第174回 ドル円上昇は続くのか?!9月半ばを警戒 【大橋ひろこのなるほど!わかる!初めてのFX】

マネックスメール編集部企画の特集コラムをお届けします。

第174回 ドル円上昇は続くのか?!9月半ばを警戒 【大橋ひろこのなるほど!わかる!初めてのFX】

9月3日には、中国にて抗日戦勝70周年式典が開催される予定です。上海株の暴落を止めようとあらゆる手段を講じてきた中国当局ですが、中国政府は27日に、株式相場下支えのための介入を再開しました。匿名を条件に関係者が述べているのですが、中国は9月3日に開かれる「抗日戦争勝利記念行事」の軍事パレードを控え市場の安定化を望んでおり、米国債を売ってドルを調達したようです。(ブルーム・バーグから)

8月11日から3日に渡って行われた突然の切り下げ後、人民元が急落。中国からの資本流出が止まらず、逆に人民元暴落を防ぐためにドル売り人民元介入をしなくてはならない状況に追い込まれました。しかしドル売りをするためには、ドルを持っていなくてはなりません。中国の外貨準備は日本を抜いて世界一の規模ですが、介入するためのドルが不足したのでしょうか、介入に必要なドルを保有する米国債売りで調達したというのです。米国債を現金化し、その資金で止まらぬ元安を食い止めているのですね。ソシエテ・ジェネラルは、過去2週間に米国債を含め少なくとも1060億ドル相当の準備資産を売却したと試算しています。

元安を食い止めるための介入と併せて、株の買い支えも27日再開されたことで、上海株は急反発、これにつれて米株や日本株も急反騰となったのですが、週明け31日月曜日は一転、中国政府は大規模な株式購入で株式相場を押し上げる試みを中断すると表明。まだまだ中国に振り回されている金融市場ですが、それでも耐性がついてきたようで先週のような暴落にはつながっていません。どうやら市場は中国リスクよりも、アメリカの利上げ時期がいつになるのかをテーマに動き出しているようです。その意味で今週末4日の米8月の雇用統計の数字は非常に重要ですが、短期的には利上げが意識されて、ドルが強含む可能性が大きいのですが、しかし、中長期的には中国の米国債売りのニュースは、重大なリスクを孕んでいるように思います。

中国人民銀行が外貨準備を取り崩し米国債やMBSを売却することは、米国が量的緩和政策で買い入れてきた資産を中国が売却しているということであり、米国の量的緩和の巻き戻しにつながる、という指摘があります。言い換えればこれは量的引き締めに相当する行為であり、このことが米国の利上げをやりにくくさせる可能性が出てくるのではないか、ということが懸念され始めているようです。

短期的には、米国利上げの思惑でドルが強含むことがあっても、中期的には中国リスクによるドル安の可能性があると思われ、ここからの相場はそう単純ではありません。

それでもドル円相場は、先週24日月曜には116円台にまで急落したのですが、121円台半ばまで戻りを入れています。
ドル円相場の戻りの理由は、24日月曜の急落の日の日足チャートが強烈な下ひげを付けていることが一つ。チャート分析では長い下ひげは底入れのサインです。短期的にはセリングクライマックスを見たと考えていいでしょう。しかし、セリングクライマックスというのは、劇的な下落で総悲観となる相場のクライマックスという意味にすぎません。劇的な暴落は止まったとしても、上昇後の再下落の可能性がない、という意味ではありません。一旦は、セリングクライマックスで買い戻される形になっていますが、下ひげが出たチャートでも再度、そのひげをつぶしに下落するケースは少なくありません。
また、注目されたジャクソンホールで28日、フィッシャーFRB副総裁は「人民元相場や中国情勢を注視する」「9月に利上げを決めるかどうかを判断するには時期尚早」としながらも、「米経済はかなり良好に推移している」としてそれまでの景気動向、特に4日に発表される8月の雇用統計の内容次第では利上げに踏み切る姿勢を示しています。

9月利上げの可能性を排除していないことが確認されたことで、米ドルがしっかりと推移しはじめたのですが、週末の雇用統計の数字如何では9月利上げ観測が萎えてしまう可能性もありますね。ということで、まだまだリスクは点在しています。急落相場にはつきものである「2番底」のリスクが残る相場ではないでしょうか。9月半ばのFOMCに向けては、仮に強気が蔓延していてもリスクポジション(株やドル円などの買いポジション)は、手仕舞っておきたいところです。


コラム執筆:大橋ひろこ

フリーアナウンサー。マーケット関連、特にデリバティブ関連に造詣が深い。コモディティやFXなどの経済番組のレギュラーを務める傍ら、自身のトレード記録もメディアを通じて赤裸々に公開中。

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