の青の矢印)が断続的に出るイメージ図です。その後は、激しい上昇の動きで高値に迫り、「ブレイクアウト」を試すことになるでしょう。重要なのは、あらかじめ発表時間がわかっているという事です。それゆえに、FXのマーケットでは、ランクの高い「経済指標と要人発言」の発表時間は、トレードを行う際に、格好の目標になります。

次回は、第10回からのテーマ「経済指標と要人発言の意味を知る」のまとめになります。


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コラム執筆:高井 克実  トレード・サイエンス株式会社

1995年東工大卒。外資系証券会社等でディーラーとして活躍後、2013年トレード・サイエンス株式会社に入社、シグナルモデルの開発・運用に携わる。

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