マネックスメール編集部企画の特集コラムをお届けします。
これまで、米国の次に利上げが近いのは英国だというコンセンサスで動いていたマーケットが、先週のスーパーサーズデーで一変。英国の利上げ時期がかなり遅れるとの見方が広がり、ポンドが急落。一方で6日金曜日に発表された米国の10月雇用統計の数字を受けて年内12月の利上げが濃厚となったことで米ドルが急伸しています。
スーパーサーズデー。あまり耳慣れない言葉ですね。それもそのはず、まだ先週5日木曜で2回目。イギリス中央銀行(BOE)が開催するMPC(金融政策委員会)金融政策公表をイベント化した呼び名です。1回目が今年の8月6日(木)そして3か月後の先週11月5日(木)が2回目で、まだこの呼び名は生まれたばかり。何がどう変わって、そんな呼び名がついたのでしょう。
これまでBOE・イギリスの中央銀行はMPC/金融政策委員会のある当日には政策金利など金融政策の内容のみを発表、その議事録は2週間後に公式サイトで公表していました。議事録でようやく各委員の投票状況や決議に至った理由が説明されるとあって、滅多に大きな政策変更がないMPC開催当日より議事録の内容で動くことの方が多かったりするのがポンド相場。MPC委員の利上げ(利下げ)の賛成VS反対の投票状況など決議に至った経緯と理由がポンドを動かしていました。
このMPC開催→2週間後に議事録発表という流れを取りやめて、議事録はMPC開催日に公表、おまけにそもそも3か月に1度発表していた「四半期インフレレポート」も同日一緒に発表、そしてその45分後に政策・景気見通しに関する記者会見を実施。と、全て同日に公表してしまおうというスタイルでのMPCが今年8月6日からスタートしたのです。ということで「スーパーサーズデー」、今後のイギリスの経済ビックイベントとなるだろう、ということがうかがえるネーミングですね。
注目は米国の次に利上げが近いとされている英国が本当に利上げが近いのか否かを占う上で注目されるMPC委員の利上げ賛成、反対の票数で、これまでは8対1で利上げ据え置き、つまり利上げを唱えているのはたった一人でしたが、今回は7対2になるのではないか、と予想されていたことでポンドがスーパーサーズデーを前に上昇していたのですが、蓋を開けてみたら投票結果は前回と同じ8対1での据え置き決定。さらにサプライズとなったのがインフレ報告。3カ月前の前回会合にあった「インフレ期待は保たれている」という文言が消え、「消費者物価指数(CPI)の上昇率は2016年後半まで1%を下回る」という文言に変わりました。年率2%の目標に大きく届かない状況が続くとの見方に変わったことで、利上げ期待は著しく後退。市場の一部には「米国より英国の利上げのほうが先ではないか」という見方も出るほど英国利上げへの期待は大きかったために、この変化には市場が大きく反応した結果、ポンドが急落してしまいました。カーニー総裁は会見で、慎重の上に慎重を重ね、2016年の利上げに動くと考えるのが望ましいとして、次の政策変更は利上げであることを強調してはいますが、その時期がこれまでの予想からかなり後ずれすることには違いなく、これまで米国と並んで利上げバイアスにあったポンドがその地位から陥落したことの意味は大きいと思われます。対して米国が利上げを確信する方向へと動き出したために、ドル買いポンド売りはしばらく続くのではないかと思われます。これまでの利上げが近いとの期待からポンドが買われていた割高感の是正が続くということですね。
それにしても、英国がサプライズでハト化したために、米国以外の国全てが出口の模索は遠く、欧州やオセアニア、日本や中国も緩和方向であることから「米ドルだけ」が利上げバイアスとなってしまっています。シンプルに考えればドル以外買う通貨はないということになりますが、ドル一強相場が延々に続くことは考えにくく、皆が同方向にポジションを傾けすぎれば必ずやその反動が来ると思っています。しかし、それは利上げが近づく12月でしょうか。足元ではドル一人勝ち相場の様相が強まるのではないでしょうか。
コラム執筆:大橋ひろこ
フリーアナウンサー。マーケット関連、特にデリバティブ関連に造詣が深い。コモディティやFXなどの経済番組のレギュラーを務める傍ら、自身のトレード記録もメディアを通じて赤裸々に公開中。
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