マネックスメール編集部企画の特集コラムをお届けします。
中国経済の減速により、日本を訪れる旅行客が減少する、あるいは「爆買い」の勢いが失われるとの懸念が一部でささやかれています。
ここ数年、日本を含む世界の大都市で猛威を振るっていた中国人による不動産購入にも逆風が吹くのではと言われていますが、中国人向けに海外不動産物件の情報を提供するポータルサイト「居外」の代表者は、購入意欲に陰りは見られず、中国人による海外不動産の購入額は、今後5年間程度は増加を続けると予想しています。
同社の推計では、昨年2014年の中国人による海外不動産購入額は520億米ドル(約6.2兆円)でしたが、2020年にはこれが2,200億米ドル(約26兆円)にまで伸びるとしています。
今後、新たに中間所得層が多く誕生し、彼らが海外不動産の購入にも関心を示すと見られることが強気の見通しの背景です。
8月に唐突に実施された人民元の切下げは、海外への投資には逆風要因ですが、居外社によると、米ドルに対しては切り下げとなったものの、英ポンドや豪ドルに対しては上昇しており、結果として投資先が米国から英国あるいは豪州に置き換わっているとのことです。
豪州で中国人向けに移住関連のサービスを提供しているコンサルティング会社の担当者は、中国国内の不動産価格がこのところ弱含みとなっていることから、中国の開発業者が雪崩を打って豪州に乗り込み、土地の手当てに動いていると指摘しています。
また、同社の分析では、豪州の不動産市場に占める海外投資家の割合は8%に過ぎず、海外勢が市場を左右するまでの勢力とはなっていないそうです。
加えて、最近の価格上昇で、ドイツや南アフリカなど、中国以外の国々から資金が流入しており、販売業者も中国人ばかりをターゲットにしているわけではないと指摘しています。
同社は、政府が金利を引き上げ、市場を少し冷やすことを期待しています。
居外社の担当者も、豪州の不動産市場について、中国人の購入が価格上昇をもたらしているとの見方は誇張されており誤りであるとし、最大の問題は物件供給の不足であると指摘しています。
日本でも、中国人が東京都心三区あるいは湾岸エリアなどの高級マンションを積極的に購入していると報じられています。
東京では、2020年のオリンピック、パラリンピック開催をにらみ、不動産市況が堅調に推移すると期待されています。中国人の多くも、値上がり期待で物件購入に動いているものと思われます。
当然ながら、彼らは自ら居住することはなく、また賃貸に供することもせず空室のまま値上がりを待ちますので、マンション管理組合等の自治活動に参加することもなく、また酷い場合には管理費や修繕積立金の支払を渋ることもあるそうです。
このあたりは物件販売業者や管理会社に適切な運営を求めたいところですが、売主からすれば「買ってくれるのであれば誰でも」ということになりがちです。
大っぴらには謳えないのでしょうが、将来、中古物件市場で、「中国人オーナーゼロ」がセールスポイントになってしまうかもしれません。
中国人による不動産の「爆買い」が、思わぬ副作用をもたらすこととならぬよう、願いたいと思います。
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コラム執筆:長野雅彦 マネックス証券株式会社 北京駐在員事務所長
マネックス証券入社後、引受審査、コンプライアンスなどを担当。2012年9月より北京駐在員事務所勤務。日本証券アナリスト協会検定会員 米国CFA協会認定証券アナリスト
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