第141回 中国人の訪日旅行市場を巡る競争が激化 【北京駐在員事務所から】

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第141回 中国人の訪日旅行市場を巡る競争が激化 【北京駐在員事務所から】

訪日中国人旅行客による「爆買い」が、昨日今年の流行語大賞に選定されましたが、実際に旅行者数は急増を続けています。
尖閣諸島の国有化を契機として日中関係が悪化した後の2013年に117万人であった訪日中国人は、2014年には241万人に、また本年2015年は9月までで383万人に増加しており、年々倍増のペースです。
以前にもご報告申し上げましたクルーズ船を利用しての訪日客も増えていますが、名古屋(中部国際)あるいは大阪(関西)などの空港と中国の地方都市を結ぶ航空便が続々就航しており、訪日客の増加に寄与しています。

北京から東京への便も、今年の夏くらいから、明らかに予約が早く入るようになり、安価なチケットの購入が難しくなっています。羽田や成田と同様、北京空港も混雑のため発着枠に制限があり、就航便の数はほとんど増えていませんので、限られた座席、チケットの争奪戦の様相を呈しています。

これまで、日本向けの旅行、特に団体旅行は中国の旅行代理店が市場を押さえていましたが、黙って指をくわえて見ているわけには行かないということで、日本企業も需要の取り込みに動いています。
最大手のジェイティビーは、中国で合弁会社を設立し、日本からの旅行客あるいは中国在住の日本人向けにオプショナルツアー、中国国内旅行あるいは東南アジア等への海外旅行商品を販売していますが、このほど北京に中国人向けに訪日旅行商品を販売するための店舗を開設しました。
あわせて、ソフトバンクと提携し、ソフトバンクが大株主となっているアリババグループのオンライン旅行代理店"Alitrip"に「日本汐留旅行旗艦店」を出店し、ホテル、オプショナルツアーやテーマパークのチケットの販売を開始しました。
ジェイティビーは、既に日本旅行の経験を持つリピーターに、宿泊施設などに比較的余裕のある地方都市あるいはまだ知名度が高くない観光地を紹介し、誘導を図ることを計画しています。

過去に日本旅行の経験がある人達の間では、日本で「買物、観光と温泉」に止まらない、特別な体験をしたいとの要望が強まっており、ジェイティビーはそのノウハウと商品調達力を生かして、顧客のピンポイントのニーズを拾い上げることを狙っています。

北京では、ジェイティビーのほか、近畿日本ツーリストやエイチ・アイ・エスなども現地法人を開設し事業を展開していますが、ターゲットは主に中国を訪れる、あるいは中国在住の日本人客です。今後、これらの企業も訪日中国人旅行客の市場に本格参入してくるか、注目されます。

もちろん、中国企業の動きはさらに活発です。LCC(格安航空会社)の春秋航空が、日本でホテル事業に本格進出すると発表したほか、先月には北海道の「星野リゾートトマム」が上海の企業に買収されるとのニュースが伝えられました。
2020年の東京オリンピック、パラリンピック開催に向け、東京を中心にホテルの需給逼迫が予想される中、ホテル関連を中心に日本進出の動きはさらに強まりそうです。

繁華街や観光地で中国語の看板や案内表示がどんどん目立つようになり、中国人客への依存が高まっていることにちょっと複雑な思いもいたしますが、訪日中国人旅行客が日本経済に少なからず貢献していることも事実で、この流れをより大きなものとして行くことが必要なのは間違いありません。
日中の企業が入り乱れてますます競争が激しくなりそうですが、これが中国人旅行客の満足度向上をもたらし、再訪につながることを願いたく思います。

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コラム執筆:長野雅彦 マネックス証券株式会社 北京駐在員事務所長

マネックス証券入社後、引受審査、コンプライアンスなどを担当。2012年9月より北京駐在員事務所勤務。日本証券アナリスト協会検定会員 米国CFA協会認定証券アナリスト

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