マネックスメール編集部企画の特集コラムをお届けします。
中国のIT、eコマース大手のアリババグループは、ネット通販サイト淘宝網(Taobao)や天猫(T-mall)などを運営し、加えてオンライン決済サービスを提供するなど電子商取引の分野で一大勢力を築いています。
淘宝網はネットオークションサイト「拍売会」も運営しており、宝飾品、美術工芸品、腕時計、中古車などが出品されているのですが、最近こちらで海外のリゾートマンションなど不動産物件が取引されるようになり、注目を集めているそうです。
拍売会のサイトをのぞくと、ロサンゼルスを中心とした米国の住宅、マンションなどが出品されており、加えて近日中にポルトガル最南端の観光地アルガルヴェ地方にある高級住宅及びマンション1,500軒あまりが出品される予定です。床面積は231㎡から363㎡と大型の物件揃いで、落札想定価格は90万ユーロ(約1億2,200万円)から150万ユーロ(約2億円)と予想されています。
拍売会の責任者は、今回のポルトガルの不動産物件出品について、中国のネットオークション市場の急成長ぶりを象徴するものと述べ、今後も世界各国から高品質の商品を出品するよう努めるとしています。
同責任者は、海外不動産はネットオークション参加者の注目度が高いとも述べています。
日本のネットオークションサイトが、時に不用品の処分や、コアな趣味のグッズなどの取引に利用されているのとはかなり様相が違います。
中国では、ネットオークションの歴史はまだ浅いものの、取引は急成長中で、今年中には米国を抜いて国別で最大のネットオークション市場になると見られています。
拍売会の責任者は、中国ネットオークション市場の規模について、2012年時点での1億元(約20億円)から、今年は1,000億元(約2兆円)に伸びると見ています。3年間で1,000倍の急拡大です。
拍売会では、昨年12月から海外不動産の取扱を初め、これまでに南太平洋のフィジーの島、フランスやイタリアの古城などを出品し、それらの6割ほどが落札されたそうです。
責任者は、今回出品されるポルトガルの物件が、オークション参加者の人気をどの程度集めるかは未知数としています。
しかしながら、海外移民のコンサルティングサービスを手掛ける専門家は、ポルトガルが一定額以上の不動産を購入した外国人に市民権を与える政策(投資移民政策)を取っていることから、今回出品される物件の販売について、有望と見ています。
現在のポルトガルの制度では、50万ユーロ(約6,800万円)以上の不動産を購入した外国人に対し市民権が与えられ、さらに築30年以上の物件の場合には、金額条件が30万ユーロ(約4,100万円)以上に引き下げられます。
2012年10月から先月までに、この制度により2,420名の外国人に永住権が与えられ、うち1,947名(80.4%)が中国人の投資家であったそうです。
それにしても、直接物件を確認することもせずに、ネットオークションで海外の不動産を購入するという行動にはいささか驚かされます。もっとも、中国では株式市場も、また不動産市場も不安定で、資産運用にはなかなか適さない状況にありますので、上記のような永住権、市民権の取得とあわせ、投資、資産運用の考え方が日本とは大きく異なっているのでしょう。
と考えているうちに、20年以上前になりますが、日経新聞に中国上海や東南アジアのマンションの分譲の広告が踊っていたことを思い出しました。
当時は、「一体誰がこんな物件を買うのだろう?」と不思議に思っていましたが、バブル経済の余韻が残る「金余り」の一方、国内の株式市場、不動産市場は下落に転じていましたので、有望な投資先と見られていたのでしょう。
恐らく、投資家の多くは、その後の円高もあり、多大な損失を被ったものと思われます。
拍売会のサイトには、まだ日本の不動産物件の出品は無いようですが、いずれはメニューに登場するのでしょうか?
既に、東京などの一部物件は、中国人投資家の購入により価格が上昇しているとも伝えられていますが、価格形成がゆがむことなく、適正な価格での取引が行われるよう、願いたいと思います。
中国の富裕層の羽振りのよさを見せつけられるとともに、投資スタンスの特異性も認識させられた話題でした。
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コラム執筆:長野雅彦 マネックス証券株式会社 北京駐在員事務所長
マネックス証券入社後、引受審査、コンプライアンスなどを担当。2012年9月より北京駐在員事務所勤務。日本証券アナリスト協会検定会員 米国CFA協会認定証券アナリスト
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