第179回 オセアニア通貨の逆襲は本物か?! 【大橋ひろこのなるほど!わかる!初めてのFX】

マネックスメール編集部企画の特集コラムをお届けします。

第179回 オセアニア通貨の逆襲は本物か?! 【大橋ひろこのなるほど!わかる!初めてのFX】

豪ドルやNZドルは底入れしたのでしょうか。

豪ドル相場は、米9月雇用統計の結果を受けた翌週から大きく上昇しており、10月第2週の1週間で3%もの上昇を見せました。2013年9月以来の大幅な週間上昇率となります。6日火曜日、RBA豪準備銀行は5か月連続で政策金利を据え置きました。中国の景気後退、商品価格低迷などから一部に利下げの予想があったのですが利下げを見送り、声明文においても今後の利下げを示唆するようなコメントが見当たらなかったことが、これまでの豪ドル売りの買戻しに繋がりました。


NZドルもまた同様に2年ぶりの大幅上昇率を見せています。10月第2週の週間上昇率は3.4%。豪ドル同様2013年9月以来の上げ幅を見せました。NZはこれまで長期的に下落していた乳製品価格が下げ止まる様相を呈してきたことにも後押しされています。NZの乳業大手企業フォンテラが先週6日行った入札で、乳製品の国際価格を示すGDT価格指数が9.9%上昇、今年3月以来の高水準となったことで、貿易赤字の縮小への思惑が広がりました。乳製品価格はここ4回前回の入札価格を上回る展開となっており、底入れの様相を呈し始めたことがNZドルの買戻しに繋がっていると見られます。


さて、ここからです。このまま豪ドルやNZドルは上昇継続となるでしょうか。ポイントはここから新規で豪ドルやNZドルを買う動きが活発化するかどうかです。先週までの上昇は、あくまで「売りポジションの買戻し」これまで商品価格や乳製品価格が下落基調を辿り、米利上げ思惑が強かったことから売られてきた豪ドルやNZドルが、手仕舞われたことによる「ショートカバー」で上昇してきただけ、という見方が大勢です。豪ドルもNZドルもまだ「利上げ」に向かう通貨ではありません。利上げの思惑があるのは「米ドル」です。豪ドルやNZドルは、まだまだ利下げバイアスのほうが強いのです。積極的に買われる通貨になるには、このまま商品・乳製品価格が上昇を続けるなどの材料が継続できるかどうかがカギとなってきます。


NZドルの動向に関しては今週発表のインフレ統計が注目となります。今週末16日金曜の早朝に発表されるNZのCPI第3四半期の消費者物価指数が前回数値、予想を上回ることができれば、上昇継続の可能性も。

[前期比] 前回+0.4% 予想+0.2%  [前年比] 前回+0.4%  予想+0.3%
しかし、弱い数字となれば今月29日のRBNZ会合で利下げ余地が生じるとの観測が強まり、これまでの上昇一服となるでしょう。


また、ここからの気がかりは移民問題です。ロイターによると、ニュージーランドへの移民の流入が過去最高水準になっているようです。移民問題といっても、現在欧州で問題となっているシリアからの難民ではなく、インドやオーストラリア、英国などからの移民のようですが、大量の移民はニュージーランド経済がコモディティブームを背景に拡大した局面では労働力不足を埋める重要な役割を果たしてきたのですが、現在のように経済が減速している状況下では、失業率を押し上げてしまうとの観測が強まっているようです。景気テコ入れと労働市場の需給の緩みの縮小を目指す中銀が今月の会合でさらに金利を引き下げる可能性があるという観測も出てきました。ニュージーランドは2015年に3回の利下げで政策金利を2.75%にまで引き下げていますが、さらに利下げを実施し2.5%に?!


加えて米国、FRBメンバーは年内利上げの可能性を否定しないスタンスを変えていません。2日発表の米9月雇用統計でマーケットはすっかり利上げ観測を後退させてしまっていますが、11日、FRBのフィッシャー副議長が年内利上げの可能性について言及、12日にはロックハート・アトランタ連銀総裁も個人的な見解では10月か12月のFOMC会合で利上げを決定するのが適切だとみていると発言。今週以降の米経済指標が良好であれば、再び米利上げの思惑が強まる可能性もあり、再び豪ドルやNZドルが売られるリスクとなります。


ここから新規に豪ドルやNZドルを買う地合いに発展するかどうか。乳製品価格やCPIなどインフレ指標に注目するとともに、米利上げ観測が本当に消えてしまったわけではないことに注目しておきましょう。


コラム執筆:大橋ひろこ

フリーアナウンサー。マーケット関連、特にデリバティブ関連に造詣が深い。コモディティやFXなどの経済番組のレギュラーを務める傍ら、自身のトレード記録もメディアを通じて赤裸々に公開中。

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