マネックスメール編集部企画の特集コラムをお届けします。
中国政府の国務院国家体育総局(日本のスポーツ庁に相当)と教育部(同じく文部科学省に相当)が、全国の7歳から22歳までの児童、生徒及び学生347,294名を対象に健康状態及び運動能力についての調査を実施し、このほど結果を公表しました。
中国政府は、近年学校、教育機関での運動、スポーツ参加の機会を増やすよう奨励しており、運動能力については、以前の調査結果と比べ改善が見られるものの、肥満と近視については悪化の傾向にあるとの結果になりました。
肥満の児童、生徒の割合は、2005年以降増加を続けており、今回の調査(2014年調査)でも引続き増加となりました。
都市部に居住する7歳から12歳の児童のうち、男子の18.17%、女子の9.71%が肥満と判定され、いずれも前回2010年調査から増加したそうです。
日本では、小学生から高校生までの年齢層で、男子の10%前後、女子の8%前後が肥満傾向とされており、日本と比べても高い割合となっています。
北京大学の研究者は、食生活を初めとする生活水準が向上する一方で、保健体育に関する教育と運動を軽視する傾向が根強く、これが肥満の増加をもたらしていると指摘しています。
あわせて、毎日一時間の運動を続ければ肥満を防止できるところ、多くの児童、生徒は放課後も補習に追われており、運動あるいは余暇に使える時間が無いと述べています。
また、近視の児童、生徒も増加しています。
7歳男児の30%、女児の32%が既に近視となっており、いずれも前回の調査から微増となっています。近視者の割合は年齢とともに上昇し、小学生の45.7%、中学生の74.3%、高校生の83.2%、大学生では86.3%が近視と判定されました。
比較が難しいですが、日本の調査では、裸眼視力1.0未満の者が、小学生で30%、中学生で53%、高校生で63%となっていますので、こちらも肥満と同様、日本よりも深刻な状況と言えます。
受験科目が重視され、毎日長時間机に向かう生活では、近視が進むのも致し方ないところですが、不健康であることは間違いありません。
中国の子供たちの生活ぶりを知ると、日本の中学あるいは高校の「部活動」が凄いものであることが分かります。
私は音楽を趣味とし、中学生時代は吹奏楽部に所属していましたが、日本の吹奏楽人口、また楽器のマーケットはいずれも膨大です。
こちらでは、習い事としてピアノやヴァイオリンを学ぶ子供はある程度いますが、中学生あるいはそれ以降で楽器演奏を続けるのはプロを目指す人か、あるいは富裕層の子女に限られるようです。
スポーツも同様で、エリートとして選抜される一部の選手を除き、一般の生徒、学生への普及はまだまだです。甲子園での高校野球や、年末年始のサッカー、ラグビーの全国高校大会の盛り上がりは、中国では見られないものです。
日本の10倍以上の人口を擁し、学歴社会の様相が色濃い中国では、生徒たちが勉強に集中せざるを得ないことも理解できる一方、ちょっとかわいそうにも思えます。
今後、中国社会が成熟し、また生活水準がさらに向上することで、児童、生徒の健康問題に対する関心が高まり、心身のバランスが取れ充実した学校生活を送ることができるよう、望みたいと思います。
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コラム執筆:長野雅彦 マネックス証券株式会社 北京駐在員事務所長
マネックス証券入社後、引受審査、コンプライアンスなどを担当。2012年9月より北京駐在員事務所勤務。日本証券アナリスト協会検定会員 米国CFA協会認定証券アナリスト
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