第134回 男女比の不均衡により男性が結婚難に 【北京駐在員事務所から】

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第134回 男女比の不均衡により男性が結婚難に 【北京駐在員事務所から】

中国では、胎児の性別判定や人工妊娠中絶が普及した1980年代以降、新生児の男女比(女児に対する男児の割合)が正常な範囲内とされる103%から107%を超え上昇しました。
2004年の121.18%をピークに、ここ数年は低下傾向にあるのですが、それでも昨年2014年の時点で115.88%と、不均衡な状態が続いています。
80年代以降生まれということで、30代に入り結婚適齢期となった男性が、結婚難に直面しており、今後長く社会問題になることが懸念されています。

中国では、伝統的に男児の誕生を喜ぶ人が多く、その理由としては

(1) 農村部では、肉体労働の担い手となる男子が歓迎される。

(2) 年金制度等が不十分なため、また伝統的に老後は子の世話になることが一般的なため、より高い収入が期待できる男子が望まれる。

の二点が挙げられます。
戦前の日本でも、同様の傾向が見られましたが、中国では1979年に一人っ子政策が導入され、その後胎児の性別判定や人工妊娠中絶(非合法のものを含めて)が普及したことから、「子供を一人しか持てないのであれば是非男児を」と考える親が男児の出産を選択することが広く行われました。

新生児の男女比は、1970年には106.32%と正常な水準でしたが、1990年には111.14%、2000年には116.86%に上昇し、その後は115%以上に高止まりしています。
この不均衡を是正するために、政府はいくつかの施策を講じています。
一つ目は、非合法の胎児の性別判定や人工妊娠中絶に対する取締りの強化です。政府の国家衛生・計画生育委員会は、今年の上半期に、これらの案件2,014件について、関係者の訴追を行いました。
二つ目は、男児を望むことの誘因の一つになっている一人っ子政策の緩和です。2011年の末より、全国で両親がともに一人っ子の場合に、第二子の出産を認める規制緩和が行われましたが、2013年からは、両親のいずれかが一人っ子の場合に認めるよう、さらなる緩和を行う省及び市が増えています。
一人っ子政策の緩和は、中長期的には男女比の不均衡を是正することに寄与すると期待されているのですが、皮肉なことに、現状では、第一子が女児である両親が、「第二子は是非男児を」と望むことで、いくつかの地方では第二子の男女比が130%程度に達し、不均衡が拡大する方向に作用しているそうです。

また、非合法の性別判定や中絶も、技術の進歩もあり、また既に全国に普及していることから、摘発は年々難しくなっています。計画生育委員会で男女比の問題に取り組む責任者は、不均衡の大きな16省、市において、集中的な取締りを行うと述べています。

男女比の不均衡は、特に農村部で、適齢期の女性が少ないため多くの男性が結婚できず、必然的に子供も持てず老後の生活に懸念が生じるという問題につながっています。
一方、都市部では、高い学歴と収入を得た女性が、自身と釣り合いのとれる男性を見つけることができず、男女ともに結婚難になっているそうです。
夫婦の学歴や収入が釣り合うこと、特に年齢も含め、男性の方が少し上であることは、中国では非常に重視されるそうで、都市部在住でも例えばブルーカラーの男性にとっては、結婚相手を見つけることが困難になっています。

日本でも、一頃農村部での花嫁不足が問題となり、東南アジア諸国の女性との国際結婚がもてはやされました。しかし、その後文化や風習の違いなどから日本での生活になじめず離婚につながる事例も少なくなかったようで、最近では話題になることも無くなりました。また、都市部では収入面の不安などから、男女ともに結婚をためらう若者が増えており、非婚化から少子化の流れが決定的なものになっています。
もっとも、中国での男女比のアンバランスは、自動的に「結婚したくてもできない男性」を生むことになりますので、極めて深刻な問題と言えます。

結婚や出産は、本来は個人個人の問題であり、政策によるコントロールにはなじみにくいものですが、中国の現状は放置できないものがあります。
様々な施策が奏功し、将来の改善につながることを願いたいと思います。
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コラム執筆:長野雅彦 マネックス証券株式会社 北京駐在員事務所長

マネックス証券入社後、引受審査、コンプライアンスなどを担当。2012年9月より北京駐在員事務所勤務。日本証券アナリスト協会検定会員 米国CFA協会認定証券アナリスト

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