第59回 「ディフェンシブ銘柄」を読み解く 【市場のテーマを再訪する。アナリストが読み解くテーマの本質】

マネックスメール編集部企画の特集コラムをお届けします。

第59回 「ディフェンシブ銘柄」を読み解く 【市場のテーマを再訪する。アナリストが読み解くテーマの本質】

みなさん、こんにちは。『今どき、株で儲けるヤツは、「業種別投資法」を使っている』著者の長谷部翔太郎です。8月後半からの世界的な株式市場の波乱はまだまだ止むところなく、予断の許されない状況が続いています。経験的に、こういった荒い動きがしばらく続いた時は、復旧するのにはやや時間がかかるように感じています。加えて、中国景気の動向はまだ悪材料出尽くしとは言い難く、実は国内景気もここにきてやや減速感が漂い始めた感も否めません。個人的には、国内の状況は巷間言われるほど「強い」状況ではなくなってきたリスクも懸念し始めています。場合によっては、2017年4月に予定されている消費税率の再引上げも、その是非が再検討されるシナリオも考えておく必要があるでしょう。米国の利上げ動向も不透明となってくる中、ここは「休むも相場」と割り切ってしまうのも一つかもしれません。

さて、今回採り上げるテーマは、「ディフェンシブ銘柄」です。一般に、景気低迷局面、あるいは景気のピークアウト局面には、安定感の高いとされる「ディフェンシブ銘柄」への注目度が高まってくる傾向があります。今回も、株式市場が世界的に不安定さを増す中、早晩、そういった方向に視点がシフトしてくる可能性は十分あると考えます。現時点での市場の関心はまだ不安定さがいつまで続くのかに集中していますが、その半歩先を睨んでのテーマ設定、というところでしょうか。本コラムでは珍しく短期的(笑)なテーマ設定となりますが、相場の大きなうねりを前にすると、あまり長期的な視点ではやや臨場感に欠けると判断しました。

まずは、ディフェンシブ銘柄の定義を確認しておきましょう。一般には、景気変動の波を受けない(あるいは受け難い)業種の銘柄群という認識になるかと思います。具体的には、食品や医薬品、公益産業(電力・ガスや交通インフラなど)がその代表です。例えば医薬品や食品は、景気が良くなったからといって薬を倍にしたり、食事量が倍になったりしない一方、景気が悪くてもその量が半減することもありません。言い換えれば、不況局面でも一定の需要が安定的に見込めるのに対し、好況期でも大きな成長は見込み難い、という業種となります(厳密には公益産業は景気の影響も少なくありませんが)。さらに筆者としては、最近はこれに通信業も入ってくるのではないか、と感じています。今やスマホに代表されるモバイル通信などは日常生活において切っても切れないアイテムとなっているためです。以前にテーマで採り上げたIoT(モノのインターネット)も今後の普及を考えれば、やはり需要は景気に関係なく緩やかに拡大していく可能性が期待できます。世界景気の不透明さが増してくれば、こういった業種への物色が本格化してくるシナリオは現実的になってくると考えます。

さらに筆者は、新たなディフェンシブ銘柄候補として、ペット関連業界を挙げたいと思います。実はペット関連ビジネスは継続的に成長を遂げており、市場規模は既に1.5兆円程度にも達しているとの調査もされています。実際にペットを飼われている読者の方も少なくないのではないでしょうか。現在はペットも家族という考え方も定着してきており、ペット関連の支出は好不況に影響されなくなってきているように感じられるのです。株式市場においてはかつて、ペット関連は成長産業として注目されたことがありましたが、直近はその伸びも徐々に鈍化してきており、現在は「堅調」というペースでの成長にとどまっています。その分、特に上昇相場となった近年の株式市場では相場の物色テーマとはなり難くなっていたのですが、その堅調さは今後ディフェンシブ銘柄へと変化していく要件を満たしているように考えます。

これまでディフェンシブ銘柄といえば、医薬品、食品、公益と業種が列挙された段階で、なんとなくわかったような印象にあったのが実態でした。しかし、よく目を凝らせば、実は他にもディフェンシブ銘柄は他にももっとあるかも知れません。前段の通信費やペット関連は、まさにその候補であると位置づけます。読者のみなさんの身近にも、きっと注目されていないディフェンシブ銘柄(業種)があるはずです。半歩先のテーマとして、そういった視点で業種を探して見られるのも相場の醍醐味なのかもしれません。


コラム執筆:長谷部 翔太郎

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