マネックスメール編集部企画の特集コラムをお届けします。
和食と同様、伝統的な中華料理では、乳製品はほとんど使われていません。広東料理のお店で、「ロブスターのチーズソース」を売りにしているところがありますが、これなどは近年考案された創作料理と言えます。
このため、中国人、特に年配者にとっては、牛乳、バター、チーズ、ヨーグルトなどはなじみの無い食品でした。しかしながら、近年、都市部を中心に西洋料理やピザ、ハンバーガーなどが急速に普及し、また乳製品がタンパク質やカルシウムを多く含み、健康に良い食品であるとの認識が広がったため、急速に消費が伸びているそうです。
新聞記事では、チーズの消費が急増中との話題を報じていました。
昨年、中国国内では7万トンのチーズが消費されました。中国国内でのチーズの生産はまだわずかで、全体の94%が輸入品だそうです。
金額ベースでの市場規模については、今年2015年が35.5億元(約670億円)と予想されており、これは昨年から24%の伸びとなります。また、2017年には53.8億元(1,000億円強)まで伸びると予想されています。
日本の消費量が、ここ数年30万トン程度で横ばいとなっていますので、まだ少ないですが、成長余地は大きく、メーカーにとっては極めて魅力的な市場と言えます。
フランスのチーズメーカーGroupe Bel社は、2007年に中国市場に参入し、最初の数年間の売上増は緩やかであったものの、ここ3年ほど急成長を見せているそうです。同社は、特にファストフードチェーンの中国での広がりにより、若年層の消費者がチーズの味を知り、ファンが増加していると分析しています。
また、ニュージーランドのFonterra社も、中国での需要増に対応するため、昨年の初めから設備投資を増やし、モッツァレラチーズとクリームチーズの生産能力を高めているそうです。
同社は、中国市場が今後5年間程度は成長を続けると見て、さらに設備投資を拡大する計画です。
レストランやファストフード店に加え、スーパーマーケットなどでも、チーズの販売が増加しています。
上海のマーケティング会社の幹部は、親世代に栄養食品との認識が広がったことで、中国の子供たちの間で、チーズの人気が高まっていると述べています。
また、Groupe Bel社は、昨年、中国のチーズの小売販売額が前年比20%以上増加し、乳製品全体の2倍の成長率になったと分析しています。同社は、今後チーズを使ったスナック食品等を投入し、若年層への一層の浸透を図る計画です。
中国では、伝統的に牛肉を食べる習慣が無かったことから、羊の遊牧を行うモンゴル族などを除き、乳製品へのなじみもありませんでした。今でも、中高年層では朝食に豆乳を飲む人が多いです。
一方、スーパーマーケットの売場には、牛乳、チーズやヨーグルトなどが所狭しと並び、品揃えは日本と変わらないくらいです。チーズも豊富ですが、ヨーグルトが「飲むヨーグルト」を中心に良く売れています。最近、北京では明治乳業のブルガリアヨーグルト(現地生産品です)が宣伝に力を入れており、日本と同様の商品が入手できます。
日本では、牛乳(生乳)の生産が過剰気味で、価格も低迷している一方、バターが極端な品薄になる等、乳製品の生産、流通に様々な問題が生じていますが、今後中国での消費がさらに拡大すれば、バターやチーズなどで供給の不足や価格の高騰が起きることが懸念されます。
中国で現在起きている食生活の変化は、数十年前の日本と同じものですが、何分人口規模が桁違いですので、世界全体に大きな影響を生じることになります。
日本の食卓から、将来乳製品やケーキなどが姿を消すことにならねば良いがと、ちょっと心配になってしまう話題でした。
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コラム執筆:長野雅彦 マネックス証券株式会社 北京駐在員事務所長
マネックス証券入社後、引受審査、コンプライアンスなどを担当。2012年9月より北京駐在員事務所勤務。日本証券アナリスト協会検定会員 米国CFA協会認定証券アナリスト
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