第122回 中国の離婚事情 【北京駐在員事務所から】

マネックスメール編集部企画の特集コラムをお届けします。

第122回 中国の離婚事情 【北京駐在員事務所から】

中国政府の民政部(日本の厚生労働省に相当します)が公表した、昨年2014年の中国の離婚件数は364万件でした。
人口との単純な比較がどの程度意味を有するかは、いささか疑問ではありますが、日本での昨年の件数は222,000件ですので、中国は人口で日本の10.7倍、離婚件数では同16.4倍です。ちょっと意外にも思えますが、日本以上に離婚が多い結果となっています。離婚件数が多いことの理由には、中国特有の様々な事情があり、この点については後述します。

離婚件数は2004年の166万件から10年連続で増加し、10年間で2.2倍になりました。
要因としては、日本と同様に、女性の社会進出や、伝統的な結婚観あるいは「家」に対する考え方の崩壊が挙げられますが、近年、ソーシャルメディアの普及が、離婚の増加につながっていると指摘されています。

上海の法律事務所で離婚案件を担当する弁護士は、10件中9件もがソーシャルメディアの利用をきっかけとして争いになり、離婚に発展しているとし、チャットなどに長時間没頭し、会話の乏しい夫婦は別離のリスクが高まると指摘しています。
同弁護士は、「技術の発展が離婚の増加につながるとは考えもしなかったが、2011年にQQ(中国で広く利用されているインスタントメッセンジャーサービス)がきっかけで離婚に発展したケースを担当して以来、同様の案件が増えている」と述べています。
中国では、都市部の住民の多くがスマホを片時も手放さない生活を送っているとされており、ソーシャルメディアの過剰な利用を巡る家庭内でのトラブル、さらには離婚も今後さらに増加することが予想されます。

もっとも、ソーシャルメディアの影響は、数多くある離婚増加の要因のうちの一つにすぎないとする意見もあります。
中国特有の事情である都市部での不動産(住宅)所有規制と、戸籍制度の問題も離婚、特に「形式的な(偽の)離婚」を誘発しているとされています。
中国では、不動産価格が高騰すると、各地方政府が独自の規制を行いますが、その中には「一家族で所有できる住宅の件数を1軒あるいは2軒までとする」といったものがあります。
そこで、住宅の追加取得を望む夫婦が、一旦離婚し、住宅を購入した後に再度結婚するようなケースがあるそうです。
また、例えば北京市の戸籍を持たない夫婦が、子女を北京市内の学校に進学させようとする場合に、一旦離婚し、妻が北京市内の男性に報酬を支払い、結婚して北京市の戸籍を取得し、子供を望みの学校に進学させた後に離婚、そして元の夫と再婚するといった事例もあります。子供のためとはいえ、「そこまでするか?」という印象もありますが、住宅購入や子女の進学の問題を解決するための方策が偽装離婚というのは、それらが中国の人々にとって極めて重要なものであることを示しています。

住宅購入や子女の進学等のための離婚は別にしても、ソーシャルメディアの普及に加え、大都市では通勤に長時間を要するなどの事情により、夫婦間のコミュニケーションが減少し、すれ違いが生じやすいとも指摘されています。
このあたりは中国に限らず、日本など諸外国でも同様ですが、一組でも多くの夫婦が、様々な障害があってもそれらを克服し、永く添い遂げることができるよう望みたいと思います。

中国の離婚件数増加のニュースから、日本と重なる部分、また中国特有の事情が垣間見えたように思えます。


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コラム執筆:長野雅彦 マネックス証券株式会社 北京駐在員事務所長

マネックス証券入社後、引受審査、コンプライアンスなどを担当。2012年9月より北京駐在員事務所勤務。日本証券アナリスト協会検定会員 米国CFA協会認定証券アナリスト

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