第158回 ユーロは底入れしたのか?!GW中のユーロ高の背景 【大橋ひろこのなるほど!わかる!初めてのFX】

マネックスメール編集部企画の特集コラムをお届けします。

第158回 ユーロは底入れしたのか?!GW中のユーロ高の背景 【大橋ひろこのなるほど!わかる!初めてのFX】

GWも終了し東京勢が本格的に市場に戻ってきました。GWに入る前はSell in Mayの警戒があったものの株式市場が崩落することはなく程よい調整に終わった印象。そしてドル/円相場は相変わらず狭いレンジでの膠着相場が続いています。ドル/円相場だけを見ていると大きな変調は見られなかったのですが、このGWを挟んだ期間において、注目すべき動きだったのがユーロ/ドル相場。ギリシャ支援問題は一向に合意が得られぬままで、ギリシャのデフォルトリスクは決して後退したわけではないのですが、4月中旬を底にしてユーロ/ドル相場の下落が止まり、この連休中にユーロは大幅上昇。5月7日に1.1391ドルの高値を示現しました。確かにこのところの欧州の景気指標は改善が見られるものの、このタイミングでのユーロ買いの背景は何だったのでしょうか。そしてこの流れはまだ続くでしょうか。

ユーロが下げ止まり、大きな反騰を見せたキッカケとなったある著名投資家の発言がありました。米国の債券運用会社PIMCOの創業者で「債券王」の異名をもつ著名ファンドマネージャー「ビル・グロス氏」が4月21日(火)に「ドイツ国債は空前絶後のショート機会」と発言。この発言をきっかけにドイツ国債が売られ、利回りが急上昇。5月7日(木)には一時、0.799%を示現したことで、ユーロがこの動きに連れて買われたのです。

ドイツ国債10年物利回りは4月17日に過去最低の0.05%を示現していました。10年国債の利回りがわずか0.05%だなんて...。ちなみに米国の10年債利回りは現在2.10~2.15%で推移しています。日本も異次元の金融政策による日銀の国債購入で10年国債の利回りも低下していましたが、その日本国債よりもさらにドイツ国債の利回りが低下してしまうころまでドイツ国債が買われていたということ。これは欧州中央銀行(ECB)が1兆1000億ユーロ(約148兆円)規模の量的緩和(QE)措置の実施を決定したことによるもので、ECBが国債買入れを開始する前からドイツをはじめとする欧州の国債が先回りして買われており、実はドイツ国債の利回りの低下のトレンドは2014年初頭から始まっていました。

利回りの低下は「ユーロ安」の一因となります。通貨の変動要因は多岐に渡りますが、パリティ(等価、1ドル=1ユーロになること)を目指すところまでユーロが下落するだろう、という予想が大勢だった背景はECBのQE政策がもたらす効果を織り込んだものでした。

しかし、さすが債券王。ビル・グロス氏の発言をきっかけに、行きつくところまで行っていた(買われすぎていた)ドイツ国債買いのバブルが一気に弾けてしまったのです。この動きがもたらしたのは、国債売りだけでなく、あらゆる市場の巻き戻しでした。これまで買われてきたものが売られ、売られてきたものが買い戻されています。長らく買われてきたドルが売られ、ユーロが買い戻されたという値動きに反応して、これまで売りこまれてきた石炭や鉄鉱石、原油などのコモディティ市況は急反騰となりました。この間、株式市場も売りが入って調整色が強くなりましたね。

しかし、この値動きがどこまで続くでしょうか。5月は時期的にファンドの決算期が近いことから利食いが入りやすく、これがSell in Mayの背景とされていますが、単純にファンド勢の利食いだった可能性は否定できません。米国の利上げ時期を巡っては、見方は様々ですが、それでもバイアスは利上げ方向です。欧州はまだまだQEをスタートさせたばかりですので、米国と欧州の金融政策は真逆であり、金利差は米国が高く欧州が低いままであることと、将来的にはこの利回り差は拡大していく可能性の方が大きいのです。5月7日、ドイツ国債利回りは0.799%を付けた後に急反落しその日のうちに0.5%台まで落ちました。この動きに沿ってユーロ/ドルも1.1391ドルの高値が目先の高値となって下落してきています。

ユーロのこのところの上昇が欧州経済の回復を好感したものだという見方もできないことはないのですが、ドイツ国債がビル・グロス氏の発言をきっかけに急落(利回りは急騰)したことによるものだったとするならば、今後のドイツ国債利回りがユーロ/ドル相場の先行きを見る上ではとても重要なポイントとなってきます。テクニカル的には長いこと上値抵抗であった1.10ドル台を超えて上昇しているため、大変強い形でまだまだユーロが買われる可能性は否定できませんが、しかし、再びドイツ国債が買われる地合いに戻るならば、このユーロの高値は絶好の「売りの機会」となります。日米の金融政策の違いからはその方向へと回帰する可能性が高いのではないでしょうか。仮にまだユーロが上昇するとするならば、この長い下落トレンドのフィボナッチリトレースメントでの38.2%戻しである1.179ドル辺りまでが精いっぱいではないかと思っています。

コラム執筆:大橋ひろこ

フリーアナウンサー。マーケット関連、特にデリバティブ関連に造詣が深い。コモディティやFXなどの経済番組のレギュラーを務める傍ら、自身のトレード記録もメディアを通じて赤裸々に公開中。

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