マネックスメール編集部企画の特集コラムをお届けします。
週明け24日月曜NY時間を迎えるころ、ドル/円相場が116円台まで急落。日経平均も先物価格で17,000円台にまで急落し、ダウ平均は一時1,000ドルを超える下落となるなどマーケットはパニック売りの様相を呈しましたが、ダウ平均が急速に下げ幅を縮小し長い下ひげを付けて取引を終えたために、足元ではセリングクライマックスとの見方も出来ないことはないのですが、果たして市場は落ち着きを取り戻したとみていいのでしょうか。この先、売り目線でマーケットを見るのか、調整終了とみて買い目線でマーケットを見るかで、トレードの成果は全く変わってくるものです。
ドル/円相場下落の要因を整理しておきます。
(1)中国景気減速と人民元切り下げによる影響
8月11日から3日続けて人民元が切り下げられました。切り下げ幅は決して大きくはないのですが、あらゆるところへその影響が波及しています。中国との貿易面で競合する国は人民元安を歓迎できません。その後、ベトナムが19日、通貨ドンの対米ドルの中間レートを1%引き下げ、許容変動幅を3%に拡大する通貨切り下げを実施した他、20日にはカザフスタンが変動相場に移行することを発表、実質通貨の切り下げに動きました。カザフスタンは原油輸出国ですが中国が原油輸出のお得意様なのです。中国景気の減速で中国の原油需要が弱まり、カザフの貿易収支は悪化、通貨切り下げに追い込まれたとみられます。アジアや新興国通貨の下落が止まらない状況が続けば、米国の利上げにも影響が出るのではないかという懸念から、米金利が低下(そうでなくても元切り下げから株式市場も大きな下落を強いられており、リスクを避けるために債券市場に資金が流入し、債券利回りは低下してしまっています)米ドルの金利が上がらず、ドル/円相場でもドル買い要因がなくなることで下落圧力が増すというループとなってきています。
(2)構造的な円安要因であった貿易赤字の縮小
日本の貿易赤字は2014年にはなんと総額で12兆7千億円程度ありました。2011年以降原発が停止していることで海外から化石燃料を買わなくてはエネルギーをまかなえなくなったことに起因していますが、この赤字が猛烈に縮小しています。そもそものエネルギー価格が暴落していることが日本の貿易赤字縮小につながっています。原油価格は2014年夏場までは100ドルを超える水準で推移していたのですが、現在は30ドル台まで下落しています。このため日本の貿易赤字は劇的に縮小しており、現時点で今年は8400億円ぐらいの赤字で収まりそうだ、という試算があるようです。昨年2014年と比較して12兆円もの赤字の縮小、、ということは、2014年は12兆円規模のドル買い円売りが存在していたものが、今年はなくなってしまったということ。これは円高要因に他なりません。仮に原油安がさらに進み長期化すれば貿易黒字となる可能性もあり、黒字という報道があればドル/円相場はそれをきっかけに急落するリスクもあると思っています。
その他にも、GPIFなど公的マネーによる外貨買いがそろそろ終わるのではないか、という懸念や、米国株式相場が不安定であることなどいくつもの要因が絡み合ってのドル/円下落です。上昇トレンドが長期化した分、調整には長い日柄を要するか、大きな値幅を持っての下落となるリスクを覚悟しておきたい局面に入っています。
◇どこまで下落する可能性があるのか
日銀がバズーカ2と称される追加の量的緩和策を発表した2014年10月31日からドル/円相場は新たな上昇波動を形成しました。バズーカ2が発表される前の8月くらいまで、ドル/円相場は101円から102円台で膠着していました。この水準は日銀の最初の量的緩和策によって上昇し2013年5月に向けて上昇し天井を付けたレベルであり、以降、値動きは紆余曲折があったものの、このレベルを超えられずに膠着していました。下値はGPIFなどの公的マネーが支えていたと指摘されています。100円から下のレベルにはこうした公的マネーによる円売りドル買いが根雪のように積まれたとみられることから、今後どのような波乱があってもこのレベルから下への下落は考えにくいと思いますので起点を102円とします。102円から125円の高値をフィボナッチリトレースメントすると38.2%押しのレベルは116円台ということで、昨日の下落で最初のターゲットには到達したものと思われます。足元では反発基調に入り、今回の下落に対しての38.2%戻しの119.70円近辺まで戻るものと思います。そのまま上昇が続き120円の大台を回復できれば大きめの調整だったと考えて、押し目買いスタンスで上昇に乗ればいいと思いますが、120円を回復できずに再下落し、再び116円を割り込むような下落に見舞われた場合は、102円から125円の上昇に対しての50%押しである113.20円近辺がターゲットとなると覚えておくといいでしょう。
コラム執筆:大橋ひろこ
フリーアナウンサー。マーケット関連、特にデリバティブ関連に造詣が深い。コモディティやFXなどの経済番組のレギュラーを務める傍ら、自身のトレード記録もメディアを通じて赤裸々に公開中。
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