マネックスメール編集部企画の特集コラムをお届けします。
先週、北京市政府は大気汚染に関する「赤色警報」を初めて発令し、日本でも大きく報道されました。
赤色警報は、4段階の警報のうち最も重い内容のもので、小中学校などの休校、工場の操業停止や自家用車の使用制限強化など、市民の生活にも影響する様々な措置が取られます。
実際には、先週の大気汚染は、指数が最高400程度で、これまでも冬場にはしばしば見られたレベルに止まりました。
先月末から1日(火)にかけての汚染は、指数が600程度にまで達し、先週よりも遥かに深刻でした。
この時に赤色警報を出すべきだったのでしょうが、一段階下のオレンジに止めたため、北京市政府に対する批判の声が上がったと言われています。
先週の赤色警報は、多分に先月末の発令見送りの反動によるものと思われます。今後この警報がどのように運用されるのか要注目です。
赤色警報の発令に伴う自家用車の使用制限強化は、昨年11月のAPEC(アジア太平洋経済協力)首脳会議や、本年9月の抗日戦争勝利70周年記念の軍事パレードの際に行われたものと同様で、日付が偶数の日はナンバープレートの末尾が偶数の車のみ、また奇数の日は末尾が奇数の車のみを利用可とし、全体の半数の使用を差し止めるものです。
北京では渋滞や駐車場の不足が深刻なのですが、それでも自家用車での通勤を好む人が多く、制限強化で多くの人が不便を被りました。
公共交通機関を利用した人も多いのですが、自宅や職場の立地が不便な人はタクシーの利用に流れ、赤色警報の発令期間中、特に朝の通勤時間帯には空車の奪い合いの様相を呈したそうです。
北京では、タクシーの配車へのスマホアプリの利用が急速に普及しています。通常時は利用者が近くの空車を呼び出して乗車するのですが、空車が少ない時には、通常料金に上乗せして支払う価格交渉も行われます。
最大手のアプリ「嘀嘀快的」の運営会社によると、先週の赤色警報の発令期間中、朝の通勤時間帯のタクシー呼出件数は通常時の8割増しになったそうです。
また、タクシーを利用した27歳の女性は、「料金が通常時の2倍になった」と話し、運転手は「乗客は6割増え、客を降ろすとすぐに次の客が乗車する状況になった。また自家用車の減少で渋滞が緩和され、所要時間が短縮された」と話しています。
運転手にとっては、特需と渋滞緩和で笑いが止まらないというところでしょうか。
中国ではタクシーの料金が安く、北京でも重要な交通手段の一つになっています。
日本人の友人にも、「通勤はいつもタクシー」と言う人がかなりいます。交通渋滞がしばしば発生する北京では、所要時間が読めないため、私は公共交通機関が不便な場所への移動や、深夜で地下鉄もバスも無いような場合を除き、滅多に利用しないのですが、「地下鉄もバスも嫌い。タクシーに限る」と言う人も多いです。
東京などでも同様かも知れませんが、不思議なのは市内で空車が全く見られない地域と、逆に空車だらけの地域があることです。運転手もスマホで情報武装していますので、需給の状況は簡単に把握できると思うのですが、あまり考えられていないということなのかもしれません。
昨日から今日にかけ、北京では青空が見られ、日本と同程度にまで綺麗になっています。ちょっと一息というところです。
冬場に空気が悪くなるのは仕方のないところですが、赤色警報の頻発という事態は是非回避してほしいと願わずにはいられません。
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コラム執筆:長野雅彦 マネックス証券株式会社 北京駐在員事務所長
マネックス証券入社後、引受審査、コンプライアンスなどを担当。2012年9月より北京駐在員事務所勤務。日本証券アナリスト協会検定会員 米国CFA協会認定証券アナリスト
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