第166回 リスクオン、リスクオフ、ユーロトレードの考え方 【大橋ひろこのなるほど!わかる!初めてのFX】

マネックスメール編集部企画の特集コラムをお届けします。

第166回 リスクオン、リスクオフ、ユーロトレードの考え方 【大橋ひろこのなるほど!わかる!初めてのFX】

ギリシャ国民投票の結果を受けた6日月曜の東京市場は日経平均が一時500円を超える下落に見舞われ、ドル円相場も121.84円まで窓を開けて下落、リスクオフの様相を呈しました。日銀が導入している国債購入などの量的緩和策は、日銀が市中の銀行から国債を買い取る代わりに資金を供給するわけですから、日銀の黒田バズーカは「円安」を演出する政策。よって平時は「円売り」のトレードがトレンドとなり、円ショートポジションが積みあがっていきます。これが何らかのリスクにさらされ、リスクを回避しなくてはならない事態に追い込まれると、このポジションが解消され逆流することで、円高となるということで、2週続けてドル円相場は週明け月曜、ギリシャリスクで円高スタートとなりましたが、ではギリシャ当事国通貨「ユーロ」はどうでしょう。

6月30日ギリシャがIMFへの債務が返済できずに事実上のデフォルトに陥った際は、ユーロが窓を開けて急落、その後落ち着きを取り戻す過程でユーロが買い戻され上昇していきました。そして、国民投票を受けた週明け6日、大差で「NO」という意外な結果にユーロはまたして、窓を開けての下落、売られる展開となっています。リスクがあればユーロは売られる通貨ということなのでしょうか。

欧州も日本と同じ「量的緩和政策」を実施していますので基本的にはユーロ安となる金融政策です。ECBはユーロ安となることを望んでいるのです。しかし、6月に入ってギリシャ支援問題が暗礁に乗り上げると、ユーロは逆に上昇していきました。ギリシャリスクが高まっているのにユーロが下がらず、むしろ上昇していたのは「これまでECB政策に則ってポジションを構築してきたユーロ売りポジションをリスクに備えて買い戻していた」ためと考えられます。売りが膨大に膨らみ、それ以上売る人がいなくなれば、ポジションを手仕舞って利益を確保しようとする動きが広がります。ショートポジションが買い戻されるだけで、新規で買いを入れる人がいなくても、相場は上昇してしまうのです。逆に、皆が買いを膨らませてきた相場では、高値で誰も買う人がいなくなれば、その後利食いが起こるだけで相場は崩れてしまいます。特に6月は欧米企業の中間決算期であるというカレンダー的な特殊要因もあり、ポジションを手仕舞う動きが出やすい月。ユーロの場合、平時の取引ではユーロ売りが主流だったため、リスクを回避しようとすれば、買戻しからのユーロ高となりやすい環境だったということです。

では、ギリシャのデフォルト、そして国民投票の結果を受けて何故ユーロは急落したのでしょうか。リスク回避では「ユーロの買戻し」でユーロ高となるはずです。

今朝発表されたIMM通貨先物ポジションで大口投機家らのポジションを確認してみると6月30日時点でユーロドル相場での大口投機玉はネットで100,035枚の売り越し。売り越し幅は前週と比べ729枚拡大しています。ユーロの売りが最大に膨らんだのが3月31日の226,560枚。現在の倍以上の売りが膨らんでいました。この膨大なユーロの売り玉が4,5,6月と減少しており、特に6月前半のショートポジションの減少幅が大きかったことが伺えます。そして直近の6月23、30日には若干リバウンド、ユーロ売りが再度増加する傾向を見せています。

6月19日にはわずか89,357枚まで減少したことを考えると、ここから見えてくるのは6月前半のユーロの上昇時、投資家らはユーロのショートポジションをすべからく買い戻してしまって、ユーロの売りポジションが大幅になくなってしまった。新たにポジションを取るなら、ECB政策に沿ってユーロを再度売る、という行動にでたのではないか、ということ。6月末時点でもなお、ユーロショートが膨大に偏っていたならば、ギリシャショックでおそらくユーロは急伸したと思われますが、6月中に売りポジションは大方整理されたために、買戻しからの上昇が起こらなかったものと考えられます。

また基本的には、ギリシャのデフォルト、そしてEU離脱は「ユーロの信認」にかかわるユーロ売り材料です。ユーロの売りポジションを整理してしまった投機家らは、ユーロ信認に関わるリスクが生じたことで、「素直にユーロを売った」ものと考えられます。

為替取引における基本の考え方は、各国の金融政策と需給です。利上げ時期を模索する米国ドルが金利先高観から買われ、量的緩和に踏み出したばかりのユーロは売られるのが、平時の取引のトレンドとなりますが、あまりにもそのトレードがブームとなり、ポジションがユーロ売りに偏ってしまうと、短期的にポジション調整の動きが入ることから、値動きが逆流することで、金融政策とは逆に動くことがあることを念頭に、今後、ギリシャ、EU信認の問題がユーロ相場にどのような影響を及ぼすかを判断していくことが肝要です。

コラム執筆:大橋ひろこ

フリーアナウンサー。マーケット関連、特にデリバティブ関連に造詣が深い。コモディティやFXなどの経済番組のレギュラーを務める傍ら、自身のトレード記録もメディアを通じて赤裸々に公開中。

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