マネックスメール編集部企画の特集コラムをお届けします。
中国では、米国などと同様、9月が新入学あるいは進学の時期となります。北京では、軍事パレードの影響で、今年は新学期が第二週からとなりましたが、全国的には、日本の多くの地方の二学期と同様、8月までが夏休みで、9月1日から新学期が始まりました。
小学校には、初々しい新一年生の姿も見られ、父母に手を引かれ登校する様子が新聞やテレビで報じられていましたが、ここ数年、中国の大都市では、進学実績に優れ、人気の高い小学校への入学を巡り、競争が激化しているそうです。
中国の小学校は、日本の公立校と同様に、学区が定められており、各児童は住所に基づき、指定された学校に通学することとされています。
日本でも、東京都心の一部の公立校などには、電車を利用して越境通学する児童がいますが、中国でも卒業後の中学、高校、さらには大学への進学実績の違いにより、小学校ごとの人気の差が生じています。
このため、子女を良い小学校に入学させたい父母が、さまざまな手段を用いて希望通りの入学実現に奔走しているそうです。
新聞記事では、南部深圳市での状況を報じていました。
深圳市は経済特区として、長く製造業の一大集積地として発展してきましたが、近年、IT等の分野での起業を目指す若者の流入が進み、子供の数も急増しています。
同市の竜崗区では、小学校への就学年齢の児童数に対し、入学定員が11,000名分不足しており、昨年から40%も増加したそうです。
また、市中心部の福田区では、同じく4,500名分の不足が生じており、昨年の3,500名分から30%近い増加となっています。
2008年以降、中国では一人っ子政策の緩和などにより、出生数が年々増加していることから、市への人口流入圧力の高まりと合わせ、受入能力の不足状態は当面続くとの見方が強まっています。
小学校への入学そのものが大変なのですから、さらに特定の学校を目指すとなれば、競争は熾烈を極めます。
深圳市では、人気校への入学を希望する児童について、市の戸籍を有しているか、両親が学区内に住宅を所有しているか等を点数化し、入学許可の決定の材料としています。
日本の都市部の自治体が、保育園への入園の可否を決定する際に用いている選考基準(ポイント制)と同様のものになります。
学区内に住宅を所有していない父母は、賃貸住宅に入居することになりますが、入学申込(3月)の最低半年前からの賃借実績が必要で、かつ入学が叶う保証もないのですから、大きな負担です。希望者が多いため家賃も高騰しており、隣の学区の2倍という話も珍しくないそうです。
深圳市は、今後3年から4年をかけ、また100億元(約1,900億円)を投入して、小中学校の入学定員を14万名分増やす計画です。
また、現在は小学校への入学申請に際し、希望する学校を一校のみ指定する方法としているところを、複数校の指定を可能とし、選択の幅を広げる方針です。
こちらについては、現在市内の数校を対象に試験的に実施されており、効果を見極めているところです。
北京でも、市内のいくつかの小学校が、進学実績の高さから人気があり、学区内の賃貸住宅の家賃が高騰していると聞きます。
日本では、親の所得や家庭の経済状態の差が、子の教育の差につながる「機会の不平等」が問題となっていますが、共産党政権の中国でも、富裕層では住宅の購入等により子に良い教育機会を与えることができる一方、都市部に出稼ぎに来る農民工は、戸籍を持たないために子を帯同しても就学の機会を得られず、地元(農村部)に子を残さざるを得ないという、日本以上に大きな差が生じています。何とも皮肉に思えてなりません。
所得が増加し、生活水準が向上すれば、子により良い教育をと考えることは当然ですので、教育機会の不平等は容易に解決し得ない問題ですが、中央及び各地方政府には、状況改善のため、より一層の努力を求めたいと思います。
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コラム執筆:長野雅彦 マネックス証券株式会社 北京駐在員事務所長
マネックス証券入社後、引受審査、コンプライアンスなどを担当。2012年9月より北京駐在員事務所勤務。日本証券アナリスト協会検定会員 米国CFA協会認定証券アナリスト
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