第164回 なぜ強い?ポンド上昇どこまで 【大橋ひろこのなるほど!わかる!初めてのFX】

マネックスメール編集部企画の特集コラムをお届けします。

第164回 なぜ強い?ポンド上昇どこまで 【大橋ひろこのなるほど!わかる!初めてのFX】

ポンドは、米国の次に利上げが近い国の通貨として注目されており、ポンド円相場は4月16日の173円を起点に現在は195円まで上昇しています。たった2か月あまりで20円もの上昇を見せていますが、リーマンショック前は251円まで高値がありましたので、185円を超えたところで、やっと半値戻しを達成したばかりです。ドル円相場のリーマン前の高値は124円台ですので、この6月に前戻しを達成していますね。今回は上昇が続くポンドトレードについてです。

◆膠着のドル・円・ユーロ

6月の米FOMCでは市場が期待していたほどアメリカの利上げ時期は早くないとの見方が強まり、ドル高の勢いは沈静化しており、この先のドルの行方を占う手掛かり材料が乏しい環境となってきました。

また、この6月は黒田日銀総裁による「(実質実効為替レートからみると)これ以上円安にはなりそうにない」発言や、火消し発言によって否定はされたものの、オバマ大統領がG7後に「ドル高は問題だ」と発言したとされる報道で、ドル円相場は125円より円安ドル高へは行かないのではないか、という見方が広がりつつあるようです。主要通貨であるドル・円相場の膠着感が強まる中、ポンドがきれいなトレンドを描いています。

◆トレードの基本はトレンドに乗ること

レンジ相場を逆張りで取るのも手法の一つですが、レンジ幅が小さい場合、レバレッジを大きくしないと手数料やスプレッド(売りと買いの価格差)負けしてしまいます。レバレッジを上げてトレードすれば、レンジを抜けてトレンドが生じた際に大きな損失に繋がるリスクもあります。レンジ相場というのは、後に見てみればレンジだったということは確認できても、渦中ではどのレベルが上値、下値になるか分かりにくいものです。レンジ相場で収益を上げる研究は、大きく値幅を取れる可能性が高いトレンドフォローで相場が取れるようになってからでしょう。基本のトレードができないうちはなんとなく逆張りして、レンジ相場で資金を無駄に減らしてしまいます。

◆4月半ばまで軟調推移だったポンド

今年に入ってイギリスの消費者物価指数が過去に例がない0%に落ち込んだことで、昨年来からの英国利上げ思惑が一気に後退、ポンドは軟調な展開を強いられていました。4月にはなんと消費者物価指数が▲0.1%とマイナスとなったことで、利上げ期待が消え去り、5月の総選挙の波乱予想も重なってポンド売りが加速したのですが、ポンドが弱かったのは4月中旬まで。波乱なく通過した5月の総選挙を受けてポンドの買戻しがスタートします。(選挙前の予想の段階でポンドの買戻しが始まりました)そして今月6月に発表された雇用統計では、2~4月の賃金上昇が約6年ぶりの高いペースに達していることが明らかになったことでポンド買いに勢いがついています。賃金上昇というのは労働市場の競争激化で労働者の賃金交渉力が高まっているということですから、景気がすこぶるいいということ。消費者物価も5月分はプラス0.1%へと改善。相場はすでに2か月上昇となっていますが、米国利上げがテーマ性を薄める中で、次の市場のテーマがイギリスの利上げ期待へとシフトしてきているようです。ポンドドル相場は月足で見るとリーマンショック以降1.40~1.70ドルの間で推移しており、現在はまだ1.58ドル水準。月足レベルでのレンジ上限まで上昇の可能性があるとしても、まだまだ上値余地があると考えることができます。

しかし、ポンドはボラティリティの高い通貨です。ドル円の120円に対しポンド円は195円と値位置が高いことから値幅も大きくなるのは仕方がないのですが、レバレッジを上げて取引すれば、あっという間に資金を失うリスクの高い通貨です。経済指標を受けて真っ逆さまに想定を超える下落を見せることがありますが、そこが買い場となることが多いのが特徴。上昇トレンドの中で急落があっても売りでついて行かず、安値を拾うスタンスを徹底することがトレンドフォローの鉄則です。また、何も材料がない凪相場では手を出さず、急落した時に拾うことを徹底するのも勝ち残るポイントです。現在のポンド円は移動平均からのかい離が大きく、修正はそれなりに入りそうなチャート。192~193円くらいまでの急落、押し目があれば理想ですが、特にポンド取引の場合、レバレッジを上げず、急落時に細かく拾うスタンスが肝要です。

コラム執筆:大橋ひろこ

フリーアナウンサー。マーケット関連、特にデリバティブ関連に造詣が深い。コモディティやFXなどの経済番組のレギュラーを務める傍ら、自身のトレード記録もメディアを通じて赤裸々に公開中。

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