第56回 「アウトドア」を読み解く 【市場のテーマを再訪する。アナリストが読み解くテーマの本質】

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第56回 「アウトドア」を読み解く 【市場のテーマを再訪する。アナリストが読み解くテーマの本質】

みなさん、こんにちは。『今どき、株で儲けるヤツは、「業種別投資法」を使っている』著者の長谷部翔太郎です。中国株の先行き不透明感が台頭してきました。この影響は世界景気や世界の株式市場に広がりつつあるようです。中国、特に上海株の急騰は予てからバブル懸念の燻るものでしたが、官製相場の脆さも加わり、ここにきて一気に調整色を増しています。日本もこの状況を決して対岸の火事として軽視できるものではないでしょう。加えて、国内でも安保関連法案に絡めて内閣不支持率が支持率を上回る世論調査が出始めるなど、少し前までは盤石に見えた政権運営にも変化の兆しが出てきました。経験的に、政権に安定性が欠けてくると、景気への悪影響が無視できなくなってきます。実際、7月以降は個人的所感ながら、どうも景気に勢いが感じられなくなってきました。これらが杞憂であればよいのですが、今年後半は波乱の展開となるリスクも俄かに増してきたように思えます。読者の皆様には、相場の先行きを少し慎重に構えておくというシナリオを気に留めておいていただければ、と思っています。

さて、今回は引き続き夏休みを軸に、「アウトドア」をテーマに採り上げたいと思います。一般にアウトドアとは野外活動一般を指しますが、ここではもう少し絞り込んで登山やキャンプ、ハイキング、スキーに海水浴、釣りや森林浴などのアウトドアレジャー(アウトドアスポーツ)を想定して議論を進めていくこととしましょう。かつて1980年代後半から1990年代前半にかけて、日本では強烈なアウトドアブームがありました。世はまさにバブル時代の真只中で、それまで決して一般的でなかったスキーやダイビング、オートキャンプに多くの若者が飛びついたのです(一世を風靡した映画もありました)。リゾートマンション建設やスキー場開発も急増しました。しかし、バブルの崩壊とともにブームは沈静化。多くは乱開発という名の負の遺産へと変わり、長期低迷の時代を迎えました。それが近年、生活スタイルの変化を経て、こういったアウトドア市場はようやく拡大傾向が鮮明となってきているのです。

読者の皆様の中でも、仲間内でバーベキューを楽しんだり、手軽なキャンプ用品などを利用されたことがある方は少なくないのではないでしょうか。仲間との付き合い方の変化や昔とは格段に利便性の改善されたアウトドア用品の開発、さらには自然派と称される生き方の定着などが、アウトドア市場を徐々に広げ始めているのだと想像します。かつてのブームの水準にはまだまだほど遠いのですが、国内のアウトドア小売市場は過去5年で約1.3倍にまで拡大しています。バブル期とは違い、今度は地に足のついたブームとなってきているのかもしれません。

では、この変化をどう株式投資にどう繋げることができるでしょうか。シンプルに考えれば、「アウトドア関連企業に注目!」となるのでしょう。しかし、それでは直球過ぎてあまり面白くありません。アウトドア関連銘柄リストは他の媒体にお願いするとして、ここではもう少し先を睨んでみたいと思います。そもそもアウトドアが再燃してきたことの背景には、多様な価値観や生き方が尊重される時代となったことに加え、余暇を大切にする生活スタイルが定着してきたことがあるように感じます。かつて「24時間闘えますか?」まで問われた猛烈サラリーマン像は影を潜め、ワークライフバランスがより重視されるようになったのはその好例でしょう。少子高齢化で将来の労働力不足が懸念される日本ですが、この傾向が逆流することはまずないのでは、と予想します。

つまり、アウトドアブームが今後も継続するかどうかのカギは、余暇時間の確保、つまりは業務時間の有効活用が握っているように思います。実際、現在はモバイルPCを使えば、アウトドア先でも仕事のキャッチアップ処理程度は十分可能な状況にあります。これらがアウトドアの復活に貢献した可能性は小さくないと思えます。今後、さらに利便性を増すこととなれば、アウトドアに限らず、その他多くの余暇アクティビティにおいても、市場の拡大・充実が波及していくのではないでしょうか。アウトドアが回復してきたということは、その他の「こだわり」を持った余暇の過ごし方もまた広がってくる、ということと同義なはずです。こういった余暇関連市場が生活スタイルの変化に起因するものである限り、息の長いテーマになってくる可能性は高い、と考えています。

コラム執筆:長谷部 翔太郎

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