第181回 10月FOMC・日銀会合を控えて動いたECBと中国 【大橋ひろこのなるほど!わかる!初めてのFX】

マネックスメール編集部企画の特集コラムをお届けします。

第181回 10月FOMC・日銀会合を控えて動いたECBと中国 【大橋ひろこのなるほど!わかる!初めてのFX】

今週の外国為替市場には、大きな為替変動をもたらす可能性が高い重要なイベントが相次いで開催されます。

28日水曜日 AM3:00米FOMC政策金利発表

30日金曜日 日銀金融政策決定会合・黒田日銀総裁会見

26-29日 中国・五中全会


結果によってはドル円相場が大きく動くためマーケット関係者の注目度が高いのですが、こうした重要イベントを控えた先週、ECB欧州中央銀行のドラギ総裁が22日の理事会の後の記者会見で、次回12月3日の理事会での追加緩和策を実質的に宣言するような発言を行ったことで急激にユーロ安が進みました。ユーロ安ということはドル高です。ドル円相場も大きく上昇しました。加えて、翌日23日金曜日には中国が預金準備率と政策金利を引き下げる緩和策を発表。これを受けて中国リスクへの警戒が薄れ、市場はリスクオン相場へ発展。リスクオンというのは世界の株式市場の上昇ですが、ドル円相場ではドル高円安となります。ドル円相場は先週23日金曜日121.49円までドル高円安が進んでいます。

重要イベントを控えて様子見のレンジ相場が続くとみていたマーケットにはどちらもサプライズとなりました。五中全会後に経済対策が出るだろうという期待があったために、その前に中国が動くとは考えていませんでしたし、欧州についても20日にECBが公表した融資調査結果で欧州域内銀行がこの数か月間、企業への融資基準を思ったより緩和していたことが明らかになったことで、これまでのECBの政策がうまく機能しているとして22日の10月ECB理事会での追加緩和思惑は大きく後退していたところでした。マーケットは「サプライズ」であればあるほど、値動きが大きくなります。誰も予想していないということは、相場にも織り込みがないということですので、発表後から材料を織り込む形で大きく動くのですが、次回12月のECBに追加緩和となるのだとすれば12月3日頃まで、ユーロ安基調が続くということになると思われます。

ここで今週、28日のFOMCで利上げが実施され、30日の日銀の金融政策決定会合で追加緩和の発表があればドル円相場は、レンジ高値をブレイクして今年の高値125円方向を目指す上昇となるとみられますが、果たして今週の日米の金融政策には変更があるのでしょうか。

FOMCメンバーの発言だけを見ると10月利上げの可能性を否定しないという見方も残るのですが、金利市場の折り込み度からみると10月利上げの可能性はほぼゼロ。つまり、もし今回利上げが実施されれば大きなサプライズであり、ドル高の圧力は非常に大きいものとなります。ただし、株式市場にとっては決して上昇要因ではありません。株が急落となれば、ドル円相場はリスクオフ方向、つまり円高方向にも引っ張られるため、利上げがあった場合、ドル円相場は激しく乱高下する可能性はあっても、トレンド化しにくいと思います。ただし、利上げ実施にも株価が思ったほど下げなかった場合は、ドル高方向に大きく動くことになるでしょう。しかしこれはサプライズシナリオ。市場は今回の利上げはほぼないとみています。その後の声明で年内利上げを強く滲ませる文言が確認できるか否かが焦点でしょう。利上げがなければ、マーケットはほぼ無風で大きく動くことはないというのがコンセンサスです。

そして日銀の金融政策決定会合での追加緩和の期待は著しく後退しています。22日金曜夕方、本田内閣官房参与は、今すぐ追加金融緩和をする必要はないと語ったこともありますが、そもそも日銀の黒田総裁もこれまでの政策に自信をにじませており、市場の追加緩和の期待には応えていません。また先週ECBが12月の追加緩和の可能性に言及したことで、円安株高が進んでいることから、日銀が動かずとも、米国が引き締めバイアスであっても市場の流動性供給が確保されるという安心感がもたらすリスクオン相場となっていることで、その必要性が薄れたとみる向きもあります。だからこそのサプライズです。もし、日銀が30日追加緩和を決定することがあれば、ドル円相場は一気に数円上昇するインパクトとなると考えられます。日経平均も2万円大台を目指す上昇となるでしょう。

ただし、そのようなサプライズが必要な局面かどうか、ということを冷静に考えると、日銀が今回動くことは考えにくく、追加緩和という切り札は来年の参院選や消費増税に備えて温存しておきたいところでしょう。しかし先週ECBと中国がサプライズで動いたことで今週の日銀会合への期待が薄れ、日銀が今回現状維持でつい緩和を実施しなかったとしても、マーケットが大きく崩れるリスクは後退したと考えれば、ドル円相場は上昇バイアスのほうが大きく、今週122円台を固めることができれば、年内125円達成のトレンドを形成していくものと思っています。


コラム執筆:大橋ひろこ

フリーアナウンサー。マーケット関連、特にデリバティブ関連に造詣が深い。コモディティやFXなどの経済番組のレギュラーを務める傍ら、自身のトレード記録もメディアを通じて赤裸々に公開中。

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