マネックスメール編集部企画の特集コラムをお届けします。
みなさん、こんにちは。『今どき、株で儲けるヤツは、「業種別投資法」を使っている』著者の長谷部翔太郎です。先日、ネパールで大規模な地震が起こりました。東日本大震災を経験した日本人から見て、まったく他人事ではない状況であり、報道で伝えられるその光景に戦慄しました。この場を借りて、現地の方々に衷心よりお見舞いを申し上げるとともに、一刻も早い復旧・復興を心から応援したいと思います。
さて、株式市場は5月に入って膠着感を強めてきました。米中景気の減速懸念台頭、セル・イン・メイへの不安といったマイナス要因と、金融緩和期待や堅調な企業業績、消費増税によって落ち込んだ消費の底打ちなどのプラス要因が拮抗している印象でしょうか。やはり相場はしばらく日柄調整という展開となってきたように思えます。そこで、今回は「住宅着工」をテーマに採り上げたいと思います。住宅は今回の消費増税の影響を最も大きく受けた産業の一つであり、そこに変化の兆しが見えてきたためです。
まずは住宅着工の状況をおさらいしてみましょう。GWの合間に国土交通省から発表された新設住宅着工戸数データによると、2014年度は88万戸と前年比11%の大幅な減少となりました。前年が11%増であったので、まさに行って来いの状況となっています。これほどに変動が大きくなっているのは、まさに消費税引上げが影響したためです。住宅はその価格の高さから消費者が増税で受ける心理的圧迫感はかなりのものなったことは想像に難くありません。消費増税前(厳密には経過措置がありましたので2013年9月まで)には駆け込み契約が増加し、増税後はその反動で一気に市場が冷え込んだという構図です。実際にはローン減税などの救済措置があり、重税感が緩和される措置は設けられていたのですが、消費者心理としては現実の見積書(請求書)を見ると購入意欲が削がれる状況にあったのだと思われます。これを受け、2014年度は多くの住宅メーカーが業績面で苦戦を強いられる展開となっています。
しかし、新設住宅着工戸数を月次で見てみると、流れが変わってきた可能性が伺えます。具体的には、3月の着工戸数が約1年ぶりに前年同月比でプラスに転じてきたのです。プラス幅はまだ0.7%とごく僅かですが、方向性が変わってきたことを軽視すべきではありません。しかもこれは着工戸数ですから、契約ベースではもっと早いタイミングで反転してきていると考えるべきです。年度の数字ではまだまだ不振を極めている印象となりますが、転換点は既に訪れていると見ることができるのです。住宅メーカーの中では既に転換点を見越して株価が上昇基調に転じている銘柄も散見されますが、このまま回復基調をたどるとすれば、大きなうねりとなって住宅業界に相場の注目が集まってくるシナリオも描けると考えます。
ただし、このコラムで採り上げる以上、状況はそれほど単純ではありません。それは、2017年4月に消費税の再引上げが予定されているからです。これには要注意です。まず、それまでには再度駆け込み需要が盛り上がってくる可能性があります。これは住宅業界への業績という観点では強い追い風になると思われます。しかし、増税後には再度その反動減が予想されるため、これは単純に好材料とは言い切れないのです。もちろん、住宅メーカーは強烈な需要の反動減があった今回の二の舞は避けるべく対策を講じてくるでしょうが、今回のように増税前後で消費行動にそれなりの変化が生じることは不可避とも思えます。仮に駆け込み需要が一時的に業績を押し上げても、その先の先行きに不透明感があれば、株価の重石となるリスクは否めません。再増税を軸に住宅業界では急拡大、その後は急ブレーキといった状況が再訪しかねないと認識しておく必要があるでしょう。当然、株式投資戦略でもそれを強く意識しておかなければならず、なかなか一筋縄では行かない局面に差し掛かってきたと考えます。しかし、事業環境が難しさを増すほど、実力ある企業、発想力ある企業が大きく飛躍するチャンスになることも事実です。むしろ銘柄選択の格好のチャンスであり、腕の見せ所と積極的に捉えるべきかもしれません。アナリストとしても、非常に興味を持ってこちらの業界には注目していきたいと思っています。
コラム執筆:長谷部 翔太郎
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