マネックスメール編集部企画の特集コラムをお届けします。
前回、ヘッジファンド動向をどのようにトレードに活かすかというコラムを書きましたが、前回のコラムでご紹介したヘッジファンドの「マクロ系」「モデル系」以外にも「CTAの買いが入った」などのFXニュースを目にすることがあります。今回は、このCTAと呼ばれるファンドの存在についてです。
CTAはコモディティー・トレーディング・アドバイザーの略。商品投資顧問と訳されますが、投資するのはコモディティ(商品)だけではありません。商品はもちろんですが、株式、為替、金利、債券などあらゆる市場に投資するヘッジファンドの一種ですが、現物にはいっさい投資せず、先物とオプションに特化していることが特徴です。
CTAの75%は、市場価格の統計的分析に基づいて値動きのクセからアノマリーやトレンドといったクセを見出し、収益の源泉とする金融工学プログラムによって、コンピューターロボットが自動売買する戦略を取っていると言われています。このように聞くと、裁量でトレードする個人投資家などかなうわけがないという気になってしまいますが、ヘッジファンドとはいえ、勝ち続けているわけではありません。
CTAとは、その名の通りもともとは原油や貴金属、穀物といった商品先物に投資をするファンドで、コモディティ市場では大きな影響力を発揮してきました。金融工学を駆使した自動売買とは言いますが、要はトレンドを見つけると、それを後追いしポジションを組成するトレンド・フォロー型。ですから劇的な大相場に強く、リーマン・ショック時には大きなパフォーマンスを上げたことで知られています。しかし近年、中国の景気鈍化に連れてコモディティ需要が低迷、商品市況もさえない値動きとなる反面、株式市場のパフォーマンスが上がってくるに連れてCTAのパフォーマンスは悪化していきました。
このCTAファンド勢の大逆転劇が近年の株や為替市場に影響を及ぼしていると考えられます。2014年、マンをはじめとする世界最大手クラスのCTAが、4-6月期の四半期に主力ファンドの運用資産におけるエネルギーや貴金属、穀物への投資資金のほぼすべて引き揚げたことが話題となりました。この資金が通貨や債券および株式市場にシフトした、というのです。日銀の推計ではCTA の預かり資産残高は 1,900 億ドル(23兆円)程度ということですが、これにレバレッジをかけて投資していますから、そのインパクトはかなり大きいと思われます。
今年に入って日本株市場で現物株がそれほど上がっていないのに、先物価格だけがどんどん上昇していく、というような現物と先物市場の価格のかい離が散見されたのが、これがまさにCTAの存在によるものだという指摘もあります。昨年来、日本市場だけでなく米国の株式市場も1日で大きく上下動するようになりましたが、彼らの参入が強く影響していると考えられるのです。
CTAは為替市場においては「順張り」が主流とされています。超短期売買はあまり行わず、トレンドがある方向にポジションを淡々と積み上げていく運用スタイルで、トレンドを見出せる通貨のポジションは増加させる反面、明確なトレンドを見出せない通貨のポジションは減らすことが多いとされています。かといって、長期的な大局のトレンドを獲るグローバルマクロ系のような長い売買ではありません。
2012年秋~2013 年前半や 2014 年夏場以降の円安局面では、前回コラムに書いたグローバルマクロや CTA の動きが活発化したことで円安を加速させた面があったようにみられると日銀はレポートしています。
現在のドル円相場も、レンジをブレイクして以降円安ドル高の方向に加速しており、そのスピードが速いことから、警戒の声も出始めていますが、CTAによるポジション積み上げ型のトレードがこの相場を一時的にオーバーシュートさせていくのかもしれません。CTAの売買のニュースを目にした場合、トレンドフォロー型であり、トレンドを後追いし大きな値動きを形成する手法によるポジション構築である、ということを踏まえて、その目先のトレンドに乗ってみるというのも一つの考え方といえるでしょう。ただし、順張り、トレンドフォローとはいえ、高値掴みをしないように、きちんと押し目を待つ売買を心掛けてくださいね。
コラム執筆:大橋ひろこ
フリーアナウンサー。マーケット関連、特にデリバティブ関連に造詣が深い。コモディティやFXなどの経済番組のレギュラーを務める傍ら、自身のトレード記録もメディアを通じて赤裸々に公開中。
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