第130回 アパレル販売チェーン各社の中国市場戦略 【北京駐在員事務所から】

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第130回 アパレル販売チェーン各社の中国市場戦略 【北京駐在員事務所から】

北京の繁華街を歩いていますと、ユニクロやH&M、ZARAといったファストファッションの店が多く目につきます。
ユニクロは中国で高いブランドイメージを誇っており、若年層を中心とした多くの客で賑わっています。
店舗数が多く、ユニクロ以上に存在が目立つのがH&Mで、こちらは特に女性客に人気です。一度友人の買物に付きあって店に入ったのですが、ディスカウントストアを思わせるような商品の大量陳列に圧倒されました。試着の順番を待つ行列の長さにも驚いたことを覚えています。

欧米などの市場で競争が激化し、事業の急成長が望み薄となる中、これらの世界的なアパレル販売チェーンにとって、中国市場は極めて魅力的な存在です。
人口が多く、また都市部では所得水準の向上でファッションへの意識が高まっており、高まる需要を取り込もうと各社は中国での事業展開にしのぎを削っています。

H&Mの中国部門責任者は、今年2015年の売上高成長率について、中国と米国が最大になると話しています。同社は、今年全世界で400店舗を増設する計画で、国別では中国と米国が最多となります。
また、同社は中国で通常のH&M店に加え、主に高級品を販売するCOSブランドの店舗を積極展開するとしています。
COSは昨年、東京の南青山に出店していますが、同社のホームページによれば、中国では既に北京、上海などに12店舗を出店済で、中国市場への力の入れようが理解できます。

また、ZARAは既に中国に500店舗以上を有し、本国スペインに次ぐ規模となっています。
北京のショッピングセンターやモールなどでは、その多くでH&MとZARAが並ぶように出店しており、一方ユニクロはちょっと距離を置いて大型店を出店するような光景が多く見られます。

一方、米国のGAPは、これまでユニクロやH&Mに比べ、中国市場でやや苦戦していたのですが、本国での成長余力が限られつつあり、今後スポーツウェア店やアウトレットを含め、中国での出店を加速し、米国事業への依存度を引き下げたいとしています。

大手各社は、競うように中国での事業展開を進めていますが、それでも世界全体の売上高に占める割合は高くありません。
英国の金融大手HSBCのアナリストは、ZARAとH&Mの中国事業が両社の売上高に占める割合はそれぞれ8%と5%に過ぎないとし、人口と経済成長を考えれば拡大の余地は大きいと指摘しています。
また、大手会計事務所KPMGの中国部門責任者は、中国で中間層の所得拡大が今後4年から5年程度は続くとの見方から、同社の顧客の多くが中国での投資に積極的と述べています。

小売業にとっては、店舗展開に加え、中国で急成長中のeコマースへの対応も極めて重要です。各社はまず実店舗でブランドの浸透を図り、その後eコマースに進出して売上増につなげる戦略を取っています。
ZARAを運営するInditex社のCEOは、今月カジュアルブランドのPull&Bearが中国でネット販売を開始し、また近く香港、マカオ及び台湾でもネット販売を始めるとしています。各社の戦略が奏功するか見ものと言えます。

私が北京に赴任した3年前は、若い女性のファッションに何となく「垢抜けない」ものを感じました。特に色の組合せに?と思ったものです。
しかしながら、最近ではかなり進歩したように思われ、大手各社が欧米あるいは日本市場と同一の商品を供給していることが大きく貢献しているのだと感じています。
日、米、欧の大手が競う戦国時代と言えますが、共存共栄に進むのか、あるいは優勝劣敗の構図となるのか、今後数年間が勝負と思われます。

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コラム執筆:長野雅彦 マネックス証券株式会社 北京駐在員事務所長

マネックス証券入社後、引受審査、コンプライアンスなどを担当。2012年9月より北京駐在員事務所勤務。日本証券アナリスト協会検定会員 米国CFA協会認定証券アナリスト

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