マネックスメール編集部企画の特集コラムをお届けします。
所得が増加し、食生活により多くのお金を使えるようになれば、副食となる肉、魚、野菜、さらには乳製品や果物の消費が増えることは世界共通です。
中国でも、長きに渡り主食の米(主に南部)、あるいは小麦(主に北部)に加え、豚肉、鶏肉と野菜が主な食材として消費されてきましたが、近年、富裕層から中間層の間で西洋料理の人気が高まり、牛肉、乳製品や果物の消費が急増しています。
牛肉は、中国国内でも生産されていますが、消費量の増加には全く追い付けず、このため近年オーストラリアなど海外から盛んに輸入しています。中国の輸入急増で、特に日本の牛丼チェーンで使用される部位の買付が困難になり、将来牛丼の価格が上昇することが懸念されています。
果物の消費も急増しています。中国国内で多く生産されるものとしては、スイカ、メロン、苺などがありますが、北京の大手スーパーマーケットの店頭には珍しいトロピカルフルーツを含め、日本と同程度あるいはそれ以上に多種多様な商品が並んでいます。
日本と同様、最も輸入量の多い果物はバナナですが、昨年2014年の輸入量は前年2013年から119%増となり、生産者や輸出業者は拡大する中国市場に大いに注目しているそうです。
バナナに次ぐものとしては、主にベトナムから輸入されるドラゴンフルーツが第二位、米国、チリ、ペルーなどから輸入されるぶどうが第三位となっていますが、量的にはまだ少ないものの、増加傾向が顕著なものがアボカドです。
昨年の輸入量は前年から376%増の5,169トンとなり、今年も1~3月の3ヶ月間で既に2,600トンが輸入されています。このペースで行けば今年も前年比倍増となり、1万トンの大台に乗りそうです。日本の輸入量は6万トンを超えていますので、市場規模としてはまだまだですが、成長余地が大ということで、主要生産国のメキシコのほか、ニュージーランド、ペルーなどが売り込みに注力しています。
以前は、海外旅行の機会に、あるいはホテルのレストランなどでアボカドの味に触れ、ファンになる人が多かったそうですが、近年輸入業者が地方都市のスーパーマーケットなどにも販路を拡大したことで、より多くの人がアボカドの新しい味と食感の虜になっているそうです。
新聞記事には、アボカド好きの二十代の女性が、「わさび醤油をつけて食べるのが最高。生のウニを食べているような味」と絶賛するコメントが掲載されていました。
寿司のカリフォルニア巻きの具材にもなっている通り、アボカドは醤油との相性が良いので、わさび醤油とは「さすが」と言うべきところです。
ちなみに、脂肪分が多いため、「森のバター」とも呼ばれるアボカドですが、中国語では「牛油果」と呼ばれます。まさにその通りと言う名前です。
5月13日付の本コラム第113回で、中国が大豆の輸入を増やしているとご報告申し上げましたが、牛肉、乳製品や果物でも、今後中国の輸入が増え、日本に影響をもたらすことが懸念されます。現在の豊かな食卓が、将来に渡り当然には保証されていないことを認識し、国レベルで対策を講じていく必要があります。
果物の輸入と消費が拡大するというのも、かつて日本が辿った道と全く同じですが、人口が桁違いですので、諸外国にもたらす影響も大きいものがあります。
またまた中国の勢いを感じさせられる話題でした。
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コラム執筆:長野雅彦 マネックス証券株式会社 北京駐在員事務所長
マネックス証券入社後、引受審査、コンプライアンスなどを担当。2012年9月より北京駐在員事務所勤務。日本証券アナリスト協会検定会員 米国CFA協会認定証券アナリスト
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