マネックスメール編集部企画の特集コラムをお届けします。
先週2日金曜日に発表された米国の9月の雇用統計の結果は、市場の予想を大きく下回る弱い数字となったことで、米国は年内の利上げは難しいのではないか、という思惑が広がりドルが急落しましたがNY市場が終わってみればドルが買い戻され、雇用統計が発表される前の水準に戻っています。チャート形状は上下に髭を形成して乱高下したことが窺えるのですが、結局イベント前の水準に収まっており、こういう値動きを「ノーイベント」と呼びます。何もなかったのと一緒という意味ですね。トレードにおいては下手にストップロスなどを置くと、ストップロスがヒットして損失が出た後に相場が戻ってしまって悔しい思いをする、というような値動きです。何もしなければ良かった、という相場となりました。このような値動きの相場はレンジの下限、あるいは上限で逆張りする以外に勝率を上げることはできません。雇用統計の数字を予想してポジションを保有したまま、数字の発表というイベントを迎えるという投資行動はもっともリスクが大きく、勝てるトレード手法とは言い難いものです。雇用統計など景気・経済指標の数字は、誰も正確に予想することができないため、発表前からポジションを持って発表を待つというトレードはギャンブルと変わらないやり方なのです。(長期目的で長く保有しているポジションは別です)
では、雇用統計のようなボラティリティが上がる(大きく動く)イベント時に勝率を上げるにはどうしたらいいのでしょうか。
まず、イベント前にはポジションを落とすことです。運が良ければ大儲けできると考えがちですが、雇用統計のようなイベント後の値動きは50/50の確率で上昇か下落に綺麗に分かれるというものではありません。上へ下へと乱高下した挙句に、どちらにも動かないという、今回9月の雇用統計後のような値動きは珍しくないのです。つまり、売りで持っていても買いで持っていても儲けられないというだけではなく、値動きが大きくなればなるほどロスカットされるリスクが拡大し、損失だけを残す結果になることもありますね。
もし、このボラティリティを上手く取りたいと考えるなら、発表前に十分にチャート分析をしておくことです。例えば、現状のドル円相場の場合、8月24日に116円台まで急落した後はレンジ相場に入っています。116.20円台までの円高の後は8月28日に121.70円台まで大きく戻りを入れていますので、大きく見れば116.20~121.70円のレンジ相場の可能性がある、ということを念頭に置いた上で、その後このレンジ幅が縮小しているため、その縮小したレンジの上下限を把握することが肝要となってきます。その後は9月4日の118.58円がドル円相場の下限となって、ここを下抜けてはいません。また上限は9月10日の121.32円で9月25日にこの高値を超えるかと思われるドル上昇があったのですが、ほぼ面合わせ(同値で止まる)で上値を抑えられています。
つまり、現在のドル円相場のレンジの上下限は、118.58円~121.32円である、ということが雇用統計の発表前から解っていた事実。雇用統計の発表で、このレンジ下限に近付けばドルを買い、上限に近づけばドルを売る、というように事前に決めておくのです。今回の雇用時計イベントでは、ネガティブサプライズでドル円相場は急落、118.67円まで下落しました。現在のレンジ下限に限りなく接近したところを見計らって、買うことができますね。事前にチャートをよく分析し、イベントで大きく動いたことでチャンスが来れば売るとか買うというトレードを事前に決めておくことが肝要なのです。
雇用統計の数字があまりに悪い数字だったことで、もう利上げはムリだというようなコメントがあふれ総弱気となると、レンジ下限に近付いたからといってなかなか買う勇気は出ないものですが、もし、レンジ下限で買って、それよりも更に下がって下抜けるようなら、損切りすればいいのです。どんな相場も絶対はありませんので損切はどんなトレード手法にも付きもの。勢いがあってレンジブレイクとなる相場なら、損切りした後にドテン売りで戦略をチェンジする必要がありますが、レンジブレイクしてトレンドが出る動きというのはレンジ相場7割に対してトレンド化する相場は3割程度といわれ、そうそうあるものではないため、レンジブレイクを狙ったトレードは勝率が低いとされています。まずはレンジ相場であることを認識した上で、そのレンジの上下限では逆張りで入って、レンジ内に戻っていく値動きを取るというのが基本の考え方。今回はドル円が急落する中で冷静にレンジ下限に近付いたということで買った向きが大きな収益を上げることができたのです。
コラム執筆:大橋ひろこ
フリーアナウンサー。マーケット関連、特にデリバティブ関連に造詣が深い。コモディティやFXなどの経済番組のレギュラーを務める傍ら、自身のトレード記録もメディアを通じて赤裸々に公開中。
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