第64回 「コモディティ」を読み解く 【市場のテーマを再訪する。アナリストが読み解くテーマの本質】

マネックスメール編集部企画の特集コラムをお届けします。

第64回 「コモディティ」を読み解く 【市場のテーマを再訪する。アナリストが読み解くテーマの本質】

みなさん、こんにちは。『今どき、株で儲けるヤツは、「業種別投資法」を使っている』著者の長谷部翔太郎です。テロなど国際情勢不安が増し、国内景気もいまひとつ勢いに欠ける展開の中ですが、日経平均はようやく8月以来の2万円回復を目前としています。これからは有名な年末高というアノマリー(理論的ではないが、経験則的に起こりやすい動き)も心理的追い風となり、戻り基調の継続が期待されるところです。2015年も残すところあと一ヶ月です。もう一仕事、がんばりましょう!

さて、今回は「コモディティ」をテーマに取り上げたいと思います。実はこのネタはちょうど一年前にも書いているので、テーマとしては再訪という形となります。なぜ、敢えてもう一度同じテーマを取り上げたのかを説明する前に、一年前に書いたことを抜粋再掲してみましょう。

"・・・直近でこのコモディティ価格に大きな変化が・・・代表的指数であるCRB指数で見てみると、2014年は6月に高値312.8を付けた後、・・・直近は245近辺まで約20%下落・・・。価格低下がある一定の閾値を越えてしまうと、途端にコモディティメーカーのコスト競争力格差が浮き彫りと・・・それに伴って価格先安観が台頭してくれば、過当競争の突入や世界経済の潜在成長力低下の可能性も否定できません・・・これまでの株式投資の世界でもスタンスを大きく変えて臨む必要が出てくるはずです。"

つまり、コモディティ価格が下落を始め、注意信号が点滅してきたよ、ということを書いたつもりでした。では現在はどうなっているかというと、CRB指数は180台にまで下落してしまっています。これは実に12年ぶりの安値水準で、リーマンショック時のショック安をも下回ることになります。12年前といえば、ちょうどITバブルの崩壊直後であり、当時はまだ中国を始めとする新興国の台頭前夜という時期です。現在の商品市況は、その時点の経済状況と同等であることを示唆している水準にあるのです。中でも、重要な商品である原油の価格下落は強烈です。現在の価格は1バレル(=約159リットル)42~43ドルと、一年前より6割前後もの暴落状態です。2008年に記録した147ドルという市場最高値との比較では、所謂「半値八掛け二割引」という水準も下回る状態にあります。当然ながら、コモディティ関連企業の株価も、厳しいパフォーマンスを強いられているのが現状です。

本題に戻りましょう。なぜ、このテーマを再訪したか、です。ご存知の通り、「半値八掛け二割引」とは大相場の後の調整でほぼ底値に届いたメドとされる相場格言の一つです。これから見ると、原油市況の下値はかなり限定的になってきたといえる水準に近づいてきた、ということができます。実は、CRB指数も市場最高値(2008年の473!)との比較では、ほぼ「半値八掛け二割引」に近づいてきているのです。テーマの再訪は、こういったアプローチから今後株式市場でコモディティ関連が物色されるケースも増えてくるのではないか、と考えたからなのです。調整が続いている資源株などに対しては、底打ち期待から打診が入ってくる可能性も否定はできないと予想します。

とはいえ、現実には「半値八掛け二割引」でも下げ止まらなかった例は山ほどあります。特に、感覚的にはその前に大相場を演じていればいるほど、「山高ければ谷深し」となるケースが多いように思えます。これは大相場という時流に乗って、ファンダメンタルズでも(製造業であれば)生産能力の急拡大がなされたりする結果、宴の後に残ってしまったどんでもない過剰設備の調整に強烈な負担がかかるため、です。今回の商品市況も、直前まで「国際商品のスーパーサイクル」とまで称された大相場がありました。新興国の景気減速、一方でスーパーサイクルの間に急拡大した資源開発などを考えれば、格言的な経験則が通用するかどうかは慎重に判断したいところです。同様に重要な相場格言として、「Don't Catch a Falling Knife」(落下中のナイフは掴むな)というのもありますから。

ただし、株式投資を考えるうえで、こういった相場格言を軽視すべきではありません。底値がどこなのかはまだまだ議論の余地があるでしょうが、少なくとも「底値かどうかを議論できる水準」に達してきたことは事実です。需要後退、過剰生産能力、米国利上げといったマイナス要因も、程度の差はあれ、かねてから指摘されていたことで最早目新しい材料ではありません。このことは、潮目の変化に対してより敏感にウォッチしておくタイミングが近づいている、ということを否が応にも意識させられる状況です。「『まだ』は『もう』なり」を肝に銘じて。最後も相場格言で締めてみました。


コラム執筆:長谷部 翔太郎

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