マネックスメール編集部企画の特集コラムをお届けします。
本コラムは、2014年7月から9月に3回にわたって開催されたオンラインセミナー「FXトレードの真髄」における筆者の発言の内容を再構成してお届けするものです。
まだ「ブレイクアウト」されていない「レンジ相場」の「高値と安値」のラインは、マーケットの地雷原のような地帯だと第9回で説明しました。(図1)
そして、まだ発表されていない「経済指標」や「要人発言」の発表時間は、マーケットに仕掛けられた時限爆弾の起爆時間のような時間だと第12回で説明しました。(図2)
では、図1と図2を合わせると、どうなるでしょうか。(図3)
「経済指標」や「要人発言」の「サプライズ」によって「時限爆弾」が爆発し、その爆発が地雷原に届いて、「ブレイクアウト」が成功し、地雷の誘爆が起こるコンビネーションは、強烈な値動きを生み出します。「レンジ相場」から「トレンド相場」へ移行するこのパターンが、「レンジ戦略」の参加者にとっては最も損失につながる動きであり、「トレンド戦略」の参加者にとっては最も収益につながる動きになります。
「サプライズ」がマーケットに大きく影響を与えた実例を2つみていきましょう。
これほどきれいな「サプライズ」から「ブレイクアウト」への発展の例はなかなかないでしょう。首相と次期首相の2人の「要人発言」なので、ランクの高さが最高級です。衆議院解散という「サプライズ」も大きなものでした。(図4)
米国雇用統計という「経済指標」の「サプライズ」が「トレンド相場」を止めた実例になります。その後の2014年前半の「レンジ相場」が長かったため、記憶に残る「サプライズ」となりました。(図5)
「経済指標と要人発言の意味を知る」で注目するのは、これから発表される「経済指標と要人発言」の発表時間です。なぜなら、予想外の「サプライズ」が起こる可能性があるからです。「サプライズ」はこれまでのファンダメンタル分析の前提の変更を意味し、前提の変更は、「レンジ戦略」の撤退と「トレンド戦略」の仕掛けを促し、大きな値幅が生み出されます。特に、ランクの高い政策金利系の「経済指標」や国家代表や中央銀行代表の「要人発言」で「サプライズ」の内容が出ると、「レンジ戦略」の撤退と「トレンド戦略の仕掛け」の成行注文が次々に執行されて、マーケットは短期間に大きく動く傾向があります。この様子は、あたかもマーケットに仕掛けられた時限爆弾が、発表時間に爆発したかの様相であり、それゆえに、FXのマーケットのプレイヤーは今後の「経済指標と要人発言」の発表時間に注目し、トレードを行う際の、目標の時間とするのです。目標の時間とは、タイミングと言い変えることもできます。
「経済指標と要人発言」の意味をまとめると、以下のようになります。
・「レンジ戦略」の撤退のタイミング
・「トレンド戦略」の仕掛けのタイミング
・上記の2つのタイミングが具体化した順張りの成行注文が集中しやすい時間帯
・「経済指標」や「要人発言」のランクが高く、発表された内容が、事前予想と離れて「サプライズ」が大きいほど、成行注文の数とサイズは大きくなる。
・高値や安値を突破する「ブレイクアウト」の成功に発展する可能性がある。
・「サプライズ」と「ブレイクアウト」のコンビネーションは強烈な値幅を短期間に生み出す可能性がある。
・以上の特性から、多くのFXプレイヤーのトレードのタイミングに設定されている
事前に公表されている「経済指標と要人発言」の発表時間は、仕掛けようとする人、撤退しようとする人が待っている時間とも言えます。そしてランクの高い「経済指標と要人発言」ほど、待っている人は多いのです。
トレードを行う時間の目標となる「経済指標と要人発言」を設定することが、「いつ?」というタイミングの「スキル」になります。トレードの方向は、「レンジ戦略」の撤退であれ、「トレンド戦略」の仕掛けであれ、発表後のマーケットの動きに逆らわない方向で行うという「スキル」になります。「スタイル」としては「順張り」に属する「スキル」です。
「順張り」と「逆張り」の選択は、トレードの「スタイル」の究極の選択といってもいい、難しい問題ですが、ランクの高い「経済指標と要人発言」の発表直後に関しては、「順張り」が理にかなっています。なぜなら、ファンダメンタル分析の前提が変更されている可能性があるからです。
これまで説明してきた「経済指標と要人発言」の「スキル」を知っていれば、マーケットの情報処理を効率化できます。
具体的には、仕掛けと撤退(損切り)のタイミングにランクの高い「経済指標と要人発言」の発表時間を選んで、「順張り」の取引を行うことになります。この「スキル」で仕掛けと撤退のパターンをパターン化できると、トレードで勝つための情報処理が、大幅に効率化されるでしょう。
簡単なパターンを紹介します。
・「レンジ戦略」 :ランクの高い「経済指標と要人発言」で「サプライズ」が出ないうちは継続、出たら撤退。
・「トレンド戦略」:ランクの高い「経済指標と要人発言」で「サプライズ」が出たらマーケットが動いた方向に仕掛け、その後、逆方向の「サプライズ」が出ないうちは継続、出たら撤退。
単純ですが、応用力の高いトレードの「スキル」です。これに「高値と安値」の「スキル」を組み合わせれば、トレードの「スキル」の基礎としては十分です。逆にこれらの2つの「スキル」を知っていないと、トレードの検討に時間がかかり、混乱してしまうでしょう。
第10回から第13回まで「経済指標と要人発言の意味を知る」というテーマで、「経済指標と要人発言」というトレードのタイミングの「スキル」を説明してきました。「経済指標と要人発言」の発表時間は、あらかじめ時間がわかっている時限爆弾の起爆時間です。FXのマーケットだけでなく、株式や債券の取引にも広く応用できる「スキル」なので、参考にしていただければ幸いです。
次回は、最終回になります。これまでコラムに書いてきた内容のまとめを行います。
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コラム執筆:高井 克実 トレード・サイエンス株式会社
1995年東工大卒。外資系証券会社等でディーラーとして活躍後、2013年トレード・サイエンス株式会社に入社、シグナルモデルの開発・運用に携わる。
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