マネックスメール編集部企画の特集コラムをお届けします。
成長の減速や株式市場の下落など、このところ中国経済を巡っては暗い話題が多くなっています。
明日から国慶節(建国記念日)の七連休となりますが、日本では「訪日観光客の爆買いももはやこれまでか?」という声も聞かれています。
しかしながら、最近の調査結果によれば、中国人の海外旅行は、経済と同様、「新常態」に入り、成長スピードこそ鈍化するものの、今後も着実に伸びると見られています。
昨年、中国から海外に出かけた旅行者は1億900万人に達し、前年2013年から11%増加しました。世界全体の旅行者に占める割合は9.58%となっています。
また、中国人旅行者の消費額は1,650億ドル(約19.8兆円)に達し、こちらは前年比28%増、世界全体に占める割合は11%となっています。
中国の海外旅行市場が巨大なものとなっていることが理解できます。
為替市場での人民元高、日本を含む各国が実施したビザ発給要件の緩和、さらにはショッピングの際の免税対象品目拡大や手続の簡素化が、旅行客と消費額の増加に寄与しています。
業界団体が、本年4月までの一年間に海外に出かけた中国人旅行客17,000名に対しアンケート調査を行ったところ、回答者の42%が、「生活費の最大20%を旅行関係に費やす」としており、旅行への意欲の高さを見せています。
また、中国人旅行者は若年層が多く、回答者の44.9%が1980年代生まれ、次いで25.7%が70年代生まれ、11.4%が90年代生まれとなっています。
彼らの多くが今後リピーターとなり、また所得の増加により消費額もさらに増えることが期待されます。
また、最近の特徴として、これまで旅行者の多くを占めていた北京、上海などの一級都市の居住者に加え、まだ数は少ないものの、二級、三級都市の居住者の海外渡航が増加しており、成長の原動力となっています。
業界団体のレポートは、今後江蘇省、浙江省(いずれも上海市の隣)、天津市、東北部の遼寧省、内陸の四川省からの旅行者が増えると予想しています。
日本からも、これらを含む中国各都市への航空便が続々就航しており、今後集客増につながることが見込まれます。
先月の人民元切り下げが、海外旅行への意欲に水を差すのではとの懸念も聞かれますが、業界関係者は、以前の水準に比べればまだ元高にあるとし、大きな影響は無いと述べています。
今後は、引き続き二級、三級都市への航空便の就航や、ビザ発給要件の緩和等が、需要を喚起する要因になるものと見られます。各国政府や航空会社の対応が見ものです。
最近気づいたのですが、年末年始や来年2月の旧正月の東京行きの航空券の予約が早くから入っており、昨年までとは大違いの様相を見せています。
中国人は、長い休みが終わると次の休みの予定を考えるようで、これまではあまり早くから予約が入ることはなかったのですが、既に旧正月のチケットは安価なものが売り切れの状況です。ちょっとびっくりです。
日本でたくさん消費してくれれば有難いところですが、帰国の予定が立てづらくなるのは頭の痛いところです。
世界の航空会社やホテル、観光等の業界にとって、中国人客が上客となる時代がこれからも続くと見られます。日本各地でホテルの予約が難しくなる等、影響も生じていますが、うまく解決が図られ、訪日旅行客がリピーターとなるよう、望みたいと思います。
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コラム執筆:長野雅彦 マネックス証券株式会社 北京駐在員事務所長
マネックス証券入社後、引受審査、コンプライアンスなどを担当。2012年9月より北京駐在員事務所勤務。日本証券アナリスト協会検定会員 米国CFA協会認定証券アナリスト
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