第137回 クルーズ船ツアーの人気が急上昇中【北京駐在員事務所から】

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第137回 クルーズ船ツアーの人気が急上昇中【北京駐在員事務所から】

九州など西日本を中心に、中国からの大型クルーズ船が相次ぎ来航し、受入側の各港、各都市では入国審査の要員増や観光バスの手配、さらに商業施設への通訳の配置など、対応に追われています。
先月の国慶節連休も、多くの訪日観光客でにぎわい、一部の商業施設は特需に沸いたと報じられています。

クルーズ船によるツアーは、様々な理由により、中国人には大変な人気があります。
第一の理由は、航空機に比べて、持込荷物の制限が圧倒的に緩いことです。「爆買い」で購入した大量の商品(中国人は「戦利品」という表現を使います)を追加料金なしで運ぶことのできるクルーズ船は大きな魅力です。
二つ目の理由は、空港からホテルへの移動などが一切不要で、また食事も慣れ親しんだ中華料理を楽しめる手軽さです。
さらに、日本では、クルーズ船を利用し訪問する中国人観光客を対象にビザを免除しており、これもクルーズ船利用の大きな誘因になっています。

ツアーの行程の多くは、朝方に港に到着し、半日程度観光、食事と買い物を楽しんで夕方から夜には出港する内容となっています。
有名観光地や商業施設にはそれなりのメリットがあるようですが、宿泊施設にはもちろん恩恵が無く、また飲食店も、滞在時間が短いことから、安価な店で簡単に食事を済ませる客が多いため、経済効果は乏しいと伝えられています。

クルーズ船の市場と言えば、長く米国人の人気を集めるカリブ海クルーズが圧倒的な市場規模を誇り、運航会社各社は大型船、新造船を積極的に投入し、集客を競ってきました。
近年の中国でのクルーズ船人気の高まりを目の当たりにし、各社は中国市場に多くの船を振り向け、市場成長の恩恵にあずかろうとしています。
昨年、クルーズ船を利用した中国人旅行客(日本、韓国等全目的地の合計)は86万人で、前年比43%増となりました。今年は100万人の大台に乗ると見られています。中国の旅行市場、特に海外旅行は急成長中ですが、その中でも際立つ伸びを見せています。

世界最大のクルーズ船運航会社カーニバル社は、同社のクルーズ船ツアー10ブランドのうち、現在中国でコスタクルーズ、プリンセスクルーズの2ブランドを投入していますが、さらに2ブランドを投入し、船舶の配備も中国へのシフトを強めるとしています。
同社の幹部は、ブランドの追加投入で、予算、旅行日数など異なるニーズを持つ中国人顧客に、より適合した商品を提供できると述べています。
既存の2ブランドについても、来年にそれぞれ新造船を投入し、中国市場に配備する船は現在の2隻から6隻になります。同社の中国市場への注力ぶりがうかがえます。

米国のクルーズ船会社ノルウェージャンクルーズも、2017年に4,200人乗りの最大級のクルーズ船を中国市場に投入し、本格的に参入する計画です。
今後、中国人客の獲得を巡り、各社の競争が一段と激化することになりそうです。選択肢が増える中国の人たちがちょっとうらやましくも思えます。

旅行を初め、飲食、サービスなど様々な業界で、人口が多くかつ成長著しい中国市場での競争激化のニュースが伝えられています。
多くの日本企業も、中国市場に活路を求め、奮闘しています。
「共存共栄」はなかなか難しいのでしょうが、各社の成功を祈りたいと思います。

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コラム執筆:長野雅彦 マネックス証券株式会社 北京駐在員事務所長

マネックス証券入社後、引受審査、コンプライアンスなどを担当。2012年9月より北京駐在員事務所勤務。日本証券アナリスト協会検定会員 米国CFA協会認定証券アナリスト

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