マネックスメール編集部企画の特集コラムをお届けします。
先々週の6日(月)に、上海の自由貿易試験区内にコーヒー豆の先物取引市場が開設されました。
2017年には840億元(約1.7兆円)、また翌年2018年には1,200億元(約2.4兆円)の取引を見込んでおり、ニューヨーク、ロンドンに次ぎ、アジアで最大のコーヒー取引市場になることを目指しています。
市場は、上海自由貿易試験区管理委員会の承認を得て、業界団体である上海コーヒー協会により運営されます。自由貿易試験区であることにより、物流や金融、租税に関する様々な規制が緩和されていることのメリットに加え、19世紀、アヘン戦争後の開港から租界の形成を経て、20世紀前半には「東洋のパリ」とまで呼ばれた発展の経緯から、上海が中国最大のコーヒー消費地であることもあり、今回上海に市場が開設されたことは、関係者から高い評価を得ています。
先物取引市場の開設を契機に、中国のコーヒー需要が一段と拡大し、関連業界が発展することへの期待の声も多く聞かれています。
上海では以前より愛飲されていたコーヒーですが、中国全土を見ますと、飲料と言えば圧倒的にお茶で、コーヒーは1999年、日本に遅れること3年で北京に初出店したスターバックスコーヒーが広めたと言われています。
現在でも、中高年の人々の多くは主にお茶を飲み、外出時には自宅で入れた茶を保温瓶に入れて携行することが一般的です。日本を訪れた中国人旅行客が、電化製品や化粧品などとともに、携帯サイズのステンレスボトルを大量に購入する姿をテレビなどでご覧になられた方も多いことと思います。
一方、二十代、三十代の若年層や、北京など都市部のホワイトカラー層にはコーヒーが急速に普及しており、スターバックスのメンバーズカードがステータスになっているとも言われています。
北京でも、スターバックスはオフィスビルや商業施設などに数多く出店しており、さらに香港系や韓国系のチェーンも数多く進出し、ちょっとしたカフェ戦争が繰り広げられています。
コーヒー好きの人々にとっては大歓迎というところでしょう。
近年、中国のコーヒー消費量は安定成長を続けており、年率15%程度で伸びているそうです。スターバックスを初めとするコーヒーチェーンや、関連の業界にとっては極めて魅力的な市場と言えます。
市場を運営する上海コーヒー協会は、市場での業者間取引以外にも、世界各地から調達したコーヒー豆の小売施設や、バリスタ(カフェやバーでコーヒーを提供する専門職)の教育訓練を行う施設等を開設し、コーヒー消費の拡大のための一大拠点を築くことを計画しています。
また、取引は当面中南米、東南アジアやアフリカなど、世界の主要生産国から輸入したコーヒー豆を中国国内に販売する方向となりますが、将来的には国内(主に南部の雲南省)で生産される豆も取り扱い、また販路も日本、韓国など近隣諸国に広げることを目指しています。
コーヒーを日常的に楽しむ人々が今後増加し、また生活水準の向上で地方都市から農村部にもコーヒーが普及すれば、中国が世界の一大消費地となり、それこそ世界のコーヒー豆相場を動かす存在になるかもしれません。
日本でも、マクドナルドの上陸でハンバーガーが広く普及するなど、時代とともに食生活、食文化が変化しました。また、それらの変化の多くは若者が主導して起こっています。
長い伝統を有する中国の茶文化の将来がちょっと心配になりますが、コーヒーと共存し、ともに発展を続けていくよう、願いたいと思います。
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コラム執筆:長野雅彦 マネックス証券株式会社 北京駐在員事務所長
マネックス証券入社後、引受審査、コンプライアンスなどを担当。2012年9月より北京駐在員事務所勤務。日本証券アナリスト協会検定会員 米国CFA協会認定証券アナリスト
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