第162回 5月雇用統計受けてドル全面高もユーロの反騰はまだ続く?! 【大橋ひろこのなるほど!わかる!初めてのFX】

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第162回 5月雇用統計受けてドル全面高もユーロの反騰はまだ続く?! 【大橋ひろこのなるほど!わかる!初めてのFX】

5月のアメリカの雇用統計が予想を大きく上回ったことで、ドル買いが強まりドル/円相場は125円台後半まで急上昇、ユーロ/ドル相場も急落となりました。5月22日のFRBイエレン議長の「年内に利上げ」発言以降、再びドル買いが優勢となっていましたが、雇用統計の数字がその可能性をより強めたことでドル高に拍車がかかりました。雇用統計の結果を受けて2015年のうちには利上げは確実という思惑が、より早い時期の利上げの可能性があるのではないかという期待とともに肥大しドル独歩高の様相を呈し始めていますが、6月は欧米金融機関の中間決算となるため、ポジション整理などの「特殊要因」には気を付けておきたい時期にあたります。

中間決算期の6月、ユーロ/ドル相場が転換しやすい傾向があります。
昨年2014年は5月9日に天井を付けたユーロ/ドル相場が2015年3月までの長い下落トレンドへと突入していくのですが、見事に6月12日から6月30日までの2週間余りの期間はユーロ/ドルが上昇しています。大局のトレンドとは逆方向に動きました。その前の年、2013年は5月中旬から6月中旬にかけては上昇基調にありましたが、6月中旬から6月末までは一転下落基調に転換。7月に入ってから再び上昇トレンドに戻りました。つまり、6月の2~3週のみ、トレンドとは逆方向に動いています。2010年は顕著にトレンドが転換してしまっています。2009年11月からのユーロ下落トレンドが6月第1週に底入れし、長い上昇トレンドへとシフトしました。必ず毎年そうなる、ということではないのですが、それにしても何故この時期にユーロ/ドル相場が逆回転しやすいのでしょうか。

欧米金融機関は、ユーロ絡みのアセットを多く保有しています。日本の金融機関は円絡みのアセットを多く持つのと同じ。欧米はユーロやドル資産がメインですね。為替市場ではユーロ/ドルという通貨ペアが主流の取引です。その欧米勢が6月の中間決算に向けて、それまで構築していたポジションを整理し、利益や損失を確定させる必要があるのです。となると、重要なのが、彼らがいったい何をどのくらい保有しているか。ユーロ/ドルを買って利益を上げていれば、利食われることでユーロ/ドルは下落圧力がかかりやすいですし、ユーロ/ドルを売っていれば、買い戻さねばならないためにユーロ/ドル相場は上昇しやすくなります。要は「ポジションが大きくユーロの売りや買いに偏っているか否か」がポイントになってきます。ポジションにあまり偏りがなければ、特徴のある動きはでませんが、偏りが大きければ大きいほど、ユーロは逆方向に動きやすくなる、というわけです。

欧米勢がどのような資産をどのくらい保有しているかを正確に知ることはできませんが、参考になるのがIMM通貨先物市場のポジションです。IMM通貨先物ポジションとは、短期筋や投機筋、いわゆるヘッジファンドなどによる投機的なポジションを示しています。為替市場はプレーヤーも多岐に渡り、市場規模も巨大であることから、彼らのポジションが為替の大局の方向性を動かすということはないのですが、ポジションが急激に増減すれば短期的に相場の流れを変えてしまうということはあります。これまで6月にユーロ/ドルが一時的な逆回転を演じた際には、このIMM通貨先物ポジションが大きく整理されることによって動いたと思われる増減が見られました。そして、最新のデーターは(毎週金曜に、その週の火曜日時点の数字が発表となるため1週間古いデーターをみるしかありません)6月2日時点のポジション。ファンド勢のユーロ買いポジションは49,471枚に対してユーロ売りポジションは214,983枚、相殺したネットユーロ売りポジションは165,512枚となっています。前回171,740枚から減少しているのは、彼らがユーロ売りポジションを少し減らしたことを表しています。

ちなみにドル/円相場の彼らのポジションは円買い46,681枚に対して円売りが132,374枚、ネット円売りが85,693枚と、ユーロ/ドルの売りポジションの半分程度。前回分が62,224枚の売りでしたので、ヘッジファンド勢はドル/円を買うポジションを増やし、ユーロ/ドルを売るポジションを減らしているという傾向が出ているということです。

まだまだユーロの売りポジションの偏りが大きく、これが整理される可能性は大きいと思われます。予想を上回るいい数字となった雇用統計の衝撃でドル買いが旺盛となったことからユーロ/ドル相場は一時的に大きく下落しましたが、6月の中間決算期が過ぎるまではユーロ/ドルが再び下落開始となる、と見るのは時期尚早ではないかと思っています。

2015年、米国は年内利上げの公算が大きく、欧州は量的緩和を継続していることから、長期的にはドル高ユーロ安のトレンドであると思われますが、カレンダー的な特殊要因が、短期的に相場を逆流させることもあることを覚えておきましょう。

コラム執筆:大橋ひろこ

フリーアナウンサー。マーケット関連、特にデリバティブ関連に造詣が深い。コモディティやFXなどの経済番組のレギュラーを務める傍ら、自身のトレード記録もメディアを通じて赤裸々に公開中。

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