第128回 100元紙幣のモデルチェンジ 【北京駐在員事務所から】

マネックスメール編集部企画の特集コラムをお届けします。

第128回 100元紙幣のモデルチェンジ 【北京駐在員事務所から】

中国で流通している通貨は、紙幣が1元、5元、10元、20元、50元、100元、1角(0.1元)及び5角(0.5元)の8種類、硬貨が1元、5角、1角、5分(0.5角)、2分(0.2角)及び1分(0.1角)の6種類です。
古い紙幣には、2元及び2角のものがあるそうですが、現在ではほとんど流通しておらず、私も目に(手に)したことはありません。また、「分」は価値が極めて小さいため、現在はほとんど使われていません。

最高額の紙幣が100元(約1,850円)ですので、高額の買物などの際には「札束」が必要となります。このような利便性の問題と、後述します偽札の横行から、中国では日本でもおなじみになりつつありますデビットカード「銀聯」が広く普及しており、現金は最低限しか持たないという人も多いです。

高額となる50元や100元の紙幣では、偽札が広く流通しており、買物の際に100元札を出すと、店員が手触りや透かしを確かめることが一般的です。
以前、友人と会食をし、支払のため割り勘で会費を集めたところ、明らかに手触りがおかしな50元札があり、店員に受取を拒否されたことがありました。

また、日本では考えられないことですが、銀行のATMで出金する際に、偽札が出てくることがあります。
私は経験が無いのですが、友人は偽札をつかまされ憤慨していました。
これは友人が日本のATMメーカーの方に聞いた話の又聞きなのですが、中国のATMの中には、入金時のみ紙幣の真偽のチェックが行われ、出金時にはノーチェックのものがあるそうで、このためATMに紙幣を充填する銀行あるいは現金輸送会社の職員が偽札にすり替えてしまうことがあるそうです。
モラルハザードもここまでくると「何だかなあ」という感じです。

1元から100元の紙幣には、中華人民共和国の初代国家主席である毛沢東の肖像が描かれており、100元紙幣のデザインは、自動車のモデルチェンジのように、僅かずつではありますが定期的に変更されています。
現在流通している100元札のほとんどは、1999年及び2005年デザインのものになっています。
中国の中央銀行(発券銀行)である中国人民銀行は、このほど偽札対策を強化した新100元札のデザインを公表しました。11月12日より発行される予定です。
新デザインでは、ホログラムが多用され、見る角度により色が異なる個所が増えます。日本の500円硬貨と同一の技術が使われているそうです。
その他にも、透かしのデザインの変更等、偽造防止のための様々な技術が取り入れられています。

前回、デザインの変更が行われた2005年以降、中国では自動販売機やATMの普及が急速に進み、紙幣の真偽の判定が必要となる機会が増えています。
また、紙幣の偽造も急増し、特に警戒される高額紙幣だけでなく、10元(約185円)や20元(約390円)等の小額紙幣についても、偽札が出回っているそうです。
中国社会のモラルの崩壊ぶりがうかがえるとともに、紙幣が信用できないというある種の「怖さ」も感じさせられてしまいます。

偽札の流通は、通貨価値を低下させ国家を転覆させることにもなりかねない重大問題です。各国が対策に躍起となる中、世界第二位の経済大国で紙幣の偽造や偽札の流通が日常的なものとなっていることに、いささか驚かされます。
2015年モデルの100元札が、人民元の信用を高めるものとなるよう、願いたいと思います。

株式市場の乱高下や、世界を驚かせた人民元の切り下げを含め、中国経済の変調を示唆する兆候あるいはデータが目立ちますが、国家の安定のためにも、経済及び通貨が安定を維持することが求められます。政府がどのような施策を打ち出していくのか、ますます目が離せなくなりつつあります。

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コラム執筆:長野雅彦 マネックス証券株式会社 北京駐在員事務所長

マネックス証券入社後、引受審査、コンプライアンスなどを担当。2012年9月より北京駐在員事務所勤務。日本証券アナリスト協会検定会員 米国CFA協会認定証券アナリスト

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