マネックスメール編集部企画の特集コラムをお届けします。
連日の猛暑で、冷たいビールやスイカ、あるいは氷菓などが最高に美味しい時期を迎えています。
北京では、この夏は気温が少し低めで、最高気温が30℃に届くかどうかという日が続いていますが、それでも大陸性の乾燥した気候の下、冷たいビールと熱々の中華料理の組合せは幸せを感じさせてくれるものです。
「真夏に飲む冷たいビールを嫌いという人はいないだろう」くらいに思ってしまうところですが、伝統的に、中国人の多くは、中国医学あるいは漢方の教えに従い、身体を冷やすことで代謝を低下させると、抵抗力が弱まり病気につながると考えています。
このため、真夏でも、冷たい食物や飲料は摂らないという人も多く、以下のような日本とはかなり異なる習慣も見られます。
【1】 レストランのビールやコーラなどは、冷やしたものと常温のものが用意されている
(ビールを注文する時には、「良く冷えたものを」と念押しする必要があります。)
【2】 ワインの品揃えは圧倒的に赤が多い
(中国人が赤色を好むことも一つの理由ではあります。)
【3】 「生野菜は食べない」という人も多い
(炒めもの料理などにもキュウリ、レタスやトマトが用いられます。)
【4】 日本の冷麦、素麺や冷やし中華のような、冷水で締めた麺料理はない(「涼麺」はありますが、茹でたものを水道水で洗うか、風を当てて冷ましたものになります。)
【5】 外出時には常温あるいは熱いお茶を携行する人が多い
(日本のステンレス製魔法瓶が大人気です。)
一方、子供や若者を中心に、諸外国と同様に冷たい飲料やデザートを日常的に楽しむ人が増えており、近年アイスクリームの市場が急成長しているそうです。
英国の市場調査会社Mintel Groupが昨年公表したレポートによると、中国のアイスクリーム製品の売上高は、2010年に500億元(約1兆円)でしたが、今年2015年には833億元(約1.7兆円)に、また2020年には1,254億元(約2.5兆円)に伸びると予想されています。
日本の市場規模がここ数年4,000億円強で推移していますので、規模、成長率ともに圧倒的な存在となっています。
Mintel社によると、消費量の世界比較でも、中国は昨年2014年に59億リットルを消費し、米国の58億リットルを抜いて世界一のアイスクリーム消費大国となりました。
今年の消費量は63億リットルに達すると見られています。東京ドーム5個分になります。
市場の主役は中国の乳業メーカー等になりますが、成長を見越した海外ブランドの進出も盛んです。北京では、スーパーマーケットにハーゲンダッツのカップアイスが多数並んでいるほか、サーティーワン、デイリークイーン、さらにはコールドストーンクリーマリーなどのチェーン店も数多く見られます。
欧州を旅行する人が増え、本場の味が知られるようになったことから、繁華街にはイタリアンジェラートや粘り気のあるトルコアイスを売りにする店も現れています。
また、「かき氷」とされているようですが、4月に東京原宿で開店し、人気を博している台湾の"ICE MONSTER"も北京に2店舗を擁し、連日行列となっているそうです。
冬の寒さが厳しい北京ですので、「今だけ」にならないかと要らぬ心配をしてしまいますが、ファストフードやイタリアンの人気とあわせ、食の欧米化は止まらないようです。
このあたりも、数十年前の日本を追いかけていることが見てとれます。
アイスクリームの次は、今はまだ垢抜けきれずにいるケーキ等のスイーツでしょうか?
北京では、一部に日本やヨーロッパのパティシエが経営するお店があり、良質のスイーツがいただけますが、「べた甘い」品も多く、当たり外れが大きいです。
それでも、海外旅行で本物の味を知った人々が増えることで、国内の商品も今後ますます洗練されていくことでしょう。
様々な分野で、日本で生じた変化を後追いしている中国ですが、真似て欲しくないのは生活習慣病の増加です。子供の肥満が増加しているとの調査結果もあるそうで、今後が心配になります。
食生活の変化からも、中国の発展と、先進諸国への接近ぶりが見えることとなりました。
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コラム執筆:長野雅彦 マネックス証券株式会社 北京駐在員事務所長
マネックス証券入社後、引受審査、コンプライアンスなどを担当。2012年9月より北京駐在員事務所勤務。日本証券アナリスト協会検定会員 米国CFA協会認定証券アナリスト
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