マネックスメール編集部企画の特集コラムをお届けします。
9月17日のFOMCでは利上げは見送られ、声明があまりにもハト派(利上げに慎重)だったことから、年内に利上げされるのか否かの見通しさえ不透明になってきました。しかし、24日の講演でイエレン議長は一転、年内利上げを考えているとのスタンスを打ち出し、マーケットは混乱。ドル/円相場は118円台から121円台で膠着しており、年内利上げがあると予想する向きと、年内の利上げは難しいと予想する向きが拮抗している印象です。
◆年内利上げ否定派の見通し(FOMCがあまりにハト派であった)
1)9月のFOMCでは、海外の動向を監視している、として初めて米国だけでなく新興国や中国などの外部要因に配慮したことが明確となりました。この1点だけを取り上げても、ではその問題は年内に解消できるのか、特に中国の問題はたった数か月で何がどう変われば問題ないところまで回復したと言えるのかが不透明。今回、海外動向に配慮し始めたことが、米国が利上げに相当慎重であるということを示しているとみる向きもあります。
2)また、FRBは「インフレ率が2%に向かって戻っていくと合理的に確信できた時、政策金利の誘導目標を引き上げるのが適切」としているのですが、声明ではインフレ率は下押しの圧力がある、ということを認めています。FOMCメンバーのインフレ率の見通しでは2%までの上昇達成予想は2017年となっているのです。年内どころか、来年2016年も利上げは難しいと指摘するハト派がいるのはこの部分を気にしているのでしょう。
3)また、FOMC17人のメンバーのうち1人が15年末と16年末のFFレートをマイナス0.125%と見込んだことが明らかになりました。利上げどころか真逆です、マイナス金利の見通しが出てしまいました。まだ全体としては最初の利上げに適切と考える時期は17人中13人(前回6月は15人)が年内に1度以上の利上げを見込んでいるため、年内利上げのバイアスは維持しているのですが、前回より利上げ否定派が2人増え、1人はマイナス金利にするべきとしていたことが、マーケットには衝撃となりました。
◆年内利上げ実施派の見通し(FOMC後、イエレン議長はタカ派的だ)
1)イエレンFRB議長の24日の講演では「私を含めて」FOMCの多くの委員が今年中の利上げを適切と考えていると発言、FOMCよりタカ派的な発言と受け止められたことで、全般ドル高が進みました。年内利上げがある可能性が強いという材料でドル高になるのは理解できるのですが、この日、株式市場も上昇となりました。利上げの思惑が強まったのに株が下がらなかったのです。一方でFOMCで利上げの思惑が著しく後退した際には米株は大きく下落しましたね。要するに米利上げは今では市場のネガティブ要因ではなくなってきたということです。マーケットは利上げ時期がわからないという不透明感の方を嫌っていることがわかります。現状の地合いなら利上げが実施されることで、リスクは出尽くしとなり不安要素は払拭されるのではないか、こんな見方が利上げ肯定派の間で広がってきているようです。
2)バーナンキ氏によるQE3量的緩和縮小(テーパリング)開始の時と、よく似ているという指摘があります。2013年5月22日にバーナンキ前FRB議長がテーパリングに言及したことで、世界の株式市場が大きな調整を強いられました。それでも混乱が収束すると、マーケットは9月のテーパリング開始を予想していましたが、結局テーパリング開始は12月にずれ込みました。9~10月には米国の債務上限問題から政府機関がクローズされるというドタバタ劇が演じられ、利上げが遅れた経緯が。今年もまだ新年度の予算は決まらず、最悪の場合10月から政府機関の閉鎖という事態に追い込まれるという見方もあるのですが、2013年はそれでも12月にテーパリングを実施したことから、今年も同じように、10月のFOMCでは利上げを見送り、12月に開始するのではないかという見方もあるようですね。
テクニカル的に見れば、ドル/円相場は25日金曜の上昇で、目先形成されていた三角持合いを上に抜けて121.20円台まで上昇し、米ドルが強気相場入りしたように見えたのですが、NYクローズでは見事に長い上ヒゲを蓄えて実体は再び三角持合いの中に押し戻されてしまいました。テクニカルのレンジブレイクを確認できるのはNYクローズの終値で節目を超えた時に限定されます。終値ではレンジブレイクに至らなかったことから、今回のドル/円相場の持合いは、三角持合いではなく118.50円から121.50円の3円幅でのボックスレンジ相場であると見ることができます。つまり、本格的にドルを買う強気相場入りを確認できるのは121.50円をNYクローズで抜けてきた場合に限ります。ドル/円相場は利上げが実施されたところが天井となって、ドル高相場が終焉するという見方が広がっていますが、まずは年内なのか、来年以降となるのかを見極めるまで、長期レンジ相場に入ってしまったようです。121.50円近辺でショート、118.50円近辺でロングというトレーディングに徹したいと思います。
コラム執筆:大橋ひろこ
フリーアナウンサー。マーケット関連、特にデリバティブ関連に造詣が深い。コモディティやFXなどの経済番組のレギュラーを務める傍ら、自身のトレード記録もメディアを通じて赤裸々に公開中。
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