第144回 格安航空会社の台頭で競争が激化 【北京駐在員事務所から】

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第144回 格安航空会社の台頭で競争が激化 【北京駐在員事務所から】

国土が広大で多くの人口を擁する中国では、移動に航空機を利用する人が増えており、市場が急速に拡大しています。
鉄道の運賃が非常に安いため、庶民の間ではまだまだ鉄道利用が主流ですが、近年LCC(格安航空会社)が相次ぎ運航を開始し、運賃の安さをアピールして需要をつかんでいます。

中国の大手航空会社は、中国国際航空、中国東方航空、中国南方航空と海南航空の4社で、いずれも欧米行き等の長距離路線を含むネットワークを持っています。
一方、LCCは、2004年に中国初の民間航空会社として設立された春秋航空を初め、独立系及び大手航空会社系の会社が多数存在し、群雄割拠の状態となっています。
春秋航空は、日中間に多くの路線を有しているほか、昨年2014年よりグループの春秋航空日本が日本国内線の運航を開始し、日本でも知名度を高めています。

2013年に中国政府の民用航空局がLCCの事業を支援する政策を打ち出したことが、その後の発展の契機になったと言われています。
最近の統計では、中国国内線の旅客数は年間3億9,200万人で、うちLCCの利用客は2,750万人、シェア7%程度とされています。2020年にはLCCの利用客が倍増するとの予想もあります。
また、航空機メーカーのエアバス社は、今後10年以内に、国内航空便の利用客数で中国が米国を抜き、世界最大の市場になると見ています。
春秋航空は、このほどエアバス社から小型機A320の新型機を60機、総額63億米ドル(約7,600億円)で購入すると発表し、契約を締結しました。需要の急増が強気の戦略につながっています。航空機メーカーや旅行業界等が中国市場に注目することも当然と言えます。

上海市のソフトウェア開発会社に勤務する女性は、会社の規則に従い、2010年より出張等の際に春秋航空を利用しています。同社は春秋航空への切り替えにより、交通費を2割削減出来たそうです。また、私的な旅行でも同社を初めとするLCCの利用が普通になっているとし、キャンペーン等で販売される9元(約170円)や99元(約1,900円)の激安チケットを入手する方策につき、同僚と相談するのが楽しみと話しています。

日本でも同様ですが、LCCの課題として、安い運賃と引き換えに、サービス等の水準が大手航空会社とは異なることについて、顧客の理解を得ることが挙げられます。
春秋航空を初め、LCCの多くは、座席を多くしその分足元のスペースを減らしています。
また、ギャレー(機内食や飲み物の収納設備)を減らし、サービスを簡素化する会社もあります。
機内食、足元のスペースや荷物持込時の手数料などは、顧客の不満が多く寄せられる点ですが、LCCの一社である九元航空の幹部は、不満を口にする乗客も、多くは引続きLCCを利用しているとし、自信を示しています。LCCが大手航空会社と住み分ける形で発展を続けるのか、あるいは欧州などの一部の会社のように、サービスの拡充、高級化によりビジネス客などの取り込みに動くのか、今後も目が離せません。

北京の空港(首都空港)は、羽田空港や成田空港と同様、発着枠に余裕が無く、LCCの就航は限定的です。
対して上海には大規模な空港が2つあり、春秋航空を初めLCCの便も多く、日本にも地方都市を含め多くの路線が就航しています。運賃も全般に安いので、選択肢の多い上海在住の人が羨ましく思えてなりません。
2019年には、北京の南の郊外に新たな国際空港(利用者数で世界最大になると報じられています)が開港する見込みで、その後は北京にも本格的なLCCの時代がやってくるのかもしれません。

日本でも、LCCが空の旅の敷居を低くしたことは確かで、乗客の理解が進んだことで大手航空会社との使い分けが出来つつあるように思います。
安全の確保は譲れない一線ですが、多くの会社が料金やサービスを競う状況は顧客にとり歓迎すべきものです。
日本、中国双方で、業界、市場が健全に発展していくことを願いたく思います。
本年も本コラムをご覧いただき、誠に有難うございました。
来年も、中国の様々な姿をご報告できますよう努めます。どうぞよろしくお願いいたします。
皆様どうぞ良い新年をお迎えください。


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コラム執筆:長野雅彦 マネックス証券株式会社 北京駐在員事務所長

マネックス証券入社後、引受審査、コンプライアンスなどを担当。2012年9月より北京駐在員事務所勤務。日本証券アナリスト協会検定会員 米国CFA協会認定証券アナリスト

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