マネックスメール編集部企画の特集コラムをお届けします。
今月初めの1日から7日は、中国の国慶節(建国記念日)の七連休でした。国慶節連休は、ちょうど陽気の良くなる時期ということで、旅行に繰り出す人が多く、中国で年間最大の旅行シーズンとなっています。
海外旅行も年々盛んになっており、日本でも百貨店や量販店が中国人観光客の来店に沸いたとのニュースが報じられましたが、庶民の多くは、比較的近場の国内旅行に出かけることになります。有名観光地は大変な混雑となり、人の波を見て終わってしまうとの不満の声も多く聞かれています。
特に自家用車を利用する人が多く、主要都市からの高速道路、幹線道路では大渋滞が発生します。渋滞に業を煮やした人達が車を降りて体操やバドミントンをする、ペットを連れて散歩する、簡易コンロで料理を作り宴会を始める、さらには物売りまで現れるというのが、この時期の風物詩となっています。
余計な心配ですが、トイレはどうするの?という感じです。
観光施設や旅行業界などは、需要の偏在に悩んでおり、何とか休みを分散化し、ピークとオフピークの差を埋められないかと様々な活動に乗り出しています。
日本でも同様の問題に直面し、例えば「学校の休みやゴールデンウィークの連休を地域ごとにずらす等の提案がされましたが、反対論も多く実現に至っていません。
中国の現状は高度成長期やバブル期の日本に似ており、民間企業で有給休暇の制度が浸透しておらず、結果国慶節などの連休に旅行の需要が集中しています。
日本でも、有給休暇の取得率がなかなか上がらないことが問題となっていますが、中国では、政府機関、国営企業や外資系企業では制度が普及し、取得も進んでいるものの、一般の民間企業ではなかなか取得できないそうです。
労働法では、連続して1年以上勤務した従業員に対し、雇用主は有給休暇を与えなければならないと定めているのですが、競争の激しい民間企業では、「有給休暇など絵に描いた餅」という状況になっています。
政策研究機関の教授は、「法制度が整備されても、それを確実に施行することは難しい」と指摘しています。
有給休暇制度があっても、従業員にとっては、人事評価や処遇に影響するのではないかとの恐怖心から、なかなか取得に踏み切れないそうで、このあたりも日本が歩んできた道と同じです。
北京在住の会計士の女性は、「雇用主が従業員に対しもう少し配慮し、休暇を取得しやすい雰囲気を作って欲しい」と訴えています。
「仏作って魂入れず」ではありませんが、制度を整えただけでは機能せず、結局は携わる人々の考え方が変わらないと何も動かないというわけです。
20年ほど前、当時勤めていた証券会社で、先輩社員が「俺、去年一日も有給休暇を取らなかった」と自慢げに話していたことが、今でも鮮明に思い出されます。
当時は「休まないのが美徳」のように思われていたのですね。今は有給休暇の取得率が政府の政策目標となり、また学生の就職先選定の際の重要な要素となるなど、状況は様変わりしました。
当時を思うと隔世の感があります。
旅行や観光の需要分散も重要ですが、所用が生じたときなど、遠慮なく有給休暇を利用できるよう、経営者や従業員それぞれが意識を改めることが何より重要と、中国のニュースで再認識させられました。
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コラム執筆:長野雅彦 マネックス証券株式会社 北京駐在員事務所長
マネックス証券入社後、引受審査、コンプライアンスなどを担当。2012年9月より北京駐在員事務所勤務。日本証券アナリスト協会検定会員 米国CFA協会認定証券アナリスト
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