第57回 「IoT(Internet of Things)」を読み解く 【市場のテーマを再訪する。アナリストが読み解くテーマの本質】

マネックスメール編集部企画の特集コラムをお届けします。

第57回 「IoT(Internet of Things)」を読み解く 【市場のテーマを再訪する。アナリストが読み解くテーマの本質】

みなさん、こんにちは。『今どき、株で儲けるヤツは、「業種別投資法」を使っている』著者の長谷部翔太郎です。日本株は中国景気の先行き不安を織り込み始めた展開のようになってきました。筆者も中国への不安はこのコラムでも何度か触れてきましたが、いよいよそのリスクは現実性を増してきたように感じています。また、前回のコラムで勢いが感じられないと表現した国内景気も、引き続き停滞感が拭えていません。引き続き、今年後半は波乱の展開となるリスクは依然として燻っているように思えます。灼熱の状況が、気が付くと夜風にはふっと秋の匂いが感じられるようになりました。読者のみなさんも、気温の変化の中、体調に気をつけて相場に臨んでいきましょう!

さて、今回は「IoT(Internet of Things)」をテーマに採り上げたいと思います。IoTは数年前から広がり始めた概念で、日本では「モノのインターネット」とも表現されるケースも多々あります。インターネットは本来PCやモバイル機器のネットワークであり、それら個々が「端末」としてネットと繋がっている、というのが一般的な認識でしょう。つまり、ネットはPCやモバイルといったコンピュータの世界のものであり、人間がデータを入力することで、巨大かつ有用なネットワークが形成されてきたのだと言えます(厳密には異なりますが、ここでは大きな流れに注目するため、やや大まかな説明となっていることをご了承ください)。IoTは、これをモノの世界に広げた概念です。モノとしては、これまでネットとは無縁であった家電製品、機械・機器、車両などがその対象となります。これらは既にコンピュータが内蔵されているケースが少なくないのですが、あくまで自己完結型の使用が主体となっていました。これをインターネットに繋ぎ、人手を介さずに多くの情報をネット空間に収集するのです。

こういった数値化されたデータは、対象となるモノによっては、いわゆるビッグデータとなり得ます。その分析は様々な分野で応用することが可能となり、新たなサービスや新商品の開発、顧客への利便性向上などへの貢献が期待できることに繋がるのです。自動販売機における売れ筋のリアルタイムの捕捉といった代表例はビッグデータを知るうえでよく挙げられますが、交通状況や不在時の防犯などといった状況にも、こういったIoTは貢献できるはずです。これらは既に一部では活用されつつありますが、IoTが十分に浸透しているとはまだまだ言い難いのが現実です。その分、将来的には潜在余力が大きな市場である、と言えるでしょう。

では、これらはどう株式投資に繋がるでしょうか。まず考えつくのは、情報をインターネットに送るための電子部品でしょう。これまで必要なかった部品が装備されることになるため、その分は需要が純増することになるはずだから、です。また、ネットへの伝送に際し、インフラ関連の充足も必要となってくると想像します。しかし、このコラムではもう少し突っ込んで考えてみたいと思います。本当の意味でIoTが浸透・成立するためには何が必要なのか、をです。

そもそもIoTが成立するには、どこかからか電力を調達する必要があるはずです。頻繁な充電が当然のモバイル機器や電源と直接繋がっているPCや家電製品はその心配もありませんが、そうではない製品においてはどこからか電力の供給を受けなければ、インターネットへ接続することができません。そのためには消費電力を徹底的に抑制したうえで、長寿命・省スペースの電池の開発が不可欠なはずと考えます。読者のみなさんもIoT製品を購入したとして、頻繁に充電、もしくは定期的に電池を入れ替えないといけないとなると、面倒にはなりませんか?ビッグデータの収集は、最終的には消費者・利用者のメリットに繋がるのでしょうが、一次的には企業のメリットにしかなりません。つまり、IoTの広範囲への浸透は消費者の負担を最小限に抑制する形でなければ、難しいのではないか、と想像します(今現在、IoTがなくとも生活できている以上、IoTが不可欠であるとの意識は消費者にはまだないと考えるためです)。そのためにも、電力供給の視点は実は非常に重要なのではないか、と考えます。

コラム執筆:長谷部 翔太郎

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