マネックスメール編集部企画の特集コラムをお届けします。
2015年の金融市場の最大のテーマであった米国の利上げが12月のFOMCにて決定されました。2015年の為替市場は、米国の利上げ時期を巡ってドルが買われたり売られたりと、利上げの「タイミング」がいつになるかということに神経質に動きましたが、「今後の注目」は来年以降の米国の利上げがいつか、ということではなくて、利上げのペースとなってきます。12月のFOMCではメンバー17人による2016年末時点での金利見通し中央値が1.375%となり、来年2016年は0.25%ずつの利上げが4回実施される見通しとなっていますが、この4回の利上げが本当に実施可能か否かということがマーケットのテーマとなってくるでしょう。それを占うのが、FRB議長の指す「データ次第」の言葉にあるように、雇用やインフレなどの経済指標。来年もまた引き続き、米国の景気が本当にしっかりしたものかどうかを見極めることで、FOMCでの利上げが想定通りに行われるかどうかが焦点となる「金融政策相場」は継続すると思われます。
また、12月3日にはECB理事会にて、マイナス金利拡大などの追加金融緩和が発表されましたが、市場が予想した内容には及ばず、失望からユーロが急騰する局面がありました。予想された内容の緩和がなかったということは、逆に言うと緩和余地は残されたということです。今後はいつECBが残された切り札である緩和策を発表するのか、ということがユーロ相場を占うポイントとなってくるでしょう。
そして私が個人的に最も驚いたのが先週18日、日銀が金融政策決定会合で「補完措置」を発表したことです。今回の12月の日銀会合では現状維持予想が大勢で、何か変更があることを予想していた向きは少なかったために、発表後にはマーケットが大荒れとなりました。初動は「日銀が動いた」という事実のみに大きく反応、日経平均は500円を超える上げ幅で上昇し、ドル円相場も123円半ばまで急騰したのですが、その内容を吟味すると市場は一転急落、結果、何もしないほうがよかったというような大きな下落に見舞われました。この日銀の補完措置発表については、日銀ができることの限界を示すものであると同時にいよいよ出口を模索する時期が近づいていることを示唆するものだ、とネガティブに受け止める向きがある一方で、今後の追加緩和策導入まで現在の政策を継続させるものであり、来年のどこかで日銀が量的追加緩和に動くまでの措置だと見る向きがあり、現在のところその解釈は大きく分かれています。しかし、日銀が発表した補完措置を受けてのマーケットのボラティリティ(変動幅)の高さに、やはり日銀の動向がまだまだマーケットに与える影響の大きさを改めて思い知らされることとなりました。
12月の日米欧の金融政策発表の内容と、その後のマーケットの値動きを見ると、各国の中央銀行の金融政策がマーケットの主要な変動要因である「金融政策相場」がまだまだ続くことになるのでしょう。7年にも及んだ非伝統的金融政策である「ゼロ金利政策」の解除の影響が本当にないのか、という点も気がかりです。ローン金利などあらゆる金利が上昇することで、景気が冷え込むことがないのでしょうか。来年以降は米国景気失速が見られないかどうかに神経質に動く年となると思われます。
過去30年の経験則を確認すると米国が利上げサイクルにある局面ではドルインデックスはドル安になっていることが多いのですが、過去の米国の利上げ局面では米景気だけが強かったわけでなく、欧州や日本の景気も良かった時期と重なっています。米国の景気の拡大で米国の輸入は拡大、その恩恵を受けていたのが日本の輸出産業で、日本の貿易黒字が拡大し、それが円高ドル安圧力となったという面もありました。現在は金融政策上、利上げに動くのは米国だけで、欧州や日本は緩和政策を継続、または拡大予想があるという中で、過去の経験則の通りに、利上げ後はドル安になると単純比較はできないと思っています。現在、ドル相場の見通しは強気と弱気に見事に分かれており、トレンド形成しにくい環境にあります。年末年始の流動性の薄い時期でもありますので、こういう難しい局面では、ポジションを取らずに様子を見るということも、重要な戦略と言えるでしょう。
コラム執筆:大橋ひろこ
フリーアナウンサー。マーケット関連、特にデリバティブ関連に造詣が深い。コモディティやFXなどの経済番組のレギュラーを務める傍ら、自身のトレード記録もメディアを通じて赤裸々に公開中。
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