マネックスメール編集部企画の特集コラムをお届けします。
北京市で、6月1日より、「喫煙制限条例」が施行されます。レストラン等を含む公共スペースや職場内での喫煙が禁止され、またたばこの広告宣伝、販促活動や幼稚園や小中学校の周辺での販売も禁止されます。
禁煙の場所で喫煙した者には200元(約4,000円)の罰金が、さらに制止を聞き入れずに喫煙を続けた者には最高1万元(約200,000円)の罰金が科せられるそうです。
当事務所が入居しているビルでは、これまでフロアの端にある給湯室を休憩室兼喫煙所とし、こちらでのみ喫煙が出来たのですが、先日管理会社の担当者が各テナントに対し、「6月1日より全館禁煙」との通知文書を配布しています。
もっとも、以前より禁煙のはずのトイレの個室での喫煙が頻発しているような状況ですので、罰則規定を導入したところで、条例がどの程度守られるかは心もとないものがあります。
また、中国全土で、5月10日(日)より、たばこの卸売価格に課せられる税金が5%から11%に引き上げられました。たばこ税の引上げは2009年以来6年ぶりです。
一挙に2倍以上の引上げですので、販売業者や愛煙家は猛反発しているそうです。世界の趨勢からはかなり遅れている感がありますが、ようやく中国でも、喫煙に対する規制が強化されつつあります。
中国では、今回引き上げられたたばこ税のほかに、たばこ消費税等他の税金もあり、小売価格に占める税金の割合は40%程度となっています。世界保健機関(WHO)の調査によると、これは主要国では最も低い水準だそうです。
ちなみに日本は約65%で、ヨーロッパ諸国では80%程度に達しています。またWHOは「最低70%」を推奨しており、たばこの税金に関しては、中国は未だこれらの水準にはほど遠い状況です。
WHOの中国担当者は、「今回のたばこ税引上げを歓迎する。増税分が適正に小売価格に転嫁されることを希望する」と述べています。前回2009年の増税時には、業界団体が生産者に支払う補助金を引き上げた結果、小売価格への転嫁が浸透しなかったそうで、今回、これの二の舞は避けたいと考えています。
たばこ税の引上げについては、喫煙者の減少による健康増進を目的としたもの、あるいは経済成長の鈍化による税収減を補うためのもの等、様々な憶測が飛び交っていますが、専門家は、もし中国政府が喫煙者やたばこの販売量の減少を目指すのであれば、たばこの値段をさらに大幅に引き上げる必要があると述べています。このあたりはWHOの担当者の見解と一致します。
増税後の販売状況や喫煙者の行動の変化の有無が気になるところです。
中国には3億人の愛煙家がおり、販売量とあわせ世界一のたばこ大国と言われています。
年配の男性の間では、来客あるいは友人にたばこを勧めることが習慣となっており、このあたりは高度成長期前後の日本と同じです。
若年層では、健康への意識の高まりから、喫煙率が徐々に低下しているそうですが、歩きたばこを含め屋外では喫煙の制限がなく、また「禁煙」の掲示があるレストランでも、店員に灰皿を頼めば出してくれるような状況です。
まだまだ「喫煙者天国」という感じがしますが、「大気汚染を心配しつつ喫煙は続ける」というのはちょっと疑問にも思えます。
中国の喫煙事情は、日本の1980年代あるいは90年代くらいの状況でしょうか?都市部と農村部でもかなりの差があるものと思われます。
税収を維持しつつ、喫煙者は減らしたいというのが政府の意向でしょうから、どのような舵取りにより、両立を図るのか、また日本と同じような道を進むことができるか否か、注目したく思います。
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コラム執筆:長野雅彦 マネックス証券株式会社 北京駐在員事務所長
マネックス証券入社後、引受審査、コンプライアンスなどを担当。2012年9月より北京駐在員事務所勤務。日本証券アナリスト協会検定会員 米国CFA協会認定証券アナリスト
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